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2015/5/19 0:00

あなたが見ている赤と私が見ている赤、本当に同じ?

少し前、あるドレスの配色が「青×黒」に見えるという人と、「白×金」に見えるという人に意見が分かれる写真が、ネットで話題になった。
私には「白×金」にしか見えなかったのだが、どう見ても「青×黒」だと断言する人も周りに多かった。ちなみに、実際のドレスは「青×黒」なのだそう。同じ洋服を見ても、何故こんなにも人によって認識する色が違ってくるのだろう?

 

一節によると、「色の恒常性による錯覚」が原因だという。人間は物を見るとき、その物体の色そのものを解釈しているのではなく、周りの状況によって自然に脳内で色の補正をかけているそうな。今回話題となったドレスの場合、「後ろから強い光が入り込んでいる→洋服とカメラはその影に入っている」と認識した人は、無意識のうちにドレスの色をより明るく脳内で補正して見るので、「白×金」に見えるらしい。

 

ちょっと難しい話になってしまったけれど、要は、人間の脳は騙されやすいってことだ。人によって、青が白に見えたり、黒が金に見えるのだから。

 

 

 

全部で何色あるでしょうか?

もうひとつ、最近ネットで話題になっていたネタの一つに「この1枚の画像の中に、何種類の色が見えますか?」というものがある。答えは全部で39色らしいのだが、全色を判別できるのは、実に4人に1人の割合なのだそう。中には、20色以下に見えるという人もまた1/4いるそうで、そう考えると、人間の目って当てにならない。カラーコーディネートなんてものも、根本から覆されてしまう。

 

例えば、彼女がピンクのトップスに赤のスカートを履いていたとする。本人は、この絶妙な色合いが素敵!と気分良く着ているのだが、それを見た彼氏には、上下とも同じ赤の洋服にしか見えず、彼女のファッションセンスを疑った……なんてことも起こってくるのではないだろうか?

 

 

信号の色は、青? 緑?

話は変わって、息子に信号の色と規則を教えるとき、はてと戸惑った。「青は進め、渡れだよ」と教えつつ、ぶっちゃけ青じゃないよね、緑だよね……と心の中で自問自答。どうして緑色なのに、青って言うのだろう。そういえば、青虫と言いながら緑色の体だし、青りんごはどう見ても緑。英語では「Green apple」なのに、なぜ日本語だけ「青」なの?

 

こちらも調べてみると諸説あって、信号に関しては、もともと日本には白・黒・赤・青の4色しか存在しておらず(「黒い」「赤い」など、語尾に「い」がつくのはこの4色だけだとか)、青から緑にかけての色全般を「青」と呼んでいた。そのため、初めて信号機が日本で設置されたときに報道した新聞記者が「青信号」と表現し、それが一般的にも浸透した、という説が有力のようだ。また、日本人の感性の問題で、まだ若い、みずみずしい、未熟などという意味で「青」を用いていたので、実際には緑色だけれども「青」と表現している言葉が多数存在するという説もある。「青々と生い茂る緑」なんて、どっちやねん!って感じだ。

 

 

正しい色彩感覚を身につけるには

このような、色にまつわる不思議は他にもたくさんあって非常に興味深いが、いま最も気になるのは、子どもに正しい色彩感覚を身につけさせるのには、どうしたらいいのだろう?ということ。そもそも、自分自身の色彩感覚が正しいのかも、先のドレスの件から考えると自信がなくなる。
幼い子どもに色の名前を教えるとき、身近にあるものを指さしながら「これが赤だよ」などと教えていくのが一般的だろうが、中には微妙な色合いのものも少なくないわけで、「これも……赤だよ」とざっくりした色で教えるのがいいのか、「ピンクっていうんだよ」「えんじ色っていう色で、赤の仲間だよ」などと教えるものなのか、いったいどれが正しいのだろう。ただ、色彩感覚は大人になってからも鍛えることができるようで、訓練すれば細かな色の違いまで識別できるようになるそうである。

 

であるならば、まずは楽しみながら基本的な「色」の種類を教えてあげようか。最近見つけた『なんのいろ』という絵本のシリーズは、「はる」「なつ」「あき」「ふゆ」の4冊あって、美しい色の挿絵とテンポの良い言葉が目にも耳にも心地よい。小さな子どもでも十分に楽しめそうなので、親子一緒に色彩感覚を身につけられそうだ。

 

ちなみに先の信号の色に関して、ある幼児教室の先生がこんなことを教えてくれた。信号機をよく見ると、電気が点いていない状態の青信号は「群青色」をしている。そこに電気が点くことで、「緑」に見えるようになる。そのことをしっかりと見せながら「青信号は、電気が点くと緑になるね」と説明した上で、「電気が点いていると緑色だけど、本当は青色だから青になったら渡ろうね」と教えるのが、最も混乱を招かない方法だとか。小さなお子さんがいる方は、ぜひ試してみてほしい。

 

(文・水谷 花楓)

 

【文献紹介】

なんのいろ はる
著者:ビーゲンセン(著)/ 永井郁子(絵)
出版社:絵本塾出版

組み合わせると、なんのいろ? いろの組み合わせとテンポよいことばで楽しくイメージを膨らませて想像力を鍛える、脳トレ絵本。こどもの脳には可能性がいっぱい! おとうさん、おかあさんとのコミュニケーションの中で色彩感覚が身につきます。家族で楽しんでいただける絵本です。

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