本・書籍
2018/4/18 13:30

『ル・ボラン2018年3月号』――映画に似合うイタリア車とフランス車の魅力とは

車が大きな役割を果たす映画がある。いや、こう言おう。大道具にすぎないはずの車が、映画そのもののテイストを決めてしまうことがある。『007』シリーズや『ゴッドファーザー』ではイタリアのアルファロメオが圧倒的な存在感を放っていたし、『TAXi』ではフランスのプジョーが超ハイスペックのタクシーとして主役を務めた。

 

 

プラスアルファの“何か”

筆者も含め、ヨーロッパ車と言えばドイツ車を思い浮かべる人が多いと思う。2017年の輸入車のベスト4を占めたのはメルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディという並びで、すべてドイツ車だ。

 

「安全で頼れる車」というドイツ車のイメージが揺らぐことはないだろう。ただ、スタイリッシュネスとなるとどうだろうか。そういう基準なら、筆者がまず思い浮かべるのはイタリア、そしてフランスの車だ。イタリア車にもフランス車にも、遊び心などという簡単な言葉では表現しきれないプラスアルファの何かが宿っているような気がしてならない。

 

 

スタイリッシュなだけじゃない

若い世代の読者の方々には古い話で申し訳ないのだが、こんな話もさせていただきたい。1962年生まれの筆者が中学生の頃、爆発的なスーパーカーブームが訪れた。少年ジャンプで連載されていた池沢さとし先生の『サーキットの狼』という漫画がきっかけになり、ものすごい勢いでイタリア車に関する情報が入ってきた。

 

この漫画の主人公、風吹裕矢の愛車がロータス・ヨーロッパだった。ライバルたちが駆るのはランボルギーニやフェラーリ、そしてマセラティといった名車の数々だ。この漫画によってイタリア車に惹かれるようになった少年たちは決して少なくなかったはずだ。

 

フランス車に関して言えば、シトロエンの2CV――ルパン三世の『カリオストロの城』に出てきたやつだ――のように、おしゃれなのはわかるけど、ちょっとクセがある感じが否めない車が多いと思い込んでいた。

 

でも最近は、純粋に車としての性能に魅力を感じる人たちが増えているようだ。たとえばシトロエン社のハイドロニューマチック・サスペンションというテクノロジーは、エアスプリングと油圧シリンダー、そして油圧ポンプを組み合わせたサスペンションで、モーグルスキー選手の膝の動きのように衝撃を吸収し、スムーズな走行感を実現する。

 

そんなイタリア車とフランス車の魅力をあますところなく伝えるのが、『ル・ボラン 2018年3月号』(ル・ボラン編集部・編/学研プラス・刊)の特集記事だ。

 

フランス車、イタリア車が感じさせるもの

『ル・ボラン2018年3月号』には、フランスとタリアの人気車種を集めた「これがフレンチ&イタリアンの最新レシピ』という特集記事が組まれている。開始ページの見開きにちりばめられた各社のロゴを見るだけでワクワクする。

 

プジョーのライオンもシトロエンのダブルシェブロンも、ランボルギーニの暴れ牛も、そしてマセラティのトライデントも、とても美しい。特集全体を貫くアイデアとして記された次のような文章が、ヨーロッパ車ファンの気持ちを代弁すると思う。

 

高品質で信頼性も高く、いかにも精密機械的なドイツ車は確かに魅力的だけど、走りがメチャクチャ楽しい! とか、デザインがサイコー! などなど、個性派ぞろいのイタリアン&フレンチモデルには、クルマ好きのハートを揺さぶる“何か”がある。

『ル・ボラン 2018年3月号』より引用

 

フロントグリル周りだけを見ても、フランス車とイタリア車はおしゃれで個性的な面がまえをしている。

 

 

フランス車、イタリア車の教科書

20近い車種のスペックやインテリア、そして足回りに関する詳細なレポートは読み応え十分。テイストとしては、教科書に近い感じがする。アルピーヌA110とアルファロメオ・ステルビオは海外試乗で走りの面から徹底分析。

 

筆者目線でそれぞれの国から1台ずつ選んでピックアップするなら、フランスのアルピーヌとイタリアのアバルトだ。

 

アルピーヌA110は、誕生秘話も含め8ページを割いて紹介されている。筆者は決して車に詳しいわけではない。でも、実際にシートに座ってステアリングを握っているような感覚に近いものを受け取った。助手席にわんこを乗せて、神宮外苑あたりを走ってみたい。使い方を具体的に思い浮かべることができるのだ。

 

ランボルギーニやフェラーリといったスーパーイタ車に対しては、正直ちょっとリアリティを感じにくい。でもアバルトは小型車の展開が多く、日本で購入したとしても、日常生活での“乗りこなせる感”を容易に想像できる。それに、ボディカラーも鮮やかで、ちっちゃくてかわいい。

 

オーナーなら愛車に対する思いがひときわ深まるだろうし、いつか手に入れたいと思っている人たちはいやがうえにも気持ちがかき立てられるだろう特集記事だ。イタリア車やフランス車がまとう、具体的な定義が難しい楽しさ。それを理解する助けになってくれると思う。

 

【書籍紹介】

ル・ボラン 2018年3月号

著者:ル・ボラン編集部
発行:学研プラス

輸入車を軸にクルマやクルマ用品、ニュースなどをタイムリーに発信。ダイナミックなビジュアルとわかりやすい記事には定評があり、欧州車を中心とする現地取材企画は高い人気を誇る。

kindlleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る
Bookbeyondで詳しく見る