本・書籍
2016/4/25 0:00

金沢観光ガイドを読んだ地元民がアドバイスする

わたしは金沢市民なので、地元を紹介している観光ガイドを手に取ることはない。しかし、金沢市や近郊のコンビニで『金沢おさんぽマップ』(ブルーガイド編集部・著/実業之日本社・刊)という本が売っているのをよく見かけるので、すこし気になりはじめた。

 

 

 

たしかに北陸新幹線のおかげで市内の観光地はにぎわっている。うちの近所でも毎日のように旅人らしき人たちを見かける。

 

金沢ってそんなに魅力的なところなのだろうか。地元民なのでいまいち実感がない。きまぐれに観光ガイドを立ち読みしてみた。なるほど。はじめて金沢を観光する人にとっては手ごろな内容かもしれない。

 

 

金沢観光のモデルプラン

 

「一日中、金沢を遊びつくすモデルプランはこれ!」と題して、東京からやってくる観光客向のための巡回コースを提案している。北陸新幹線「かがやき」利用を前提としたスケジュールだ。

 

06:16 東京駅発
08:26 富山駅着
08:46 金沢駅到着
09:20 ひがし茶屋街を散策
11:30 近江町市場でランチ
13:00 兼六園&金沢21世紀美術館へ
16:00 片町&新竪町をぶらり
17:30 にし茶屋街を歩く

(『金沢おさんぽマップ』から引用)

 

早起きが苦手な人は、7:20発の便もあるらしい。すると1時間分のスケジュールを削ることになる。地元民のアドバイスとしては「片町&新竪町」をはずせば良いと思う。地元の若者向けのショッピングタウンであり、観光客を感動させるような場所ではないからだ。

 

新竪町(しんたてまち)には、個人経営のアパレルブランド店、ABCマート、アニメイト等があるので、どちらかといえば修学旅行生向けの観光コースといえる。

 

新鮮な魚介をあつかう近江町市場でランチ

 

近江町市場(おうみちょういちば)は、東京の築地でたとえるなら「場外市場」のようなところだ。鮮魚をあつかう一般客向け店舗や惣菜店や飲食店が軒をつらねている。

 

迷路みたいな構造なので、お目当ての店を決めていても、すぐにたどり着けないかもしれない。満席で順番待ちということもあるだろう。なにを食べれば良いか迷ったら、とにかく海鮮丼を選べばいい。

 

昼食の予算は、少なくとも三千円前後を見積もっておくべし。支払うだけの価値はある。まことに申し上げにくいのだが、新幹線特需に沸いている近江町市場はインフレ気味であり、千円や二千円では「満喫」というわけにはいかない。そもそも金沢観光におけるカネの使いどころは「飲食代」くらいしかない。「近江町市場で使わずにいつ使うの? 今でしょ!」とアドバイスさせていただく。

 

 

金沢のB級グルメについて

 

本書『金沢おさんぽマップ』では、「8番らーめん」と「カレーのチャンピオン」を紹介している。たしかに地元民に愛されているB級グルメだが、1泊や2泊しか滞在しない観光客が、スケジュールを消費してまで立ち寄るべき店ではない。

 

ただし「8番」も「チャンピオン」のいずれも、石川県民のうち少なくない人々にとってはソウルフードのような位置づけにある。

 

石川県にて50店舗を展開する「8番らーめん」は、なんの変哲もない野菜たっぷりのタンメンを提供するチェーン店であり、ラーメン通にとっては興味の対象外だと思われる。しかしながら、金沢市民ひいては石川県民にとっては「おなじみのラーメン屋さん」であり、ファミリー層や働く者たちの胃袋を40年以上にわたって支えてきた。

 

地場企業の「カレーのチャンピオン」は、全国展開している「ゴーゴーカレー」の源流に位置づけられる店だ。いわゆる「金沢カレー」なので、カレー通を自認している人であれば立ち寄っても損はない。わたしたち地元民のあいだでは「チャンカレ」という愛称でよく知られている。

 

チャンカレの人気メニューは「Lカツカレー」で、ゴーゴーカレーのカレーソースに比べると色合いも味もすこしだけマイルドな仕上がりだ。チャンカレの聖地(本店)は金沢工業大学の近くにある。チェーン店であり、カレーソースはセントラルキッチンで作っているはずなのに、支店によって味がビミョーに異なる。

 

きわめてローカルな話題で恐縮だが、わたしは堀内店の味と雰囲気が好きだ。金沢市内ではなく、隣の野々市市(ののいちし)で営業しているチャンカレのフランチャイズ支店だ。いつも熱々で出してくれる。

 

 

金沢だけでなく北陸3県の旅行にも使える

 

今回紹介したガイドブックには、金沢市内の主要エリアが掲載されている。金沢駅周辺マップはもちろん、多くの観光客が行くであろう近江町市場やひがし茶屋街については「みやげ物」と「飲食店」それぞれ別のガイドマップを用意している。

 

フルカラー印刷で作成された100m縮尺の地図には、主要地点間を歩いたときの移動時間が示してあるので、現在地とお目当ての場所との距離感をつかみやすい。一律100円の「ふらっとバス」が市内を巡回しているため、金沢観光において移動手段の心配はいらない。

 

『金沢おさんぽマップ』という書名だが、能登地方や富山県や福井県の観光ガイドも掲載されている。GW(ゴールデンウィーク)などの観光シーズンともなれば、近江町市場やひがし茶屋街などは混雑するため、予定を変更して金沢市内を避けようというときにも役立つ。

 

(文:忌川タツヤ)

 

 

【文献紹介】

金沢おさんぽマップ
著者:ブルーガイド編集部
出版社:実業之日本社

地図で旅する金沢・北陸ガイドの決定版! 北陸新幹線の開通により、東京―金沢間が約2時間半に! 金沢だけでなく、能登や富山、福井といったエリアの情報も満載。見開き完結の見やすい地図は、現地で旅の助けになること間違いなしです。【厳選の特集】●ぐぐっと近くなった北陸路 北陸新幹線の旅へ!●金沢建築さんぽ●ライトアップバスツアーで金沢夜景巡り●加賀百万石の伝統工芸体験●金沢かわいいみやげ●金沢っコのあたりまえグルメ●観光列車で能登めぐり●加賀温泉郷●富山ケンミンご自慢グルメ 海の幸と大地の恵み●富山絶景シーンselect8●福丼を食べに行こう●地球46億年の物語 恐竜博物館へ