運動はハードでなければ効果がないと思い込んではいないだろうか? 何かスポ-ツをはじめなければと思いつつも日々の忙しさに翻弄され、実践できていない人は予想以上に多い。
そんな現代のビジネスマン、ビジネスウーマンに朗報だ。毎日の生活の中に”歩き”を取り入れるだけで、徐々にしかし確実に健康になれるのだという。
『今からでも始められる歩活』(大人のカラダSTYLE編集部・編/学研プラス・刊)によると、毎日の生活の中で正しく歩けば、4週間で体が変わり、カラダ年齢が20歳も若返ることも夢ではないそうだ。
週150分のウォーキングを実践しよう
本書の中で医学博士の荒尾孝先生はこう解説している。ウォーキングで健康を得られる最低基準は、週に150分とされている。これはACSM(アメリカスポーツ医学会)とWHOの共同のガイドラインだ。
「それも毎日歩かなくてはいけない、ということはありません。平日の通勤や仕事中の移動などで1日計20分間歩いて、5日で100分、残りの50分は週末に歩いてもかまいませんし、週末だけで150分でもOK。あまり縛りを作らずに始めてみましょう」
(『今からでも始められる歩活』から引用)
まずは、自分が毎日どれぐらい歩いているかを知ることが大事だ。週150分を歩数に換算すると、週1万5000歩に相当する。もしも、足りなかったら、通勤時、仕事中、帰宅時のどこかで歩数を稼ぐことを考えよう。
また、脂肪が燃焼するのは、歩き始めて20分後といわれているので、歩くことに慣れてきたら1回20分以上を続けて歩く工夫をすると、メタボを予防・改善し、また生活習慣病にも効果があるそうだ。
犬の散歩で体質改善ができた!
歩くことが健康にどれほどいいか、私は実感している。40代の半ばになったとき、大型犬のラブラドールが家族の一員となり、散歩で朝昼晩と歩くようになったら、私の体調は急激に変化したのだ。それ以前の私はしょっちゅう肩こり、腰痛で悩み、また季節にかかわらずすぐに風邪を引いていた。
ところが犬と歩きはじめたら体質が変わって健康になり、足腰も丈夫になっていった。犬をノーリードで散歩させられる環境に暮らしていたので、朝の散歩は特に長かった。犬が行きたい方向に自由に歩かせ、私はその後をついて行った。森を歩き回り、時には丘を登ったり、1時間半から2時間は歩き回った。しかもラブラドールは水に濡れても平気な犬種なので雨が降ろうが、雪が降ろうが、喜んで自然の中を駆け回っていたのだ。昼の散歩は短かめだったが、夜も夕食の片付けを済ませると、最低30分の散歩に出ていた。
この毎日の犬の散歩は、中年太りの予防にもなったようでワンサイズ下のボトムがはけるようになった。また、めったに風邪を引くこともなくなり、自分でも驚くほど快調な日々を過ごすことができるようになったのだ。
歩くと幸せホルモンが分泌される
さて、本書によるとウォーキングにはうつを改善する効果があるのではないかといわれているのだ。前出の医学博士の荒尾先生によると、現時点では運動によるうつ改善のメカニズムは解明されてはいないが、動物実験では”セロトニン”などが関係していることがわかっているそうだ。
セロトニンは心のバランスを整える作用のある伝達物質で、不足すると精神のバランスが崩れ、うつ状態に陥るといわれている。ウォーキングなどの中程度な運動には、このセロトニンを増やす効果があるというのだ。また、運動によって、幸せホルモンと呼ばれるβエンドルフィンやドーパミンが増加することも作用していると考えられる。
(『今からでも始められる歩活』から引用)
さらに、歩くことで全身の血流がよくなり、脳に十分な酸素が運ばれ、脳の働きも活発になる。結果、自律神経のバランスがよくなり、ストレスもたまりにくくなるという。つまり、歩くことはいいことづくめなのだ。
飲み過ぎ食べ過ぎを”帰宅時の速歩き”でリセット
本書の監修者のひとりである日本ウォーキングセラピスト協会代表理事の長坂靖子先生によると、飲み会の帰り道、電車でうたた寝しながら帰るか、途中3km を歩いて帰るかがメタボの別れ道になるという。食後にだらだらと過ごせば、栄養素は脂肪となり蓄積されてしまう。が、帰宅途中にひと駅分くらいを速歩きすれば、食べ過ぎ飲み過ぎはすぐにリセットできるそうだ。
歩くことは有酸素運動で、体内にある脂肪を分解するよう働きかけてくれるのだ。このとき速度と負荷をアップして消費カロリーを増やせば痩せ効果は倍増する。
「例えば、1駅前で下車し、3km歩いたとします。会話ができるぐらいのゆっくり歩き(時速4km)で歩くと、消費されるエネルギーは、143kcal相当になります。一方、息が弾む程度の速歩き(時速7km)で歩くと191kcalに。速度に変化を加えるだけで、48kcalも増量するのです」
(『今からでも始められる歩活』から引用)
負荷は通勤バッグを利用する。手帳や書類などで通勤バッグは4kgくらいの重さになっているはず。それを両肩にかけて歩くと、全身の筋肉がより使われやすくなるので、消費カロリーはさらにアップするそうだ。
バッグのかけ方、歩く姿勢、腕の振り方、骨盤の動かし方などは写真つきで詳しく解説している。
腰痛や膝の痛みで悩む人は水中ウォーキングを
下半身の衰えを感じ、歩くことがキツイと考えている方には”水中ウォーキング”がおすすめだ。東京大学生涯スポーツ健康科学研究センター技術補佐員の樋熊敬史先生によると、
「水の中で歩くと、浮力が働き重力から解放されます。そうすることで、筋肉が緩み陸上よりも体に負担をかけずに運動するkとおができます。ひざへの負担も少なくするため、けが防止になります」
(『今からでも始められる歩活』から引用)
プールの水温は、体温より低いため、体は体温を保とうとして自らの脂肪を燃やすので、水の中にいるだけで脂肪燃焼効果が得られるというわけだ。この項では効果的な水中ウォーキングの方法が写真とともに紹介されている。
この他に本書では、ウォーキングで体をつくるためのフォームの見直し、歩きと一緒に行う簡単筋トレ、疲労回復・栄養摂取術など、歩くための情報が満載だ。さらに、自然中を歩く低山ハイキングの楽しみ方、日本の低山20選もありガイド本としても役に立つ。
【書籍紹介】
今からでも始められる歩活
著者:大人のカラダSTYLE編集部(編)
発行:学研プラス
歩くとは人間の行動のなかでも基本的動作であるが、それだけに健康効果が凝縮されている。厚生労働省でもメタボ対策にはウォーキングを奨励。体を締めるだけでなく、様々な健康効果を最大限に得るため、なんとなく歩くから本当に効くウォーキングへと導く。