本・書籍
2018/6/4 23:00

100人いれば100通りの性がある。ゲイであることをカミングアウトした牧師から学んだこと――『あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる』

先日、勝間和代さんが女性と同棲していることをカミングアウトした記事が話題となった。記事には、パートナーである増原裕子さんと並んで、穏やかに微笑むツーショット写真が載せられていた。

 

2人とも、なんていい笑顔なのだろう。同時に、同じような笑顔をかつて見たことがあったことを思い出した。そうだ、あれは5年以上前、妹のようにかわいがっていた後輩とその友人とでランチをしたときのことだ。

 

少し躊躇いがちに、でもまっすぐ、キラキラした瞳で私を見つめて、「実は、○○さん(同席していた後輩の友人)と付き合ってるんです」と打ち明けてくれた。「彼氏ができたんです」という告白と同じように、ごく自然に。そして、幸せオーラいっぱいで。

 

それまでは、後輩が付き合っている”彼”との相談はよく受けていたので、今回の相手が女性だということに驚いたのは事実だが、それもほんの一瞬で、すんなり受け止められた。なぜならば、同じようなカミングアウトをされたのは、初めてではなかったから。

 

 

男友達からの告白

後輩からの告白から遡ること5年、当時とても仲が良かった男友達がいた。グループでいろいろな場所に出かけたり、朝までカラオケで熱唱したり。ある日、いつものように数名で飲んだ後、帰り際に「ちょっとお茶飲んで行かない?」と誘われて、2人でカフェに入った。

 

少し酔いがまわっていたが、コーヒーを挟んで向かい合い、いつになく言葉少なな彼。何か言おうとしている。これは、もしや。どうしよう、彼のことは好きだけど、あくまでも友達としてであって、恋愛感情はない。ああ、どうしよう。

 

しばしの沈黙の後、彼の口から出た言葉は、意外なものだった。

 

「僕、ゲイなんだ。実は、○○くんのことが好きなんだ」

 

…え!? ○○とは、同じく一緒によく遊んでいた男友達だった。てっきり愛の告白をされるとばかり思っていた私は、大きな勘違いだったと気づき、あまりの恥ずかしさに慌てながら、こう答えた。

 

「そっか。そうなんだ」

 

「引かない?」

 

「全然。そうかー。○○くん、いい人だもんね」というようなことを話した気がする。自分の勘違いによるダメージが大きかったせいか詳細までは覚えていないが、同性を好きになること自体に、特に違和感や嫌悪感は抱かなかったのが正直な感想だ。すると、彼は、うれしそうに、でも苦しげにこう続けた。

 

「ありがとう。実は△△(共通の女友達)にも打ち明けたけど、すごく否定的なことを言われてさ。実際、結婚もできないだろうから、親に孫の顔を見せてあげられないし。○○くんに告白しようかも迷ってる」

 

その言葉を聞いて、確かあのときの私は○○くんとのことを応援したはずだ。数日後、思い切って○○くんに気持ちを打ち明けたこと、そして拒絶されてしまったことを、彼から報告された。

 

 

ゲイであることをカミングアウトした牧師の話

あの日以来、私が彼にかけた言葉が正しかったのかどうか、ずっと迷っている。恋愛の相談はよく受ける方だったし、いつものように応援してしまったけれど、そのことがきっかけで彼を傷つける結果になってしまったのだったとしたら。

 

その答えを見つけたくて、こんな本を手にとってみた。『あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる』(平良愛香・著/学研プラス・刊)。日本で初めてゲイであることを公表して牧師となった著者が語る半生記である。

 

「同性愛は罪」とするキリスト教の教えと差別に苦悩しながらも、誰もが自分らしく生きられる社会をつくるため、人権やセクシュアル・マイノリティの正しい知識を教えてくれている。そして、誰からもわかってもらえないと絶望のどん底だった時期のこと、初めて人にゲイだと告白したときの想い、初めての恋人、家族へカミングアウトしたときの反応、すべてを包み隠さず語っている。

 

 

100人いれば100通りの性があって当然

近年、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)という言葉をよく耳にするようになった。セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)という意味で使われている。けれど、実際のところはよくわかっていなかった。

 

平良さんによると、人間の性は大前提として、「生物学的性(sex)」としての男性と女性、それとは別に、自分を男性として感じているか女性として感じているかの「性自認(Gender Identity)」、性的に興味を示す相手が男性か女性かの「性的指向(Sexual Orientation)」 の3つの分け方がある。それぞれ男女なので、計算上では2×2×2=8通りの性があるということになる。

 

けれども、男女2通りにわけること自体が「男女二分法」でしかなく、性自認は「男」か「女」かのどちらか100%に定まっているわけではない。性的指向だって、両性に向いている、もしくはどちらにも向いていないというケースだってあるのだそう。

 

つまり、性というものは100人いたら100通り、人それぞれ異なっているのが当然のことなのだ。

 

 

気づかないうちに差別をしていないか?

多数派として生きている人は、知らず知らずのうちに少数派の人を抑圧しているのです」と平良さんは述べる。そして、多数派であることを当たり前だと思っているから、少数派の人の苦しみになかなか気づけないと。

 

たとえば、「家族以外は面会謝絶」という事態に同性のパートナーは面会が認められないこと。たとえば、異性愛者間では受け取れる保証が同性愛者間では受け取れないことがあること。たとえば、病院の待合室にてフルネームで呼ばれることを苦痛だと感じるトランスジェンダーの人がいること。

 

そして、意図していなくても、差別的な言動や状況は、ふとした瞬間に出てきてしまうものなのだと。平良さん自身も、日常のさまざまな場面で「ここに不要な線引きは生まれていないか」を常に振り返っているそうだ。

 

電通ダイバーシティ・ラボの調査によると、LGBT層に該当する人の比率は7.6%だという。10~15人に1人の割合で、左利きの人と同じくらいいる計算になる。思っていた以上に多い。いや、そう感じることこそ、私が多数派として生きてきたことの証なのだろうか。

 

平良さんの本を読むと、いかに自分が無自覚で生きてきたかを痛感する。そして、誰もが自分らしく、男とか女とかではなく、私らしく生きていくことの大切さに気づかせてくれる。「みんなちがって、みんないい」のだ。

 

お互い忙しく、もうずいぶんと長い間連絡をとっていないが、私にゲイであると打ち明けてくれた彼は元気だろうか。後輩は、彼女と仲良くやっているだろうか。

 

平良さんのメッセージがもっともっと広がって、彼や彼女が生きやすい世の中になることを切に願う。

 

【書籍紹介】

あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる

著者:平良愛香
発行:学研プラス

「同性愛は罪」とするキリスト教の教えと差別に苦悩した後、「神はすべての人を愛する」と確信、日本で初めてゲイであることを公表して牧師となった平良愛香。激動の半生と「差別者にも被差別者にもならないため」に気づいてほしいことを綴った必読の書。

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