本・書籍
2018/8/3 6:30

RPGの薬草の元ネタは「よもぎ」だった?――『魔法世界の元ネタ図鑑』

「ドラゴンクエスト」などのRPGでは、必ずと言っていいほど登場するアイテムがある。それが草だ。

 

薬草を飲むと、HPが回復するし、毒消し草を飲むと、体内の毒を消すことができる。これらの草は、現実世界にも存在している気がする。それは、ハーブである。

 

 

メディカルハーブとは

私は「メディカルハーブ検定」なるものを持っている。1回の受験者は2000人を少し上回る(2015年での数字)。1万人の資格だという。内容は、風邪や頭痛などの症状に合わせ、どのハーブをどのように用いると良いか、といういわゆる代替医療に近いものである。

 

この検定で学んで以降、少し体調を崩した程度であれば、ハーブティーを飲んだり、アロマの精油を漂わせたりと、セルフケアするための手段がわかるようになったので、知識をつけて良かったなと思っている。とはいえ症状に合わせてたくさんのハーブを揃えるような予算はないから、結局いつも備えているハーブは限られてくる。私の場合常備しているのはラズベリーリーフで、ヨーロッパでは安産のお茶と言われ、子宮の調子を整えると考えられているものだ。

 

 

魔術の薬草とは

魔法世界の元ネタ図鑑』(ヘイズ中村、魔法研究会・著/学研プラス・刊)では、RPGに出てくる設定の元ネタを考える本で、とても興味深い。ヘラクレスやアーサー王など、神話や実在の古典人物などとの関連性も解説してくれている。例えば、ヘラクレスという名前は「ファイナルファンタジー」では武器の名前で出てくるといったゲームとつながる情報も付いているため、世界をより深く楽しめるようになっている。

 

この本では、キャラクターだけでなく、地名やモンスター名、そしてアイテム名の元ネタについても考察されている。もちろん薬草についても記述があり「秘薬」と解釈されている。とはいえ、本にはその秘薬について「たいてい、ありふれた薬草のブレンドによる痛み止めや咳止めといった民間薬であり、ほれ薬でも毒薬でもなかった」としている。西洋で「魔女のハーブ」という英語名を持つ薬草はヨモギだそうで、日本ではしょっちゅう和菓子に使われているポピュラーなものだ。

 

 

聖書にも出てくるアロマやハーブ

しかし、よもぎは「よもぎ灸」や韓国では美容で「よもぎ蒸し」にも用いられる。入浴剤や塗り薬に昔から使われてもいる万能ハーブともデトックスハーブともいわれるものだ。西洋ではワームウッドと言われ、強壮作用があるとされている。そして、よもぎは聖書の黙示録にも「ニガヨモギ」という名称で出てくる。何らかの効果を感じているからこそ、あちこちで使われているのではないだろうか。

 

聖書には他にもキリストが誕生した際の賢人の贈り物としてアロマが出てくる。「金と乳香と没薬を授けた」と書かれているのだ。乳香とはフランキンセンスのことで、没薬とはミルラのことだ。フランキンセンスは回復力があると考えられ、ミルラは魂の蘇りを信じてミイラにも使われていたものである。

 

 

現代世界と魔法世界での秘薬

これらを魔法世界の秘薬と比較すると、回復力があるフランキンセンスは薬草、ワームウッド(よもぎ)は毒消し草、ミルラは世界樹の葉に位置づけられるのではないだろうか。人々が古来よりその効能を信じ、使い続けてきた秘薬が、現代でもアロマテラピーやお茶などで用いられているのはとても神秘的だ。

 

本では魔女はさじ加減ひとつで効果が変化する劇薬を扱うこともあったとしている。メディカルハーブ検定やアロマテラピー検定でも用いるハーブや精油の量は何度も問題で確認してくるほど大切なものだ。検定でしっかり知識を得て、古来から秘薬として大切に使われていた植物をしっかり使いこなしていきたいものだ。

 

 

【書籍紹介】

魔法世界の元ネタ図鑑

著者:ヘイズ中村、魔法研究会
発行:学研プラス

ファイナルファンタジー、ドラゴンクエスト、ハリー・ポッター・シリーズなどに登場するキャラクターやアイテムのもとになった事象の本来の意味などを図鑑的に紹介。実際の魔法界での意味と、ゲームまたは物語世界との微妙なズレなどについても解説する。

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