本・書籍
ビジネス
2018/9/7 17:00

「子ども食堂」「Reduce Go」など日本で広がり始めた「食」のシェアリングエコノミー――『シェアリング・エコノミー』

「子ども食堂」と呼ばれる場所が始まってから数年が経つ。おもに子どもやその親などに食事を無料、もしくは安価で提供するところのことで、全国的にその動きは広がり、全国で2000か所を超える規模になっているともいう。福祉的な意味合い以外にも、国内外で食事が安く提供される例はどんどん増えている。

 

 

格安すぎる新サービス続々

4月に日本でリリースされた「Reduce Go」というアプリは画期的だ。月額1980円を支払えば、飲食店が余らせた食材を1日2回まで無料で受け取りに行くことができる。まだ始まったばかりのサービスで地域も食品も限られているけれど、もしこのアプリが拡がれば、うまく使えば食費を月額1980円で済ませることができるかもしれないのだ。

 

さらにすごいのは3月に始まった「フリーランチ」というシステムも目を疑うような格安っぷりだ。なんと月額500円で平日のランチを食べることができる。月曜日定休なので、ランチが食べられるのは月に約16回。毎回食べたら1回のランチ代はたったの33円で済んでしまう。

 

 

お金で測れない価値観

「Reduce Go」を活用すれば、お店での廃棄食材を少しでも減らすことができる。いわゆるフードロス対策なのだ。廃棄するよりは少しでもお金になったほうがいい。それはヤフオクで1円(送料別)で大型家財を出品する人も同じ気持ちだろう。大型家財は廃棄する時に粗大ゴミ料金がかかる。それよりはタダに近い料金でも誰かに引き取ってもらえたほうが助かるのだ。

 

「フリーランチ」のほうは飲食店が宣伝のためにどこかに払う広告料をやめて、安いランチを提供することを提案している。やめた広告料でランチの食材費はまかなえるだろうということだ。ランチを格安で食べ、店の味が気に入った客は、通常価格で営業している夜にもやって来るという期待もあるだろう。今までは儲け重視だったサービスが、金銭以外の価値観で動き始めているのを感じている。

 

 

海外は進んでいる

シェアリング・エコノミー』(アルン・スンドララジャン・著/日経BP社・刊)は、2年前(2016年10月)に出版された本で、海外でのこうした格安化の動きをレポートしている本だ。これを読むとお金を介さないやりとりや格安での提供方法は、海外のほうがかなり進んでいる。何しろ家と家を交換するマッチングサイトまであるというから驚いてしまう。今後日本にもこうした新しい流れが入ってくるのではないだろうか。

 

日本も2033年には2000万戸もの空き家が生まれると予測されていて、すでに地方自治体では空き家を無料もしくは格安で移住者に提供する動きも出てきている。よりごのみさえしなければ、家さえもタダで手に入る時代になってきているのだ。洋服も今後3Dプリンターが普及すると、自宅で服をプリントすることができるようになるため、衣服費も格安になる可能性があるという。

 

 

進むシェアリングエコノミー

シェアリング・エコノミーとは、空いている時間や資産をシェアする経済活動だ。最近話題の「民泊」や「おっさんレンタル」もそのひとつだ。格安に利用できる反面、相手は企業ではないので心配もある。そこで役立つのが信用だ。利用者のレビュー点数によってそのひとの信頼度が可視化できることが多い。

 

この本では、一歩進んだ食のシェアリングも紹介されている。「ソーシャル・ダイニング・プラットフォーム」というものだ。人に料理を食べてもらいたい人と、誰かの家に寄って食事をしたいという人のマッチングサイトである。無料ではないかもしれないけれど格安で食事ができ、しかも誰かの家に寄って会話を楽しむことができる。日本でも、孤食に飽きた人が誰かとのつながりを求めてこうしたシステムを利用する日が近づいているのだろう。

 

 

【書籍紹介】

シェアリングエコノミー

著者:アルン・スンドララジャン
発行:日経BP社

社会、ビジネス、雇用のすべてが変わる!シェアリングエコノミーの第一人者が緊急提言。今注目を集めているシェアリングエコノミーとは、いったい何か?世界中の最新実例をもとに急激にシフトするビジネスモデル、雇用制度などすべてを解説。

kindlleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る