少しずつ築き上げてきた家事・育児・仕事のバランス
元木:おふたりは、仕事のパートナーでもあり夫婦でもありますよね。家にアトリエがあって仕事も生活もずっと一緒なわけですが、アーティストとしてぶつかったりすることはないんですか?
亀山:昔はよくぶつかっていましたが、最近はあまりないですね。ケンカするのが基本的に面倒だし、お互いがやったことに対して口出しもあまりしなくなりました。
中川:アイデアは亀山、私はどちらかというとデザインとか編集していく作業が好き。そこが最初から分かっているから、役割分担は自然にできてますね。夫婦、父と母としては、母親だから家事育児を全部するとか、父親だから外で仕事してくるとか、そういう考えも持っていません。一緒に仕事をしている分、その日相手がどんな仕事をしてきて、どのくらい疲れているかっていうことが伝え合わなくてもわかるから、自然と家事も分担できてるんだと思います。家事育児がままならなければ、結局仕事もままならないじゃないですか。だからやるべき時間の中で済ませられるようにお互いが動く。うちはそういう感じですね。
元木:それでも、お母さんの顔から仕事の顔に変わる瞬間ってあるのかなぁって、同じ女性としては気になります。
中川:そういう切り替えは意外とないっていうか、ずっと地続きな気がしますね。私たちって夜に仕事をするのが苦手なんで、朝子どもたちを送り出したら、9時から夕方の5時まで、割としっかり時間を決めて作業をするんです。それでもアイデア出しが間に合わなかったら、子どもたちとの朝食の時間でも仕事のことを話したりするのもアリ。子どもたちはつまらないから「違う話をしようよ」って口を挟んできたりするんですけど(笑)、そこは臨機応変にやっています。
元木:自分たちなりのリズム、バランスがしっかりできているんですね。
中川:2002年からふたりで作家活動を始めて、それから結婚して子どもが生まれるという過程で、もちろんバランスが崩れてしまうときもありました。だから、本当に徐々に築き上げてきたものだと思います。一緒に仕事をしている分、お互いの事情をいちいち共有する必要がないというのは、夫婦として確かにラクかもしれない。でもケンカはあまりしないとは言っても、アーティストとしてはもちろん違う意見も持っていますし、その差がないと仕事も作品もナァナァになってしまうので、そこを大事にし続けることが永遠の課題だと思いますね。
【プロフィール】
絵本作家 / tupera tupera・亀山達矢(右)中川敦子(中)
絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、舞台美術、空間デザインなどで幅広く活躍する人気ユニット。2002年に活動をスタート。絵本『わくせいキャベジ動物図鑑』(ブロンズ新社)で第23回日本絵本賞大賞、『しろくまのパンツ』でマルセイユ 子どもの本大賞 2014のグランプリを受賞するなど、国内外にファンを拡げている。京都造形芸術大学 こども芸術学科 客員教授。
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