本・書籍
2018/11/2 21:00

年間1000冊の読書量を誇る作家・谷津矢車がオススメ!秋の夜長に読みたい10冊

新選組の女、大人vs子どもの知恵比べ、日本最後の忍者……

今年、個人的に一番引き込まれた歴史小説はこちら、火影に咲く(木内昇・著/集英社・刊)である。幕末の維新志士や佐幕派武士たちの「影」に息づく女たちの姿にスポットライトを当てた一冊である。「新選組 幕末の青嵐」や「地虫鳴く 新選組裏表録」(いずれも集英社)といった優れた新選組諸作でも知られる著者らしく、細やかに、時には大胆に幕末の志士と女の関係が描かれてゆく。この本を手に取られたあなたは、是非とも著者の筆の冴えに酔いしれていただきたい。なお、本書はかなり昔の短編も採録しているため、著者の歩みを俯瞰する一冊でもある。これまで木内作品に触れて来なかった方にもお勧めである。

 

夏を取り戻す(岡崎琢磨・著/東京創元社・刊)も良かった。これまで著者はお店を舞台にした連作短編を世に問われてきたが、本書ではその二つを取り払い、団地で起こった狂言誘拐事件を追う大人の記者たちと、誘拐事件をでっち上げた団地の子どもたちとの知恵比べを扱った。しかし、調べが始まるうちにこの団地を巡る様々な事情が浮かび上がり、また過去のある出来事が……。ミステリ作品でこれ以上のネタを明かしてしまうのは野暮というものゆえ口をつぐむが、大人の目に見えない、子どもの世界の力学を巧みに用いてストーリー構築をしてみせた。著者の新境地である。

 

最後は漫画から。シノビノ(1~6)」(大柿ロクロウ・著/小学館・刊)である。幕末期にペリー艦隊を内偵したとされる実在の忍び甚三郎が、幕末の動乱の只中で忍び働きをするという筋の漫画だが、本書の良さはとてつもない「歴史離れ」ぶりである。ペリー提督や吉田松陰、新選組メンバーなどの実在の人物がバンバン出てくるのだが、少年漫画という枠組みに合わせてキャラクター構築されながら、最終的に歴史との平仄を合わせてくる。だが何より本書の美点は、「忍び」「武士」という幕末期においては滅びゆく存在を主人公側に配置したことで、幕末維新という時代の心性を描き出したところにある。全六巻。秋の夜長に読んでみてはいかがだろうか。

 

と、十冊(+α)紹介してみたが、まだまだ紹介し足りない。この世の中には、素晴らしい本が満ちあふれている。あなたの「面白きこともなき世を面白く」してくれる本だってきっとあるはずだ。

 

皆さんが下の句に「書物なりけり」とつけてくださる日が来たならば、書痴の端くれとしては非常にうれしい。

 

【プロフィール】

谷津矢車(やつ・やぐるま)

1986年東京都生まれ。2012年「蒲生の記」で歴史群像大賞優秀賞受賞。2013年『洛中洛外画狂伝狩野永徳』でデビュー。2018年『おもちゃ絵芳藤』にて歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞。

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