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自己啓発
2019/4/8 21:45

人間関係が原因で生きづらさを感じている人たちにおすすめの一冊―『人づきあいがラクになる「心理学の教え」』

ここ数年、ドラマの影響もあるのか、「アドラー心理学」というワードがかなり浸透してきたように思う。

 

とはいえ、言葉だけは知っているが具体的なことは知らない…という人も多いのではないだろうか。実は私もその一人だ。

 

それが先日、非常に感銘を受けたPTAの講演会があった。よくよく調べてみると、サブタイトルは「アドラー心理学に基づく子育て講座」。これが噂のアドラーか! と俄然興味が湧き、その講演会の登壇者であった臨床心理士・井上知子氏の著書を早速読んでみた次第である。

 

今回は、井上氏の『人づきあいがラクになる「心理学の教え」』(日経BP社・刊)から、家庭でも職場でも活かせるアドラー心理学についてご紹介していこう。

 

本音と建前、I(アイ)メッセージとYOU(ユー)メッセージ

どんなに正直者を自負している人でも、本音と建前を使い分けているに違いない。何故ならば、人間関係を円滑に進めるためには、時には建前も必要であるからだ。

 

けれども、建前ばかりで自分の本心を出さないと、心の中に不満が募って、いつか爆発してしまう。たとえば、普段から夫の言動に不満を持っているが、口には出していない妻がいたとする。そんな彼女に「我慢せず、本音を言ってみて」と促すと、高い確率で夫への不平不満や攻撃的な言葉が出てくるだろう。

 

井上氏曰く、「多くの人が本音と思って相手から隠している言葉は、YOUメッセージである」のだそう。YOUメッセージとは、YOU(あなた)が主語になる文章で、「あなたが悪い」「あなたはこんなに酷い」と相手を非難する言葉。けれど、そのYOUメッセージの奥底にあるのは、別の望みなのだと井上氏は語る。

 

夫に対して怒り心頭、「あなたが悪いんだから、もう別れてやる!」というYOUメッセージは言わば「ニセモノの本音」であり、さらに心の奥に潜んでいる「ホンモノの本音」は「私の気持ちをわかってほしい」「あなたと一緒に力をあわせて生きていきたい」、つまり私の願いや希望である「I(アイ)メッセージ」なのだそう。

 

YOUメッセージは、往々にして相手を非難し、責める言葉。「なんでこんなに帰りが遅いの?」と疑問形の表現で詰問するのも、その一種だ。そして、非難し責めるだけでなく、「相手を変えようとする表現」でもあるという。当然、言われた側は気分が悪い。反論や反発も起こるだろう。

 

それが、自分の感情や関心、大切にしたい気持ちを述べる「Iメッセージ」であれば、話は別だ。「帰りが遅いから、何かあったんじゃないかって心配だったのよ」と伝えれば、相手の怒りを刺激する作用は少ない。ほんの少しの伝え方の違いだが、相手の反応は大きく異なりそうだ。

 

 

コミュニケーションを円滑にする「反映的な聴き方」とは

人とのコミュニケーションをスムーズにするカギは、「聴く力」である。なかでも、「反映的な聴き方」と呼ばれるテクニックが重要なのだと井上氏は述べる。

 

「反映的な聴き方」とは、聞き手が話し手の鏡になり、相手の感情を映し出す聴き方のこと。たとえば、子どもが帰宅するなり「もう○○ちゃんなんて大嫌い!絶対遊ばない!」とかなりご立腹だったとしよう。そのとき「なんでそんなこと言うの? 誰とでも仲良く遊ばなきゃダメじゃない」と答えるのか、はたまた「そうかー、○○ちゃんと遊びたくないんだねー」と答えるか。自分が子どもの側に立って想像してみてほしい。

 

私はこのやりとりの子ども役を実際に講演会のワークで行ったのだが、前者は「だってひどいこと言うんだもん!」と思わず反発してしまった。一方後者は、「う、うん…そうなの…」と怒っていた気持ちが一気に下がり、平常心に戻れた。「話を聞いてほしい」という気持ちも湧いてきた。

 

反映的な聴き方は、相手を肯定も否定もせず、ただ感情を受け止めるだけ。先程で言うYOUメッセージではないので、沸点に達していた感情がぬるま湯にまで下がり、気が済んだり解決策が見つかったりするのだそう。

 

かなり効果的なので、ぜひ試してみてほしい。

 

 

「自信がない」と「できない」は似て非なるもの

 もうひとつ、『人づきあいがラクになる「心理学の教え」』でなるほど!と膝を打ったのが、「自信がないとできないは関係ない」というくだりだ。

 

端的に言えば、「自信がある・ない」は過去のこと、「できる・できない」は未来のことで、時間軸が違うのだと井上氏。それを混同してしまうと、「やらないからできない」「できないからやらない」という負の感情の連鎖に入り込み、何の成長にもつながらない。

 

年齢をかさねればかさねるほど、失敗を怖れ、世間の評価を気にして新しいことにチャレンジしづらくなる人が多いものだ。けれど、成功しても失敗しても、そのままの自分を認める「アイアムOK」の感覚こそが大切で、失敗や成功を繰り返して「私」という人間のアイデンティティの確立に繋がると井上氏は述べる。

 

これは子育てにおいても同様で、子どもができるだけ失敗をしないように、うまく(効率よく)生きていくために親が先回りし手厚くケアして育てていくこと、一見子ども想いに見える親心こそ、子どもが失敗する勇気を奪ってしまっているのだ。過保護すぎる親は、少し立ち止まって考えたい。そして、「自信がなくても大丈夫! やってみようか」と言える親になりたい。

 

対人関係に悩むビジネスマンも、子どもの育て方に迷う親も、自分に自信が持てない大人も、すべての人においてのヒントが盛りだくさんな『人づきあいがラクになる「心理学の教え」』。

 

講演会の際に本書を購入し、せっかくだからとサインをお願いしたところ、井上氏はこんな一言を添えてくれた。

 

「楽しい人生を!」

 

この言葉にすべてが詰まっていると感じた。アドラー心理学、実に奥が深い。

 

【書籍紹介】

人づきあいがラクになる「心理学の教え」

著者: 井上和子
発行:日経BP社

私たちが感じるストレスやいやな気分の大半は、人間関係から生じています。本書で紹介する「心理学の教え」を少しずつ生活に取り入れることで、あなたの仕事もプライベートも、劇的に充実していきます。コミュニケーションは「技術」で変わります。裏付けのある心理学的な方法を学び、実践すれば、人間関係はどんどんしなやかになっていくのですが、残念ながら、学校でも家庭でもその「技術」をきちんと教えてくれません。その結果、手探りで、試行錯誤を重ねがら、自己流のコミュニケーション法を身に付けていきますが、いかんせん自己流ですので、ちょっとした出来事があっただけで、すぐ壁に突き当たってしまいます。本書は、どのようにしたら人間関係をうまく形成していけるのかを、身近な事例を用いて、やさしく、丁寧に解説していきます。

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