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2019/5/7 21:45

あなたはいくつ知っている? 世界で愛されている多種多様なチーズたち

農林水産省の調査によるとチーズの消費量が年々増え続けているそうだ。日本人の9割が「チーズが好き」と答えていて、チーズ市場はますます盛り上がっている。

 

昭和30年代生まれの私が子どものころは”プロセスチーズ”しかなかった。それが今では、地方のスーパーでもチーズコーナーが拡大中で、カマンベール、ラクレット、ゴーダ、モッツァレッラなど世界のチーズが手軽に買えるようになったのだ。

 

 

ひとつの村にひとつのチーズがあるフランス

プロセスチーズの味しか知らなかった私が、いきなりチーズ大国フランスで暮らすことになり、はじめてフォマージュリー(チーズ店)を見たときは本当に驚いた。

 

しっかり数えたことはないが、マルシェの小さなチーズ店でも100種類ほど、大きな店ではそれよりはるかに多くの種類のチーズがずらっと並んでいたのだ。フランスではひとつの村にひとつのチーズがあると言われている。一年365日毎日違った村のチーズを食べても、まだまだ他の味があるというからスゴイ!

 

フランス人は毎日チーズを食べていて、家庭の冷蔵庫には常に5~6種のチーズが入っているというのが一般的のようだ。友人の家庭ではパパが好きな青カビのブルーチーズの代表”ロックフォール”、ママが好きな1000年以上の歴史があるフランスで人気No.1の”コンテ”、長男が好きな白カビのチーズの代表”カマンベール・ド・ノルマンディ”、長女と次女が好きな山羊のチーズ”サント・モール”がいつも冷蔵庫に入っていた。この他にはその季節においしいチーズ、料理に合わせたチーズが加わっていた。また、ヴァカンスに出かけたときに、その土地のチーズを必ず味わうのだと彼らは言っていた。

 

 

人類がつくった最も古い加工食品

世界のチーズ図鑑ミニ』(NPO法人チーズプロフェッショナル協会・監修/マイナビ出版・刊)によると、チーズは人類がつくった最も古い加工食品と言われているそうだ。

 

そもそもチーズとは、なんでしょうか? かんたんにいうと、ミルクを固め、そこから水分を除去したもの。つまりチーズは、ミルクのたんぱく質と脂質を固めたものの総称です。

(『世界のチーズ図鑑ミニ』から引用)

 

ミルクのほとんどは牛のものが使われるが、ヨーロッパなどでは、山羊や羊、水牛のミルクからつくられるチーズもある。本書は世界のチーズ170種を選び、その原料、製法、味わい、そして美味しい食べ方を解説した一冊だ。

 

 

ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いは?

日本人が長年親しんできた”プロセスチーズ”は、ナチュラルチーズを加熱して溶かして乳化させ、再形成して殺菌状態で包装したもの。微生物は死滅しているので、それ以上は熟成せず変化もしないチーズで、ニオイがなく口当たりがいいのが特徴だ。

 

これに対して、微生物が生きていてる状態なのが”ナチュラルチーズ”だ。世界にはさまざまなナチュラルチーズがあり、その分類は難しいそうだが、本書ではフランス式分類法で7種に分けて解説している。

 

①フレッシュタイプ

熟成期間をもたずにすぐに食べられるチーズで、マイルドな味わいが人気。イタリアのリコッタやマスカルポーネなどがこのタイプ。

 

②白カビタイプ

表面に白カビを繁殖させ、熟成させてつくられるチーズで、濃厚でクリーミーな味わいが特徴。カマンベール、ブリ・ド・モーなど、クセがないのでチーズ初心者におすすめ。

 

③ウォッシュタイプ

塩水やアルコールで表皮を洗って熟成した風味豊かなチーズ。代表的なのは、フランス・アルザス地方産のマンステール、ベルギー産のエルヴなど。

 

④シェーヴル、ブルビタイプ

シェーヴルは山羊、ブルビは羊で、それぞれのミルクを使い熟成させるチーズ。シェーブルでは、ポプラの木炭粉がまぶされたロワール地方産のセル・シュール・シェール、ブルビでは、コルス島生まれのブラン・デュ・マキなどがある。

 

⑤青カビタイプ

青カビを繁殖させて熟成させるブルーチーズ。強烈な風味は病みつきになる。イタリアのゴルゴンゾーラ、フランスの羊のミルクでつくられるロックフォール、イギリスのブルー・スティルトンが、世界3大ブルーチーズだ。

 

⑥非加熱圧搾・加熱圧搾タイプ

長期熟成期間を経てうまみとコクがアップするチーズでハードタイプでは、イタリアのパルミジャーノ・レッジャーノ、スイスのエメンターラーやグリュイエール、セミハードタイプではオランダのゴーダ、スイスのラクレットなどが有名。

 

⑦パスタ・フィラータタイプ

イタリアのモッツァレッラが代表格の弾力があり、糸状にさけるのが特徴のチーズ。生地をのばしながら繊維状にする工程でつくられる。

 

 

日本産のチーズにも注目!

日本の乳製品づくりは飛鳥時代にははじまっていたそうだ。

 

「蘇」とよばれるチーズのようなものを、畿内を中心に当番制でつくらせて朝廷に献上させていたそう。(中略)「蘇」の正確なレシピは残っていませんが加熱濃縮したものだったようです。

(『世界のチーズ図鑑ミニ』から引用)

 

現在では、日本各地で200をこえるチーズ生産者が、さまざまなタイプのおいしいチーズをつくり出している。ほんの一部だが紹介しておこう。

 

  • 北海道 せたな町 カリンパ/オーガニックなミルクでつくったハードタイプのチーズ
  • 北海道 花畑牧場 十勝ラクレット/十勝牛乳100%のこだわりチーズ
  • 北海道 ニセコ町 二世古 空[ku:] /日本人による日本人のためのブルーチーズ
  • 栃木県 那須町 茶臼岳/フレッシュな山羊乳からつくられる山の形のソフトシェーブル
  • 広島県 三良坂町 フロマージュ・ド・みらさか 自然放牧された牛のミルクからつくる濃厚チーズ

 

今後は国内旅行でも、土地のチーズに出会えそうだ。

 

 

【書籍紹介】

マイナビ文庫 世界のチーズ図鑑ミニ

著者:NPO法人 チーズプロフェッショナル協会
発行:マイナビ出版

本書は、好評既刊『世界のチーズ図鑑』をベースに内容をコンパクトにまとめ直し、いつでも持ち歩ける文庫サイズに再構成した本です。紀元前に発生し、世界中に広まった乳製品、チーズ。その種類は1000を超えるといわれています。これだけ多様なチーズが世界に存在しているのは、チーズの原料、製法、食べ方が、土地それぞれのテロワール(風土)と文化を色濃く反映しているからです。そこで本書では、世界各地の特徴的なチーズを、国別、地域別に紹介します。知れば知るほどおいしくなる、チーズの奥深い世界へとご案内します。

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