本・書籍
2019/12/30 21:00

とにかく「一気読み」してしまうものを集めました――年末&正月向け「エンタメ小説」5選

いつもよりもゆっくりできる正月休み。今年は長い人で9連休だというが、たまの長い休みには、こたつに入ってぬくぬくしながら読書でもいかが? というわけで、この年末年始におすすめの小説を5冊ご紹介したい。

 

ハラハラドキドキのスリルを味わいたい!一冊

まずお勧めしたいのが、まるで自分が探偵か刑事になったような気分になれる『いけない』(道尾秀介・著/文藝春秋・刊)。「ダ・ヴィンチ」の「BOOK OF THE YEAR 2019」でも5位に輝いた話題作だ。

 

帯に「本書のご使用法」として

 

・まずは各章の物語に集中します。

・章末の写真をご覧ください。

・隠された真相に気づきましたか?

・「そういうことだったのか!!」

 

と書かれていたので、私もまずは普通に小説として読み進めた。けれども、帯にはこうも書かれている。「死んだのは誰?」「なぜ死んだの?」「罪は誰のもの?」「…わかった?」

 

そんなこと書かれたら、初読で謎を暴きたいではないか。しかも、章末の写真に重要な意味があるらしい。まるで、怪人二十面相に挑発されている明智小五郎のような、はたまた怪盗キッドに挑まれているコナンくんのような気分。俄然やる気になった私は、いつも以上に描写や登場人物のセリフに敏感になる。

 

そして、すべてを読み終えて出た一言は、「…え?」だった。ほとんど謎が解けない。っていうか、全然わからない。でも、何か所か気になる部分はある。そこで、頭から読み直す。ページをめくったり、また数ページ戻ったり。お? そうか! でも…ん? まじか! 少しずつ霧が晴れていく。そして、真相に気づいた瞬間の爽快さといったら!

 

実に細かいミスリードを誘う表現、描写。そして、写真の意味。作者の手腕に改めて脱帽だ。なんなら、年末年始はこれ1冊を繰り返し読んでもいい。それくらいの、壮大なミステリー。

 

 

幸せな気分に浸りたい!一冊

2冊目は、2019年の本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ・著/文藝春秋・刊)。血の繋がらない親の間をリレーされ、3人の父親と2人の母親を持つ女子高生の物語だ。あまりにも設定が斬新すぎて、物語に入り込めないかも……という杞憂は一切不要だった。

 

家族の形態が17年間で7回も変わっても、名字が3回変わっても、「困った。全然不幸ではないのだ」と言い切る主人公・優子。その言葉は嘘ではない。一見、優子を捨てて去ったように見えた母親が、じつは思わぬ理由を抱えていたり。ずっと連絡がなかった父親が、じつはずっと見守り続けていたり。

 

一番は、一緒に暮らしている三番目の父親・森宮さんだ。森宮さんと優子は、もちろん血がつながっていないし、優子が高校生になってから一緒に住み始めたから、子どものころの優子をまったく知らない。だから、実の父親や二番目の父親に負けていると感じ、いつ父親の座を追われるかとヒヤヒヤしている森宮さん。そんな彼の言動が、ユニークで時に滑稽で、そしていつも温かい。

 

優子の彼、早瀬くんもまた重要な登場人物の一人。彼が、優子にどんな影響を与えたか。そして、優子と出会って早瀬くんはどう変わったのか。

 

優子は誰からも愛されている。今までも、そしてこの先もずっと。登場人物すべてが愛おしく、読み終えるのがもったいないと感じるほどの幸福感を与えてくれる一冊。

 

 

年の瀬に一番ゾクゾクしたい!一冊

3冊目にご紹介するのが、『ぼぎわんが、来る』(澤村伊智・著/KADOKAWA・刊)。昨年末に岡田准一主演で映画化された『来る』の原作だ。

 

“あれ”が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかん――。

 

登場人物の周りで次々と起こる、奇妙な出来事。これって、化け物の仕業? ツクリモノだとわかっていても、いつ我が家の玄関に“あれ”がやってくるかもわからない恐怖ったら。

 

ひとたびページを捲りだしたら、もう止まらない。途中でやめて眠れない。実家の家族や子どもたちが寝静まってからも、一人リビングで読んでいた。とにかく、怖い。面白い。やっぱり怖い。

 

ほんのわずかな物音にも震え上がりながら読み続けた。ものすごい勢いで読み終えてしまったが、去年は除夜の鐘が遠くで聴こえてきたことにすら、ビクッとする始末(笑)。

 

恐ろしく詳細な描写。私は映画をまだ見ていないので、これらがどのように映像化されたかも気になる。とにかく、年末年始に最恐にゾクゾクしたい人はぜひ。

 

 

生きてるって最高!な一冊

一昔前「ケータイ小説」というジャンルが一大ムーブメントを巻き起こした。4冊目にご紹介する『天国までの49日間』(櫻井千姫・著/スターツ出版・刊)は、第5回日本ケータイ小説大賞で大賞を受賞した作品だ。

 

クラスメイトからのいじめを苦に、飛び降り自殺を図った主人公・折原安音。そんな彼女のもとに天使がやってきて、49日間だけ魂が下界に戻ることを許される(というか、強制的に戻らされる)。49日経ったら、迎えに来るという約束で。そんな安音の49日間を描いた物語。

 

じつは遺書を書いて、いじめていた奴らへ復讐しようとしたのだが、その遺書は風に飛ばされて行方不明。結局、誰の目にも触れられないまま紛失してしまった……という悲しい現実に呆然となるも、49日間幽霊として過ごすなかで知った、両親や妹の気持ち。クラスメイトの本当の想い。そして、霊感があるが故に安音の姿が見えるという榊くんとのほのかな恋。

 

もう! だから! 絶対死んじゃダメなんだって! と何度も突っ込みたくなった。いじめは犯罪だ。でも、そのせいで命を落とすほどもったいないことはない。「いじめはダメです」なんて言葉で教えられるよりも、こういう小説を読ませたほうが、よっぽど効果があるのではないか。

 

結局、死んじゃったらおしまい。でも…。絶望だけでは終わらせないラストにも注目。

 

 

「騙されたー!」と叫びたい!一冊

最後にお勧めするのは、『悪いものが、来ませんように』(芦沢 央・著/KADOKAWA・刊)。この著者の作品は、どれも面白い。読んでいて、裏切られる。騙される。湊かなえに通じる「イヤミス(読後に嫌な気分になるミステリー。って、このジャンルもスゴイなと思うが)」のルーキーだ。

 

実際、本書の帯には「衝撃のラスト25ページ 絶対、ぜったいだまされて、読み返します!」と書かれている。なんという挑戦的な! 1冊目に紹介した『いけない』も同様だが、「罠があるよ、騙されるよ、気をつけてね」とハッキリ宣言するなんて、強気にも程がある。

 

でもって、まんまと騙されるのだから悔しい。

 

いや、完全に騙されたわけでない。途中、幾度も違和感を覚えつつ、あれ? あれ? と思いながらも、ストーリーがどんどん進んでいく。そして、決定的なシーンにたどり着く。

 

すっかり騙されて、もう一度最初から読み返したのは、私だけではないはず。というわけで、あえてあらすじも書かないでおく。気になった人は、ぜひ。多分、騙されるよ。

 

 

笑ったり泣いたり怒ったり、いろんな気分にさせてくれる、これだから読書はやめられない。この正月休みは、ぜひ小説の世界にどっぷり浸ってみてはいかがだろうか。

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