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2020/4/3 17:30

感受性が強すぎる人と弱すぎる人が、共に歩むために

宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』の著者・長尾 彰さんと、NASAで火星探査ロボットの開発に携わっている技術者・小野雅裕さんの対談が実現しました! 敏感で繊細なハートを持っている長尾さんと、鈍感すぎて周りの些細な変化に気づけないという小野さん。感受性が両極端に違うふたりが考える「チームづくり」において大切なこととは?

 

宇宙開発も旅も、アクシデントを楽しめるかどうか

長尾 彰(以下、長尾) 今日はよろしくお願いします。小野さんの著書『宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由』も『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』も読ませてもらいました。

 

小野雅裕(以下、小野) ありがとうございます。

 

長尾 どちらも面白く読ませてもらったんですけど、「旅」に関するフレーズが多く登場しますよね。

 

小野 はい。昔から旅が大好きで、学生時代にはアフリカから南米まで、日本人がなかなか足を運ばない地域にバックパッカーしました。旅での体験が僕の人生観に大きく影響を与えているので、書く文章にも自然と旅に関する言葉が多く出てくるのかもしれません。

 

長尾 旅先では、危険な目にもあったんじゃないですか?

 

小野 もちろん、「ここで死ぬかもしれない」と思ったことは何度もあります(笑)。でも、そういうトラブルが旅の醍醐味であって、冒険気分を味わえるんです。世界からフロンティアは消えてしまったけど、個人にはフロンティアはある。未開の地に足を踏み入れる感覚が好きなんですよね。

 

長尾 それは、今の宇宙開発の仕事にもつながってきそうですね。

 

小野 結局、僕が宇宙を好きなのは冒険だからなんですよ。宇宙は文字通りフロンティアですから。今、僕はエウロパ(木星の衛星)を探査するプロジェクトに関わっていますけど、エウロパなんて誰も行ったことないし、何があるか全くわからない(笑)。

 

長尾 僕なんて、木星がどこにあるのかもよくわからない(笑)。

 

小野 宇宙開発もバックパック旅行と同じで、何度もピンチに陥る瞬間があります。本気でヤバくて、顔面真っ青みたいな…。でも、それも含めて宇宙開発の仕事は面白いですね。

 

長尾 僕は「トラブル」と「アクシデント」は違うと思っていて、トラブルは困った出来事に対してオロオロしている状態で、アクシデントは想定外の事故。小野さんは、アクシデントを楽しめていますよね。

 

小野 ただ、バックパッカーはひとりで旅ができますけど、宇宙開発はチームで力を合わせないとゴールには辿り着かない。ここに大きな差があります。

 

自分の当たり前は、他人の当たり前ではなかった…

長尾 小野さんは、NASAでプロジェクトのリーダーをされていますよね?

 

小野 はい。今のチームは15人くらいのメンバーがいて、国籍も出身もバラバラです。

 

長尾 リーダーをするなかで、「自分が変わらないといけない」と感じたことってありますか?

 

小野 そうですねぇ…。もともと僕は他人に具体的な指示を出さなかったんですよ。僕自身が「こうしなさい」と言われるのが嫌いで、問題点だけ指摘してもらって、アイデアは自分で考えるのが好きなんです。だから、最初は僕も他人にそういう風に接していました。

 

長尾 それが、あまりうまくいかなかった?

 

小野 はい…。「もっとわかりやすく指示してほしい」と言われることが多くて、案外僕のようなタイプの人は少ないことがわかってきた…。

 

長尾 なるほど。人それぞれで求めるものは違いますよね。

 

小野 何を今さら当たり前のことを…と思うかもしれませんが、僕には全然想像ができなかったんですよ。見ている世界が狭かったというか。

 

長尾 いや、わかります。僕にも似たような経験がありますから。僕は高校の部活がバスケ部だったんですけど、あだ名が「赤鬼」でした。

 

小野 赤鬼(笑)。

 

長尾 いつも赤い顔をして、怒ったような表情をしているから赤鬼です。当時の僕は、スポーツは勝つことがすべて。どうやったら勝てるかばかり考えて、チームメイトに厳しくあたっていました。

 

小野 ハードコアな体育会系な感じだったんですね。

 

長尾 そしたら、ある日、「楽しくやりたい人もいるわけだから、お前の姿勢はよくない」とメンバーから言われたんです。顧問の先生からも「もっとチームプレーを学びなさい」と諭されて…。それが、すごくショックだったんですよね。メンバーがなぜ勝つために必死になれないのかを当時は理解できず、とても苦しかった。

 

小野 それが、長尾さんの自分と他人は違うことを知った原体験。

 

長尾 そうなんです。まぁ、それでも自分のコアな部分は簡単には変わらないので、今も結果を求めて突き進みがちな気質ではありますが(笑)。

 

感受性の強さを客観的に知ることの大切さ

小野 話を聞いていると、僕は他人に積極的に関与しなかったのに対し、長尾さんは他人にどんどん具体的に関与していくから、真逆ですね。

 

長尾 実は僕、繊細で周りを結構気にするタイプなんですよ。なんせ小学3年生の時に、担任の先生と折り合いが悪くて、ストレスで胃潰瘍になってしまうくらいだから(笑)。

 

小野 それはすごい(笑)。でも、そんな人がなんで赤鬼に?

 

長尾 当時は一周回って、「なんで、みんな、わかってくれないんだよ!」と怒りが先行してしまっていた(笑)。なんで! なんで! っていう。

 

小野 なるほど。僕は全然周りが見えなくて、よく鈍感だと言われます。仲間内で、誰と誰が付き合っているとか、まったく見抜けないタイプ(笑)。

 

長尾 実は感受性の強さって、数値化できるようになってきていて、「HSP診断」というテストがあるのを知ってますか?  HSPは「Highly Sensitive Person」の略なんですけど、その度合いを測れるんですよ。140点がもっとも強いんですけど、僕は117点。かなり高いスコアでした。

 

小野 そういうのがあるんですね。

 

長尾 ちなみに僕がチームビルディング研修のパートナーである楽天大学学長の仲山進也さんは確か60点くらいで、僕に比べると相当低い(笑)。敏感でいられる僕と鈍感でいられる仲山さん。2人で弱みを補いあっているから、いいチームが組めているのかなと思いますね。

 

小野 へえー! 面白いですね。僕のスコアは恐ろしく低いだろうなぁ(笑)。

 

長尾 是非やってみてください。こういう風にスコア化されるとお互いを客観的に見ることができますから。世の中には、感受性が高い人と低い人がいますけど、お互い感じていることは理解されにくい。でも、違いがわかると、ケアしようと思えるはずです。

 

震災で気づかされたチームで取り組む大切さ

小野 でも、部活でみんなを引っ張っていこうとしていた長尾さんが、メンバーそれぞれの強みを掛け合わせたチームづくりの本を書くなんて想像ができないなぁ。

 

長尾 実は大きなターニングポイントがあったんですよ。それが、2011年の震災。当時の僕は、採用や研修の会社を経営していたんですけど、全然楽しくなかった…。社員がいたので、仕事をやめるにやめられず、職場では「ああして、こうして」といつも指示を飛ばしていた。そんな時に震災があって、急に暇になりました。すると、被災地にいる友人から、「物資を届けてほしい」と連絡が届いたんです。

 

小野 それで、被災地に行かれたんですか?

 

長尾 さすがに断るわけにもいかないと思って、知り合いを何人か集めて、トラックで被災地に行ったんですが、そこでの支援活動にものすごくやりがいを感じたんですよ。

 

小野 それは、どんな風に?

 

長尾 端的にいうと、困っている人がいて、自分にできることがあって、それまでの僕の仕事って一体なんだったんだろうって思って…。あげく復興支援プロジェクトを立ち上げて、色々な人を巻き込んでいくんですけど、そこでチームで取り組む大切さに改めて気づかされたんです。

 

小野 なるほど。そういう原体験があったんですね。

 

長尾 それからスタイルが変わっていきましたね。みんなを引っ張るのではなく、後押しをする。支援とか促進とか、みんなが動きやすい環境をつくることに力を入れるようになりました。

 

違ったスタイルが集まるチームのほうが魅力的

小野 長尾さんは、感受性が高いから、ファシリテーターとしてメンバーの些細な変化に敏感になれるのは強みになりそうですよね。

 

長尾 小さい頃から、自分の繊細さに悩まされ続けてきたんですけど、それを活かせる仕事と巡りあうことができました(笑)。でも、全員がファシリテーター的な人でもダメで、いろんなスタイルの人が集まったほうが魅力的なチームになるはずです。

 

小野 そのためには、まずは自分の気質をちゃんと知ることからですね。僕は、どちらかというと、ファシリテーターというより、自分が実現したいことに向かって、黙々と突き進む職人気質のタイプかなぁ。

 

長尾 小野さんの鈍感力みたいなものは、目の前のプロジェクトに没頭するうえで大きな強みになっていると思います。そういう人は人間関係の変化には鈍感かもしれませんが、環境の変化にはすごく敏感なんですよ。だから、突破点を見つけて、まずは自分でやってみて、背中でみんなをリードしていきます。宇宙兄弟でいうヒビトです。

 

小野 なるほど。

 

長尾 このタイプの人は、基本的に自分のやりたいことがブレないので、失敗しても諦めず、何度も挑戦し、黙々と実績を積み上げていく人が多いです。旅でも宇宙開発でも、小野さんは困難があったとしても、それを旅路の醍醐味と捉え、歩み続けますもんね。

 

小野 確かにそうですね(笑)。「人それぞれ違う」という前提に立ち、お互いの特性を理解しあえれば、すごくいいチームが築けそうだと感じました。今日は、ありがとうございます。

 

 

長尾彰(写真右)、小野雅裕(写真左)

 

長尾 彰(ながお・あきら)

組織開発ファシリテーター
/静岡県生まれ。日本福祉大学卒業後、東京学芸大学で野外教育学を研究後、研修会社・玩具メーカー・人事コンサルタントを経て独立。様々な組織・集団がグループからチームに進化・成長するための促進を始め、事業・商品開発やサービスデザインの支援など、目的に応じた多様なアプローチで組織開発を実施している。現在、株式会社ナガオ考務店代表取締役、学校法人茂来学園理事ほか、複数の法人の経営にも携わる。主な著書は、『宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。』『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』(いずれも学研プラス)

 

【書籍紹介】

『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』

著者:長尾彰
発行:学研プラス

『宇宙兄弟』のムッタやヒビト、チーム「ジョーカーズ」の成長ストーリーなどを分析し、自分の得意で好きなスタイルで、今いる仲間をリードする方法を解説! 約20年にわたって3000回を超えるチームビルディングをしてきた著者の「チームビルディング」の教科書!

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小野雅裕(おの・まさひろ)

アメリカ航空宇宙局 (NASA) JPL 勤務 。1982年大阪生まれ、東京育ち。2005年東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、同年9月よりマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学。2012年に同航空宇宙工学科博士課程および技術政策プログラム修士課程修了。2012年4月より2013年3月まで、慶応義塾大学理工学部の助教として、学生を指導する傍ら、航空宇宙とスマートグリッドの制御を研究。2013年5月より、アメリカ航空宇宙局 (NASA) ジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)で勤務。主な著書は、「宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八」(SB新書)。

 


宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八

著者:小野雅裕
発行: SB新書

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