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2020/5/7 21:45

「欲しいものがない時代」に必要なのは「役に立つ」より「意味がある」

いつもと違う日常、いつもと違う休日、そして、この状況がいつまで続くかわからず不安になっているという方も多いのではないでしょうか? いろんな価値観が崩れて「これから私の仕事はどうやって進めたらいいんだろうか?」と悩む人も多いでしょう。

 

とはいえ、いつかはこの騒ぎも明けるはずなので、その時に備えて、指南書として参考にしてほしいのが『世界観をつくる』(水野学、山口周・著/朝日新聞出版・刊)です。

 

くまモンや相鉄線のリニューアルを手掛けた水野学さんと、電通や外資コンサルを経て独立研究者として数多くの著書や講演をされている山口周さんとの対談本です。この本では、これまでの働き方を振り返りながらこれからの未来に必要なスキルが語られています。今回は簡単ではありますが、どんな内容なのかご紹介していきます!

 

今は「欲しいものがない時代」?

ほぼすべての家庭にWi-Fiが飛び、自宅にはPCやスマホがあり、誰もが自宅で仕事ができる環境が整っているからこそテレワークができていますよね。こういう環境が本当にありがたいなーと思うのですが、仕事ができないからあれが欲しい! とか、これが絶対必要! と思うことってあるでしょうか?

 

もちろん、「Nintendo Switchが手に入らない!」とか「NIKEのシューズが欲しい!」とか個人が欲しいと思うモノは無限にあると思うのですが、数世代前のように「冷蔵庫が欲しい」「テレビが欲しい」と必需品が手に入らないという状況はなくなりましたよね。

 

山口 今ではそういう「みんなが心から欲しいなあと思うモノ」ってなくなってしまいましたよね。水野さん、「欲しいものは何ですか?」って聞かれて、パッと出てきますか?

 

 水野 そう言われると出てこないですね。僕だけじゃなくて、周りは結構そうかもしれない。

 

山口 これは「文明の勝利」ということで素晴らしいことなんですけど、ビジネス的にはとても困ったことになるわけですね。私たちは「問題=困っていること」を解決するためにお金を払ってモノやサービスを購入するわけですが、現在の世の中では「問題=困っていること」が希少になっているんですよ。

その結果として発生しているのが「正解の過剰化」という問題です。数少ない問題についてみんなが論理的に正しい答えを追い求めた結果、この「正解の過剰化」という問題が起きている。家電が典型的な例で、冷蔵庫や電子レンジのデザインや機能って、どのメーカーでもほとんど同じじゃないですか。これは「正解にみんな行き着いてしまった」ということなんですよね。

 (『世界観をつくる』より引用)

 

生活に必要なものはほぼ揃ってしまい、便利だけど新しい正解に出会えない世の中になったということですよね。私も今から25年ほど前の小学3年生のころ、我が家に初めてのオーブンレンジが届きまして、それを作文にした記憶があるのですが、きっと今の子に「オーブンレンジが届いた!」という喜びだけで作文を書けるような感覚はないですよね。

 

こんな満ち足りている状態でも日々の暮らしや仕事は続いていく……と考えると、新しいサービスや価値を生み出すのは本当に大変な時代になったと感じます。またどの仕事でも言えるとは思いますが、数多くの商品やサービスの中から「選んでもらう」仕事が今後は必要になってくると思うのです。特に、今のこの状況で新たな方向へシフトチェンジしようと考えている方は、次に紹介する「ある」価値観を参考にしてもらえればと思います。

 

これからは「役に立つ」より、「意味がある」に価値がある時代に

『世界観をつくる』の中で、何度も繰り返し言われるキーワードがあります。それは、「役に立つ」から「意味がある」に価値がシフトしていくということです。

 

これまでの日本経済は、「人々の役に立つ」をモットーに突き進み成長してきたと語られています。けれど、今は満ち足りてしまっているので、ある種目的が達成されてしまった状態なわけです。では、そこからどこへ向かうのか? ひとつのキーワードになってくるのが「意味がある」ということ。とある企業を参考にご紹介しましょう!

 

山口 「意味がある」の会社の例として、僕はよくバルミューダを挙げています。他社製品なら2000円で買えるのに2万円のトースターを売り出して、10年間で売上が1000%成長しています。これは一つの流れなのかなという気がしています。

機能ではなく「意味がある」というニッチを追求して、SNSの力で世界中のニッチな人に商品を届ける。世界が市場なら、いくらニッチでも分母が違いますからね。広告代理店をつかって日本人全員に買わせようとするよりも、たくさんの人に売れます(笑)。

 (『世界観をつくる』より引用)

 

これを読んでいる方ならご存じだとは思いますが、「パンが焼ければいい」という役に立つだけの価値だったトースターに、「感動のトースター」というストーリーと共に意味がある価値をつけたのがバルミューダだったということです。実は我が家も、そのストーリーと意味に惚れてバルミューダを買いました。実際に買って本当に良かったと思うし、多分壊れてしまったらまたバルミューダを買ってしまうと思います。

 

『世界観をつくる』では、他にもAppleや良品計画など私たちにも身近な企業の「意味」の作り方や、クリエイティブディレクターとして様々な企業を手掛けた水野学さんの「意味」の作り方をたっぷりと解説しています。これから新しいプロジェクトを作るという方や、コロナ明け以降の方向性に迷っている方にはめちゃめちゃ参考になることばかりなので、ぜひこの機会に読んでいただきたいです!

 

中途半端じゃ意味がない、徹底的にやらないと顧客は見抜く

よし、じゃあ今日から「意味」のあるサービスを作るぞ! と本を読むと思ってしまうのですが、実際にすぐできるようなことはほとんどありません。水野さんがクリエイティブディレクターとして関わっている「Oisix」では本当に細かな作業がされていると語られています。

 

「どんなビジュアルがOisixらしいのか?」「写真はどんなライティングがいいのか?」といった議論はもちろんのこと、うんと細かなこと——たとえば、「この写真に写っている農家の方のパンクテイストの帽子はOisixらしく見えるだろうか?」という話までを俎上にのせます。素敵な帽子だけれどOisixの世界観とはちょっとズレるかもね、じゃあ撮影のときはこういう画角で撮ったらよかったかもね……。ほんとうに些末な、「そんなところまで?」と言いたくなるような改善を粘り強く積み重ねていく中で、クリエイティブの質は次第にレベルアップしていきました。

(『世界観をつくる』より引用)

 

『世界観をつくる』では、たくさんの事例と共に、これからの働き方で必要となるようなキーワードがゴロゴロと転がっています。自粛中の今だからこそ、こういった方々の知識を吸収しておくことは本当に大事だなぁとしみじみしました。

 

「ピンチだ〜」とこの状況に流されてしまわず、どうやってチャンスに変えていこうかとか、今のうちにできることを前向きに切り替えて進める心のパワーも本当に大切なんだろうと感じます。元気な人たちの言葉を読むと、自分も元気になるので、ちょっと自粛で前が見えなくて不安だな〜という気持ちを抱いている人にお勧めです!

 

 

【書籍紹介】

世界観をつくる

著者:水野 学、山口 周
発行:朝日新聞出版

いま求められているのは、“世界観=物語と未来を提示する力”だ!感性と知性という二つのスキルを繋げ、新しい価値を生むためには、どう考え、どう働けばいいのか? これからの日本のビジネスを語り尽くす!

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