コピーライターという職業がある。広告などに印象的なフレーズが付いているが、あれを考えるのがコピーライターだ。
一方、僕はライターだ。コピーライターと同じ「言葉」を使って仕事をしているが、その内容はまったく違っている(と思っている)。
コピーライターとライターの違いって?
たとえば、ここにひとつの商品があるとする。コピーライターは、その商品についてほんの数文字で印象づけるようなフレーズを考える。ライターは、その商品がどんな機能を持っていて何が魅力的かを文章にする。
一見似ているような2つの職業だが、実は結構違うものだと思う。かくいう僕は、コピーライティングが苦手。たとえば原稿のタイトルや見出しを付けるのは、あまり得意なほうではない。どうも、一言二言でそのものズバリを言い表すようなことができないようだ。なので、コピーライターの方々には尊敬の念を抱いている。
「I Love You.」をどう訳すか。それがコピーライティング
『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』(阿部広太郎・著/ダイヤモンド社・刊)は、人気コピーライターである著者が魅力的で心をつかむ言葉の作り方について解説している一冊だ。
著者によれば、コピーライティングとは「言葉の企画」とのこと。伝えたいものがある場合に、どんな言葉を使えば伝わるのか、それを考え抜くのがコピーライティングなのだ。
冒頭には、夏目漱石が「I Love You.」を「月が綺麗ですね」とでも訳しておけ、といった都市伝説が書かれているが、「I Love You.」を自分ならどう訳すか、それがコピーライティングということだ。
僕なら、「今度いつ会える?」かな。
ニューヨークで明太子が大人気に。その秘密は「名前」
本書で、福岡出身のレストランオーナーであるヒミ*オカジマ氏のエピソードが載っている。ニューヨークで明太子を「Cod roe」、つまり「タラの卵」と直訳して出したところ、まったく人気が出なかったようだ。アメリカでは魚卵を食べる習慣がないため、気味悪がられたとのこと。
しかし、その後明太子は大人気となる。その要因が「名前」。「Cod rore」ではなく、「HAKATA Spicy Caviar」(博多スパイシーキャビア)としたのだ。
たったこれだけのことで、明太子はニューヨークで爆発的な人気となった。明太子そのものはなにひとつ変えずに、だ。著者はこのことを以下のように記している。
それは「人は言葉を食べている」ということ。
明太子そのもの自体は何も変えていない。
変えたのは言葉だけ。言葉を変えることで、人の行動が変わる。(『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』より引用)
不人気だった商品が、名前を変えただけで大ヒットした、という例はそのほかにもある。つまり、人というのは言葉から受け取るイメージに大きく左右されるものだということ。だからこそ、コピーライティングの技術、コピーライターという職業は偉大なのだ。
自分なりの「I Love You.」を見つけよう
本書は、コピーライターを目指している人だけではなく、僕のような職業ライターはもちろん、言葉を使って生活しているすべての人に役立つ内容となっている。いわゆる文章講座とは違うが、「言葉」というものはどういう効果があるのか、そしてどうしたらその効果を最大限に引き出せるのか、そういうことがわかるだろう。
手始めに、「I Love You.」を自分なりに訳してみてはどうだろうか。「愛してる」なんて100万回も聞いたセリフよりも、自分で考えた「I Love You.」のほうが、何倍も魅力的に聞こえるはずだ。
【書籍紹介】
コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術
著者:阿部広太郎
発行:ダイヤモンド社
人気コピーライター・阿部広太郎の講座「言葉の企画」をベースに、コピーライターじゃなくても知っておきたい心をつかむ言葉のつくり方を掘り下げる。コピーライターでなくても、本屋の店員でも、ウェブショップの店長でも、ブロガーでも、営業マンでも、広報マンでも、企画屋でも、編集者でも、現代において「言葉」にかかわる仕事をしている人はたくさんいる。多くの人の心を動かす言葉は、どのようにして生み出せばよいのか? そのヒントは、小手先のテクニックではなく、物事の考え方、日々の生活習慣そのものにある! 著者が実際にビジネスで使った「愛と熱」があふれる企画書も公開!
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