小説やドラマなどでよく見る、ルームシェア。私的伝説のドラマ『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』でも、北川景子演じる莉子と貫地谷しほり演じる麻衣が一緒に暮らしていたっけ。
実際、ルームシェアをしていたという友人も何人かいる。男1人・女2人でシェアハウスに住んでいたケースもあった。結局一度も遊びに行けなかったが、なんだかとても楽しそうな毎日を送っていたと記憶している。
子どもが3人いる今は絶対に無理だが、若いときに一度くらい経験しておきたかったな~などと思う今日このごろ。というのも、「オタク女子が、4人で暮らしてみたら。」(藤谷千明・著/幻冬舎・刊)を読んだのだ。オタク女子が共に暮らす。嗚呼、なんて魅力的な響きだろう。
アラフォーの夜泣き、からのルームシェア
著者の藤谷さんは、フリーランスのライター。ある夜、一人さめざめと泣いてしまったのだそう(ご本人いわく「夜泣き」)。
37歳(当時)独身女子、長く付き合っていたパートナーと別れ、ふとしたケガから体調不良に陥り、将来のお金の不安をはじめメンタルがだだ下がりになってしまったようだ。
何よりも「何かあったとき、一人だと不安」。この想いが大きく、同居人を探しはじめる。ここで集まったのが(しかも、結構簡単に!)、オタク仲間だったということで、本タイトルに至るわけだ。
ちなみに、4人はそれぞれハマっているジャンルや推しが違うということは、最初に情報としてお伝えしておく。
さて、オタク女子4人の共同生活、どんなメリットが、そして注意点があるのだろうか。藤谷さんの経験談より、いくつかピックアップしていこう。
オタク女子4人共同生活、ここが最高!
ルームシェアのメリット(1)生活コストの低下
少ない家賃で、広い部屋に住める。これこそ、最大のメリットだろう。藤谷さんの場合は、6万円の負担で5LDKの一軒家に住んでいる。光熱費だって、住んでいる人数で割れる。一人暮らしをするよりも、はるかにコストパフォーマンスが良い。いや、良すぎる。これならば、将来のための貯蓄も難くない!
ルームシェアのメリット(2)推しグッズであふれるヤバい物量&投資に対する許容
オタクは往々にして物が多い。私もかつてオタクだったので、わかりみが深い。推しのグッズは増える一方。同じCDやDVDでも限定版と通常版があったり、写真集が出ても、普通の表紙のほかに「Amazon限定表紙」なんかが出たりもする。同じツアーでも、一度参戦して終了なんてよほどのことがない限りありえない。チケットが入手できるのならば、遠征上等。いや、遠征こそツアーの醍醐味だ。
当然、物は増えるし金も消えていく。そして、その事実に対してオタク以外の人からは、「なんで同じものをいくつも買うの?」「同じ公演を何度も見る意味は?」などと言われることが少なくない(これが苦痛!)
その点、オタク同士の理解は早いし深い。しかも、ルームシェアによって一人暮らしよりも広い部屋に住めるから、結構な物量でも無問題なのだ!
ルームシェアのメリット(3)弱っているとき、誰かの存在がいることが心強い
藤谷さんが住む「推しハウス」には4人の住人がいるが、誰かが体調不良に陥ったときなど、他の誰かがフォローできる点。藤谷さんの表現でいうと、「残機は常に3」(言い得て妙!)。これも大きなメリットだ。
たとえば、風邪で寝込んでいる人の部屋のドアノブに、食べ物など必要な買い物をしてかけておく。なんとありがたいことか。
かといって、恋人や家族が病に伏したときのような「手厚いケア=愛」みたいな義務がないのが、ルームシェアのほどよい距離感による恩恵だと藤谷さん。
さらに、悲しい出来事があったとき、「悲しい」を共有できる相手がいることのありがたみを藤谷さんは切々と語っている。うれしいだけじゃなく、悲しいを分かち合えるっていいよね。
良いことばかりでもない。オタク女子4人共同生活の注意点
ルームシェアの注意点(1)物件がなかなか見つからない
意外だったのだが、ルームシェア可の物件がそもそも少ないらしい。「2人入居OK」はたくさんあるが、その場合の2人入居=「結婚を前提とした同棲」という意味らしい!
その理由として、友人同士のルームシェアは、喧嘩別れしたときに家賃が未払いになるリスクがあるのだそうな。なるほど……(でもそれって、結婚を前提にしていても、相手はきょうだいであっても、同じリスクがあるような)。
また、間取り面でも、ルームシェアに適したものが少ないとのこと。確かに、部屋数が多い物件は基本ファミリー向けにつくられているので、致し方ないのかもしれない。
ルームシェアの注意点(2)生活習慣や価値観の違いからぶつかることもある
家事の解釈の違い。家具や家電で欲しいもの、デザイン、ここだけは譲れないというこだわり。このあたりをしっかり話し合っておかないと、トラブルになりかねない。
藤谷さん宅でも、はじめのころはホウ・レン・ソウが破綻していたがゆえに、さまざまな問題が起こっていたそうだ。その後、基本ルールを決め、アプリで家事タスクの管理をはじめたところ、うまくまわっているらしい。
あなたもぜひ、Let’s ルームシェア!?
あれ、注意点が2つしかないじゃないか、とお思いの皆様、そうなのだ。女4人の共同生活、さぞやトラブルが起こりまくっているかと思いきや、
この生活で、揉めごとらしい揉めごとは起きていない。せっかく書籍にするのだし、ドラマチックなバトルがあったほうが盛り上がりそうだけど、本当になにもない。
(『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』より引用)
と語る。それもこれも、共に暮すメンバー次第ということだろう。
『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』には、メンバー選びのポイント、一人暮らしと比べてどれくらい節約できたか、そして目立った揉めごとがないとはいえ、やはり些細な問題は起こっているわけで、そんなリアルな生活を赤裸々に開示してくれている。これから同じようなルームシェアを検討する人は、ぜひ参考にしていただきたい。
そして、私のように「もはや我が人生で、ルームシェアは無理!」という者も、「これが、同じ推しグループのオタク同士で暮らしていたらどうなるかな~」「一緒に住むとしたら、あの子とあの子かな~」などと、いろいろ妄想しながら楽しませていただいた。
藤谷さん家を舞台としためくるめくルームシェアの沼に、あなたもぜひ。
【書籍紹介】
オタク女子が、4人で暮らしてみたら。
著者:藤谷千明
発行:幻冬舎
お金がない、推しのグッズは増える、孤独死は嫌だ!そんなわけでアラフォー女子がはじめた快適ルームシェアの日々。