本・書籍
2020/10/20 21:45

メスの蚊が卵のために人間の血を吸っているとき、オスの蚊たちは何をしているんだろう?

夏場に多くの人を悩ませる「蚊」。夜中寝ているときに耳元でブンブンと音を立てて飛んだり、いつの間にか人間の身体から血を吸って、その証としてかゆみを残していく。指と指の間なんて刺されると意外と厄介だ。

血を吸うのはメスの蚊だけ

そんな迷惑な蚊だが、血を吸うのはメスだけというのは結構知られていること。蚊は、普段は花の蜜や植物の汁を吸って生きているが、産卵の時期になると栄養補給(おもにタンパク質)を行うために、人間や動物の血液を吸うのだ。ただ血を吸っているのではなく、彼らにもそれなりの理由がある。

 

産卵のため、ということなので、血を吸うのはメスの蚊だけ。次世代の子どもたちのために、手で叩かれて潰されてしまったり、蚊取り線香などにやられてしまう危険性を顧みず、人家に侵入して血を吸うメスの蚊。そう思うと、ちょっとくらい血を吸われてもいいかな、なんて思ってしまう。

 

■じゃあオスの蚊は何をやっているの?

生き物の死にざま』(稲垣栄洋・著/草思社・刊)は、地球上の生きものたちが、どのように生き、どうやって死んでいくのかについて書かれた書だ。そのなかに「アカイエカ」の話が出てくる。アカイエカは、いわゆる人家に侵入してくる蚊だ。オスの蚊は、いったい何をしているのか。それについての記述がある。

 

 卵を産まないオスの蚊は危険を冒して、人間や動物の血を吸う必要はない。
 家の外では、無数のオスの蚊が集まって飛びながら、蚊柱を作っている。オスの蚊は集団で羽音を立ててメスの蚊を呼び寄せ、蚊柱にやってきたメスの蚊はその中からパートナーを選び、交尾をするのである。そして交尾を終えたメスの蚊は決死の覚悟で家の中へと向かっていくのである。

(『生き物の死にざま』より引用)

 

オスたちは、メスに気に入られるために集団で飛び、お目当てのメスの蚊に気に入られようと頑張っているようだ。

 

オスの蚊が蚊柱を作っているということは、公園などで見かけるあの蚊柱の中に突っ込んでいっても、刺される心配はないと言うことなのだろうか。まあ、蚊柱に突っ込んだところで何のメリットもないのでやらないとは思うが、見かけても「蚊に刺されちゃう!」と思う必要はないのだろう。

 

固い絆で結ばれる(?)運命のチョウチンアンコウ

深海でひっそりと生活しているチョウチンアンコウ。頭の先からぶらさがっている発光器官が提灯のようなのでそう呼ばれているが、オスのチョウチンアンコウの死にざまというのはなかなか印象的だ。

 

チョウチンアンコウはメスの体長が40cmほどなのに対し、オスの体長は4cmほど。とても小さい。そして、オスは受精のためにメスの身体に噛み付き、そのままで一緒を終える。栄養分はメスの血液から吸収して生きる。究極のヒモ生活だ。

 

    それにしても、チョウチンアンコウのオスのヒモ生活は徹底している。
 メスの体についたオスは、メスに連れられていくだけで、自分で泳ぐ必要はない。そのため、泳ぐためのひれは消失し、餌を見つけるための眼さえも失ってしまう。それだけではない。メスの体からオスの体に血液が流れるようになれば、餌を獲る必要もないので内臓も退化する。そして、メスの体と同化しながら、子孫を残すための精巣だけを異様に発達させていく。価値あるものは精巣だけというありさまなのだ。

(『生き物の死にざま』より引用)

 

よく男性は、ヒモ生活に憧れるなんて話もあるが、チョウチンアンコウを見ていると、あんまりうらやましい感じはしない。しかし、パートナーを見つけることが困難な深海で確実に子孫を残すため、チョウチンアンコウのオスはこのような生き方を選択したのだろう。ある意味、自分たちの子孫のためだけに生きるという男らしい生きざまとも言えなくもない。

 

変わった生き方もそれなりに理由がある

本書にはそのほかにもさまざまな生き物の死にざまが登場する。人間から見れば、ただの虫だったり魚だったりの一生の話だが、彼らにとってみれば、そういう死にざまになったのにはそれなりに理由があることがわかる。

 

道ばたでひっくり返っている蝉、大量に卵を産むマンボウ、道路を横切って車にひかれている姿をよく見かけるヒキガエルなどなど、なぜそんなことになったのかが、本書を読むとわかるだろう。理由のない「死にざま」はないのだ。

 

【書籍紹介】

生き物の死にざま

著者:稲垣栄洋
発行:草思社

すべては「命のバトン」をつなぐためにーゾウ、サケ、セミ、ミツバチ…生命の“最後の輝き”を描く哀切と感動の物語。

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