本・書籍
2020/10/21 21:45

いま、我々にいちばん必要なスキルは『フェイクニュースの見分け方』である

いよいよ最終盤に差しかかった2020年アメリカ大統領選挙。人種差別問題の激化や西海岸全土を襲った大規模な山火事、そしてまったく先が見えないコロナ禍など、切迫した問題がここまで山積した状態の中で迎えるのは異例だろう。その選挙戦の主役の一人のイメージと一瞬でつながるパワーワードがある。

 

あれは、トランプ大統領の持ちギャグなの?

アメリカ版の流行語大賞“Word of the Year”で「フェイクニュース」という言葉が大賞を取っていないのは驚きだ。2017年に使い始めて以来、トランプ大統領はこの言葉をまるで持ちギャグのようにありとあらゆる場で乱発してきた。そして2020年の今は、ごく普通のボキャブラリーとして定着している。

 

ただ、意味をきちんと理解して使っている人はどのくらいいるだろうか。そもそもフェイクニュースとは、“偽のニュース”という直訳的で単純なものではないはずだ。一歩踏み込んだところでは何を意味するのか。トランプ政権の誕生と共に知られ始め、使われるようになったこの言葉について深く掘り下げて考えていく一冊の本を紹介したい。

 

インターネット時代の事実

フェイクニュースの見分け方』(烏賀陽弘道・著/新潮社・刊)では、「はじめに」の最初の部分で本書の定義が示される。

 

新聞・テレビ・雑誌・書籍など「旧型マスメディア」と新興のインターネットをぶち抜いて、より精度の高い「事実(ファクト)」を探す。そのための具体的な方法を提案する。それが本書の目的です。

              『フェイクニュースの見分け方』より引用

 

著者の烏賀陽さんは朝日新聞の記者から週刊誌記者、編集者を経てフリー記者になったという経歴の持ち主だ。プロとして、仕事の現場で長い間事実と関わり合ってきた人物ということがわかるだろう。一般人よりもはるかに近い距離で接する情報の取捨選択、そして情報との関係性を構築するための方法について興味を抱くのは、筆者だけではないはずだ。

 

大きく変化した個人レベルの情報収集

情報との関わり合い方は人それぞれだ。ただ、すべての人にとって同じなのは、その方法がかなり様変わりしたことだ。烏賀陽さんは、仕事で得た実体験を通して次のように記している。

 

幸運だったと思うのは、その職業人生の間に、アナログ➝デジタル➝オンライン化というマスメディア産業の技術革新を、職業の現場で、しかも同時進行で体験できたことです。新聞➝雑誌➝書籍➝インターネットと媒体はどんどん変化しました。

『フェイクニュースの見分け方』より引用

 

個人レベルでの情報の接点として最終進化形かもしれないインターネットには、当然ネガティブな面がある。しかし、そこを補って余りあるほど便利だ。便利なのは、“事実”を含むひとかたまりの情報を数えきれない人の間で共有できるところだ。ただ、その便利さにすべてを委ねるわけにはいかない。

 

しかし社会全体を見渡してみると、インターネットの普及は「信頼できる情報をマスメディアから見つける」という作業をより難しくしました。何が事実かわからない。何を信じていいのかわからない。時を同じくして旧型メディアの衰退が始まりました。

                『フェイクニュースの見分け方』より引用

 

電車の中で単行本や雑誌、タブロイド新聞を含む印刷媒体を手にしている人たちをほとんど見なくなったのは、いつごろからだろうか。大きく変わった状況の中、事実と虚実の区別の仕方が昔のままの形であるとはとても思えない。

 

これからの時代で最も大切なスキル

目次を見てみよう。

 

第1章 インテリジェンスが必要だ

第2章 オピニオンは捨てよ

第3章 発信者が不明の情報は捨てよ

第4章 ビッグ・ピクチャーをあてはめよ

第5章 フェアネスチェックの視点を持つ

第6章 発信者を疑うための作法

第7章 情報を健全に疑うためのヒント集

 

どの章でも興味深いトピックが取り上げられているのだが、筆者が特に惹かれたのは第4章だ。

 

「ビッグ・ピクチャー」とは、ある事実Fがあったときに、「空間軸」と「時間軸」を広げ、その座標軸に事実Fを置いて検証しなおしてみることだ。

             『フェイクニュースの見分け方』より引用

 

ひとつの事実を点として見るのではなく、それを取り巻く空間と時間を広げた上で見直すと、見え方がまったく変わってくる。このくだりは舛添元東京都知事と猪瀬元東京都知事の金銭問題を例に挙げながら進むのだが、時間と空間、そしてフェイクニュースとの関係性がよくわかる。

 

伝えられることすべてが事実ではない。嘘とまではいわないものの、決して事実ではないことを故意に流そうとする意図も歴然として存在する。そしてその方法は、想像以上に巧妙だ。いつか必ず訪れるアフターコロナの時代で最も重要となるスキルは、自分なりの方法で情報リテラシーを上げていくことに違いない。

 

【書籍紹介】

フェイクニュースの見分け方

著者:烏賀陽弘道
発行:新潮社

一見もっともらしいニュースや論評には、フェイク(虚偽の情報)が大量に含まれている。真偽を見抜くには何をすべきか。「オピニオンは捨てよ」「主語のない文章は疑え」「空間軸と時間軸を拡げて見よ」「ステレオタイプの物語は要警戒」「アマゾンの有効な活用法」「妄想癖・虚言癖の特徴とは」-新聞、雑誌、ネットとあらゆるフィールドの第一線で記者として活躍してきた著者が、具体的かつ実践的なノウハウを伝授する。

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