「人間が犬を選ぶわけじゃないんですよ、犬のほうが直感で飼い主を決めるんです」。生後2か月のラブラドールレトリバーの子犬と私たち家族が出会った日に、ブリーダー兼獣医師はきっぱりとそう言った。たくさんいた子犬の中の一匹が、当時6歳だった娘と目が合い駆け寄ってきた。「よーし、その子だ!」とブリーダーが叫んだ。きっと、娘と子犬は赤い糸で結ばれていたのだと思う。その日から15年弱、”うちの子”は天寿を全うするまで娘に寄り添い癒し続けてくれたのだ。
『人とペットの赤い糸 人もペットも幸せになれる72のヒント』(越村義雄・著/学研プラス・刊)のタイトルを見たとき、わが愛犬と過ごした日々が走馬灯のようによみがえってきた。そして確信した。人とペットには運命の赤い糸がゼッタイにあることを……。
コロナ禍でペットに癒しを求める人が増えている
本書は、『夕刊フジ』で連載されていた人気コラム「人とペットの赤い糸」の中から、72話を厳選し書籍化したもの。著者はペット業界の第一線で活動し、人とペットの幸せ創造協会会長、ペットフード協会名誉会長などを兼任する越村義雄氏だ。
現在のコロナ禍でペットに癒しを求める人が増えている。2020年の統計で、新たに人と暮らし始めた犬は前年比14%増の46万2000頭、猫は前年比16%増の48万3000頭で、過去5年間で最高の伸び率になっているそうだ。しかし、一方では残念ながらペットの飼育を放棄する人が増えているのも現実。越村氏はこう記している。
ペットが人の精神と肉体に素晴らしい効用をもたらしてくれることを少しでもご理解いただけたら幸いです。また、ペットに愛情を持って世話をすれば、動物は必ずそれに応えてくれます。(中略)人とペットの素晴らしい関係をこれからも維持・発展させていくには、本書の中でも触れたように、「人の健康、動物の健康、環境保全(ワンヘルス)」を実現する必要があります。
(『人とペットの赤い糸』から引用)
まずはあなた向きの動物選びから
章立ては、
第1章 ペットと暮らす
第2章 ペットを知る
第3章 人とペットの理想郷
これからペットを家族として迎えたいと考えている人、今いるペットとさらに生活の質を高めたいと思っている人、ペットロスから抜け出せない人達に向けて、あらゆる角度からペットと暮らす意義を教えてくれる一冊だ。
また、犬猫だけでなく、ウサギ、ハムスター、フェレット、鳥、鑑賞魚、そして大型の馬まで、読めばあなたにはどんな動物が必要なのかが分かってくる。では、気になる内容をほんの一部だが紹介してみよう。
犬と暮らせば健康寿命が延びる
犬と暮らすと健康になることは確かだ。ラブラドールを飼う前の私はしょっちゅう風邪をひくし、肩こり腰痛でも悩んでいた。が、愛犬と一年365日、雨の日も風の日も散歩をするようになってから、免疫力が高まったようで、まったく風邪をひかなくなり、また足腰が鍛えられ体も心も若返ったような気がしたものだ。
現在、人の健康寿命を延ばすことが政府の大切な施策のひとつとなっています。ペットフード協会の2014年の調査で、犬と散歩する人は健康寿命が男性で0.44歳、女性で2.79歳延びることが判明しています。
(『人とペットの赤い糸』から引用)
本書には、犬と暮らすための基本知識から、健康寿命をさらに延ばすために犬と楽しむスポーツやダンスの紹介。そして、足の力が弱くなりがちな現代の犬のためのドッグフィットネスの話など、知っておきたい情報が満載。さらに、犬は子どもの読み聞かせ能力向上にも貢献するのだそうだ。
欧米の調査では、本の読み聞かせ能力が低下している子どもが増えている中、犬に本を読み聞かせると、犬があたかもおとなしく聴いているかのように子どもには見え、より多くの本を読んであげようという気持ちにつながることがわかっています。子どもの読み聞かせ能力を高めるのに犬を介在させる「リードプログラム」です。
(『人とペットの赤い糸』から引用)
ペットは子どもの情操教育にも役立ってくれるのだ。
家猫は寿命が2.56歳延びる
猫のモフモフとした毛を撫でていると、幸せホルモンである「オキシトシン」が分泌されるのだそうだ。つまり猫を飼えば癒され、幸せになれるというわけだ。ところで、狭い家に猫を閉じ込めるのはかわいそうと思う人もいるが、長生きさせるには家の中だけで飼うほうがいいようだ。
猫の行動範囲は半径500メートルといわれている。家の中と外の両方で飼っている人もいるが、外猫は感染症や交通事故に遭遇するリスクが高い。家猫にすることで、寿命が2.56歳延びる。(2020年ペットフード協会調べ)
(『人とペットの赤い糸』から引用)
猫と快適に暮らす方法のレクチャーはもちろん、本書では、猫に財産は残せるか? という問題にまで切り込んでいる。ペットは民法上は物と見なされるため、猫が財産を相続することはできない。しかし、
誰に引き取ってもらうのかを決め、その人が世話をしてくれることを条件に財産を渡すことを遺言しておきます。これは「負担付遺贈」または「負担付死因贈与」などと呼ばれます。(中略)引き受けた人は、贈与された財産の上限の範囲内で「負担の義務」を果たす必要があり、猫の寿命や飼育にかかるお金を考慮し、十分な財産を贈与してもらわなければなりません。
(『人とペットの赤い糸』から引用)
家族であるペットに遺産を残したいと考えている人は必見の内容になっている。
ペットと暮らせる集合住宅を増やそう
私はフランスで犬を育てたが、かの国では集合住宅でペットを飼うのは自由で、法律上家主は借家人が犬や猫を飼うことを禁止してはならないことになっていた。もちろん飼い主は粗相をさせない、無駄吠えをさせないなどしつけを徹底し、マナーを守る義務はあった。
一方、日本では、ペットを飼いたくても飼えない人が多い。調査によると「集合住宅で禁止されているから」と答えた人は30%にもなるそうだ。
ペットと暮らせるマンションが増えつつはあるが、まだその供給がペットを愛する人たちのニーズを満たしていないのが現状だ。ペットの飼育OKを出してくれる家主さんが増えることを願ってやまない。
高齢者にこそペットは必要
飼育放棄させられた猫や犬を引き取って育ててあげたいと思う高齢者はとても多い。が、譲渡会に行くと年齢制限があり、断られてしまうケースがほとんど。これについて越村氏はこう記している。
若い人であっても必ず長生きできるとは限りません。欧米のように年齢制限を設けず、積極的に高齢者にペットと暮らすことを支援・サポートするしくみやインフラを整備していくことが、人生100年時代における人とペットの共生の正しいあり方でしょう。
(『人とペットの赤い糸』から引用)
この他にも、自然災害が多い日本でペットと共に生き抜く方法、ペットロスの乗り越え方など、本書にはペットを暮らすための大切な話がいっぱい。動物を愛するすべての人に読んでほしい一冊だ。
【書籍紹介】
人とペットの赤い糸
著者:越村義雄
発行:学研プラス
人とペットの暮らしを、もっと楽しく・幸せにーー長年、ペット業界の第一線で活動し、たくさんの生きものと触れ合ってきた著者が伝える、いまペットと暮らしている人はもちろん、これから迎えたいと考えている人も知っておきたい大切なこと。夕刊紙の人気連載から厳選した72のコラムを書籍化。
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