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2016/9/4 7:00

天才・羽生善治は果たして人工知能・AIと対戦するのか?

2016年3月、グーグルが開発した人工頭脳アルファ碁が、韓国のプロ棋士イ・セドルと対戦した。人工頭脳はまだ開発段階にあり、イ・セドルの圧勝で終わるだろうというのが大方の予想だった。ところが、驚くべき事に、4勝1敗で、人工頭脳の圧勝に終わり、新しい世界が来ているのだと思い知らされる結果となった。

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■畳の上の格闘技、それが将棋

「イ・セドル、破れる」というニュースを聞いたとき、真っ先に思ったのは、「もし、将棋の天才・羽生善治に、人工知能が挑戦状を送ったら、彼は受けてたつのだろうか?」ということだった。

 

私は将棋をまともにさせないくせに、将棋の棋士が大好きなのだ。座敷にじっと座り、体を動かすことなく、盤上で激しくぶつかり合う棋士たち・・・。その姿に子供の頃から憧れてきた。畳の上の格闘技と呼ぶべきその迫力、そして、独特の美しさ。日本が世界に誇るべき特殊な芸と技が混じり合ったものだと思う。

 

■棋士の頭脳は独特だ

棋士は実に不思議な人たちだ。すさまじい頭脳を持ちながら、それをひけらかすことをしない。どこか異世界で生きているような顔をしている。

 

もうだいぶ前のことだが、幸運が重なり、将棋連盟の会長・米長邦雄さんとお知り合いになった。残念なことに米長さんは2012年に亡くなったが、将棋のことを何も知らない私に、実に様々なことを教えてくださった。

 

「勝った日と負けた日では、飲むお酒の種類が違うんですよ」と、おっしゃるので、「でも、いずれにしろお飲みになるんですね?」と、聞いた私に、「あはは、その通りだ、まいったな」と、答え、「では今日も」と、豪快に杯を空にした。

 

■果たして羽生善治は人工知能と対戦するのだろうか?

米長さんは、コンピュータと棋士との対戦についても、意見をお持ちだった。「私はアナログ人間ですからね」と、おっしゃりながらも、将棋の独自性を守るため、力を尽くすおつもりのようだった。

 

今回のニュースについてどう思ったか、うかがってみたいが、果たせないのが残念でならない。ただ、無関心であったわけではない。実際、将棋とコンピュータの対戦である電王戦が始まると、引退棋士の代表として自ら勝負すると名乗り出たという。

 

将棋界初の7冠を保持した天才・羽生善治は、人工知能への興味を示しているようだ。開発者に会うため、わざわざイギリスにまで出向いている。対戦の日は案外、近いのかもしれない。

 

■3人の魅力的な人物との真剣勝負

羽生善治の対談集『簡単に、単純に考える』(PHP研究所・刊)は、初版が2001年であり、人工知能との対戦が今ほどは切実ではなかった頃に出されたものだ。しかし、今年に入って電子化された本を読むと、そのときすでに彼は今を読み切っていたのではないかと思う。さすがである。

 

素晴らしい人物には素晴らしい友人がいると、私は感じてきたが、対談集である『簡単に、単純に考える』を手に取ると、まさにその通りだと、うなりたくなる。

 

これもまた、さすがだ。対談のお相手は、スポーツライターとして名高い二宮清純、現在は神戸製鋼コベルコスティーラーズの総監督であり、ゼネラルマネージャーでもある平尾誠二、そして、ロボット学者・金出武雄のお三方。羽生善治が彼らを相手に繰り広げた対談は、対談というより、激しくさしあう将棋の対戦のようだ。ジャンルが違う方たちなのに、いや違うからこそなのか、火花が散るように意見が行き交う。

 

■生徒としても天才

天才・羽生善治は、生徒としても天才だと思う。3人の巨人から、どんどん、吸い込むように学ぶ。謙虚な態度は崩さないまま、わからないところはわかるまでつっこむ激しさも見せる。

 

それでいながら、天才だけにわかる理屈をこねて、読者を困らせたりしない。私のように、難しい話になると頭痛がしてくるような女にも、数々のヒントをわかりやすく示してくれる。

 

■日本へのラブレター?

『簡単に、単純に考える』は、これからの日本へ向けてのラブレターだと私は思う。彼は言う。

 

私は、将棋を極めて日本的なものだと思っている。「歩」が「と金」になったり、相手から取った駒を再び活かして戦力として使うことは、日本社会の流動性を端的に表しているのではないだろうか。(『簡単に、単純に考える』より引用)

 

やっぱり棋士という人々は普通じゃない。日本に将棋があって、本当によかった。将棋の手法がこれからの日本を導き、混沌とした世界から私たちを救いだしてくれるような気がする。(文・三浦暁子)

 

【参考文献】

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簡単に、単純に考える

著者:羽生善治
出版社:PHP研究所

勝者は、複雑なものの考え方をしない! 本書は、天才・羽生善治の思考法則を、二宮清純、平尾誠二、金出武雄ら各界の第一人者たちとの対談によって明らかにしたものである。”対局中は論理的に考えない。10手先のことを考えたり、休んだり、バラバラに考えたものを最後にまとめてから指す””情報は「選ぶ」より「捨てる」。この手はありえないと、瞬間的に消していく”――など、シンプルに考えることが勝負に勝つ直感を呼び覚ますという。ビジネスの環境は常に変化している。にもかかわらず多くの人は、論理的思考の末に辿りついた考えや発想こそが、いい結果に結びつくと考えがちだ。しかし現実は、ギリギリの状況から生まれた直感の方が、いい結果を生み出すことも少なくない。要は追い詰められた状況を何度も経験して「勝負勘」を養い、従来の方法に捉われないやり方を導き出すことが大切なのである。柔軟な発想をするための「頭脳教科書」である。

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