本・書籍
2021/10/6 6:15

僕たちと30年ともに歩んだゲームをめぐる冒険——『僕たちのゲーム史』

ファミリーコンピュータが発売されたのは1983年。以来開発されたさまざまな家庭用ゲーム機は今も進化を続け、ファミコン発売からほぼ40年が経過した現在、ゲームの主なステージはスマホになりつつある。

 

自分のゲーム史と重ねてみる

筆者が初めて買ったファミコンのゲームは『ベースボール』だった。『スーパーマリオブラザーズ』をはじめ、『ゼルダの伝説』や『ゼビウス』などもかなりやりこんだ。

 

ファミコンからスーパーファミコンへの過渡期に順応しながら、セガサターンとか3DO-REALも試した。ファミコンなら『燃えろ!!プロ野球』、スーファミは『大相撲魂』や『モノポリー』、プレステは『バイオハザード』と『ウイニングイレブン』シリーズというように、思い入れの深いタイトルもある。

 

ゲーム史はそのままポップカルチャー史なのかもしれない

僕たちのゲーム史』(さやわか・著/星海社・刊)は、数多くの懐かしいゲームを通して、ちょっと昔の日本を見ていく本だ。まず、自分自身のゲーム史と重ねながら読むのが楽しい。ゲームを軸にして日本のポップカルチャー史を見直し、懐かしむという読み方もできる。マイ・ベストゲームは収録されているのか。どんな感じで紹介されているのか。そのあたりも気になる。目次を見ていただきたい。

 

はじめに なぜ「ゲームの歴史」が必要なのか

第一章  スーパーマリオはアクションゲームではない

第二章  僕たちは誰を操作しているのか

第三章  物語をシミュレートする

第四章  体感と対戦

第五章  CD-ROMの光と影

第六章  終わりの/と始まり

第七章  楽しみはゲームの外にある

第八章  あたらしい一人称

第九章 「別世界」から「現在」へ

おわりに ゲームの未来

 

コントローラーさばきを思い出させる文章

本書の本質は、次の文章に集約される。

 

ゲームのことを語る、そのやり方は、大きく分けて四通りくらいしかないように思います。一つは懐古として。つまり、かつて自分が好きだったゲームについて、その思い出を語るやり方です。一つは印象として、要するに、自分の関心と経験に沿って築かれた理論から、ゲーム一般を説明づけるものです。一つは産業として。売上や業界動向に注目した語りのことです。一つは原理として。「遊びとは何か?」というような基礎理論を軸にしながら、話の裾野を広げていくものです。

『僕たちのゲーム史』より引用

 

四通りのやり方すべてが網羅されているこの本の章立てを改めて見てみる。『スーパーマリオブラザーズ』を第一章で検証するのは当然なはずだ。他にも本当に懐かしいゲームが紹介されていて、見ているだけで楽しくなる。『きこりの与作』『チャレンジャー』『グーニーズ』『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境』。あのころのコントローラーさばきや連射テクの動きをすぐに思い出した。そして第五章ではテクノロジーに特化した話が展開されていく。豊富な知識に裏打ちされた振れ幅の大きさが、読む者を飽きさせない。

 

ゲーセン➝テレビゲーム➝eスポーツ

歴史シミュレーションしかしない人。単純かつ奥が深いパズルゲームをこよなく愛す人。ひたすらスポーツものに特化する人。あるいは、特製コントローラーを買ったり作ったりして格ゲーを極める人。最近では、PCのオンラインゲームしかしないという人もいるはずだ。そういえば、eスポーツという言葉もいつの間にかすっかり定着していて、かなり高額の賞金が出る大会もある。日本国内でも数多くのプロチームが立ち上げられている。

 

読み進めながら、うれしく感じたことがもう一つある。ゲームセンターの名機にも触れてくれているのだ。『ストリートファイターⅡ』とか『ダンスダンスレボリューション』『ドラムマニア』あたりがすぐに脳裏に浮かぶ。特定のゲームにまつわる心象風景めいたものが呼び覚まされるのは、遊んだ絶対時間数と思い入れのせいだろうか。

 

変化しながら紡がれていくエンターテインメントの歴史

ダウンロードしてスマホで遊ぶほうが多くなった今の時代、ゲームという恒久的なエンターテインメントは、画面のサイズ感に関してもニーズの方向性に関しても、ぐっとフォーカスが絞られているのかもしれない。結びの部分で、次のような文章を見つけた。

 

過去を継承しながら、過去にないものを作っていく。そういう矛盾をはらんだ営みの連続を、人は歴史と呼びます。僕たち全員がその先端にいて、たった今も、未来のゲーム史を作っています。

『僕たちのゲーム史』より引用

 

2016年11月には「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」、そして2017年10月には「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」が立て続けに発売された。いずれも、選りすぐりのゲームソフトを搭載した手のひらサイズのファミコン型端末だ。ちょっと小さくなったけど、実機という呼び方がしっくりくる。実機を求めるニーズは、2020年を過ぎても変わらない。懐かしさも斬新性も欠かせないゲームの世界。ここから先、どのような歴史が紡がれていくのだろうか。

 

【書籍紹介】

僕たちのゲーム史

著者:さやわか
刊行:星海社

本書は、ゲームと共に生きてきた「僕たち」のための本です。僕たちの暮らしの中にゲームが登場して、30年ほどの時が流れました。本書ではその歩みを辿ってゆきますが、ソフトの売り上げ、あるいはハード戦争といった事柄に重心を置いた記述はしていません。なぜなら、日本のゲームは、「ボタンを押すと反応する」という基本を巧みにアレンジしつつ、一方で「物語」との向き合い方を試行錯誤してきた歴史を持っているからです。このような視点でゲーム史を編むことで、「スーパーマリオのようなゲームはもう生まれないのか?」「最近のゲームはつまらなくなったのでは?」といったあなたの疑問にもお答えできるようになりました。さあ、ゲーム史をめぐる冒険の旅に出ましょう!

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