本・書籍
2022/1/9 6:30

エビがプリプリ食感で美味しいのはなぜ? エビとカニはこんなにもすごかった!~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。お正月にエビやカニを食べたという人も多いのではないでしょうか? エビは長寿の象徴ですし、エビもカニも色が赤くて縁起がいいですよね。

 

昔、飲み会で「エビかカニ、一方がこの世からなくなるとしたらどちらを残すか」という話題で盛り上がった記憶があります。カニなんて年に何十回も食べるものではないですが、ズワイガニにケガニ、カニミソだってほかのものには替えられないほど美味しい。かといってエビがなくなったらエビフライ、エビチリが消滅、八宝菜も大幅な戦力ダウン……。みなさんはどちら派ですか?

エビ・カニを多彩な切り口から丸ごと紹介

さて、そんな話はさておき、今回紹介するのはエビはすごい カニもすごい 体のしくみ、行動から食文化まで』(矢野 勲・著/中公新書)。著者の矢野勲さんは、エビ・カニについて長年研究してきた福井県立大学名誉教授。著書に『エビ・カニの種苗生産』(共著・恒星社厚生閣)、『世界のエビ類養殖』(共著・緑書房)などがあります。

 

飼育していたモクズガニにジャンケンのチョキを示して振ったところ、遊び仲間と思われたのか背伸びや逆立ちといった変わった仕草を見せてくれるようになった、という本書のエピソードには心がなごみました。

 

エビの身が美味しい理由とは?

まず、第1章の「エビ・カニとはどのような生き物なのか?」では、それぞれの分類や体の構造が解説されます。カニの脚は10本、ではエビの脚は何本でしょう? 考えたこともなかったですが、実は、エビとカニの共通点のひとつが、エサをつかむ・歩くための「胸脚」が10本あるということ。本書ではエビとカニが甲殻類ではなく「十脚目」という用語でまとめられています。ただし、エビは泳ぐための「遊泳肢」がさらに腹部に5対あるのがカニとの違い。今度じっくり観察してみようと思いました。

 

そのエビ・カニの「胸脚」は再生能力があることも知られています。敵に襲われたときに脚を自分で切り捨てる「自切」を行って逃げるのですが、その後、切断面から「再生芽」という脚のもとができて脱皮後に生えてくるそうです。この仕組みは解明されておらず、矢野さんは「再生医療発展のためにも重要」と述べています。まだエビやカニから学ぶことはたくさんあるのですね。

 

第9章は食いしん坊お待ちかねの「エビ・カニの肉質の特徴と食文化」。私はエビチリのプリプリ食感に感動することがよくありますが(笑)、どうしてエビ肉はあれほど食感がいいのか。その秘密は……外敵から逃げようとして跳ねるために腹筋がよく発達しているからだとか。

 

一方カニは逃げるときに脚を使いますが、エビほどは発達しておらず、また筋線維束が平行に並んでいるため線維感があります。エビとカニで作られる料理が異なるのは、生態や体の構造にも関係していたんですね。

 

全9章にわたってエビとカニの秘密がぎっしり詰まった一冊。ハサミを勢いよく閉じてプラズマを発生させるテッポウエビ、「月夜のカニは身が少ない」という古来の言い伝えの真相、エビ・カニが爪先立って歩く理由……。ピンポイントな題材ながら、さまざまな方向性からエビとカニの魅力が語られ、最後まで飽きずに読めます。

 

食卓では身近なのに、その生態はあまり知られていないエビ・カニ。長年観察してきた研究者からカジュアルに話が聞けるのが新書の良さです。お正月にエビとカニに舌鼓を打ったという方はぜひ読んでみて下さい。

 

【書籍紹介】

エビはすごい カニもすごい 体のしくみ、行動から食文化まで

著者:矢野勲
発行:中央公論新社

みんなが大好きなエビとカニ。しかし、その体のしくみや行動は意外に知られていない。なぜエビ・カニは茹でると赤くなるのか。エビがプリプリの理由は? カニの横歩きの秘密は? エビ・カニとシャコやヤドカリとの違いとは? さらには何百㎞も渡りをするエビ、ハサミをパチンと閉じてプラズマを発生させ獲物を倒すエビ、毒を持つイソギンチャクをはさんで身を守るカニ等、多種多彩なエビ・カニのすごい生き方を紹介する。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

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