本・書籍
2023/4/20 20:30

K-POPも韓国ドラマもこれ一冊! 推しとオタクへの愛に満ちた語学本『世界が広がる 推し活韓国語』担当者に聞く!

2022年3月の発売直後から大反響を呼んだ『世界が広がる 推し活英語』の第2弾は、待望の韓国語! K-POPや韓国ドラマはもちろん、グルメやファッションまで、今やトレンドの最先端となった韓国カルチャーの推し活に使えるフレーズやワードが満載。早くもオタクのあいだで話題騒然となっています。企画・編集を担当したGakkenの澤田未来さんにお話を伺いました。

 

(取材・執筆:菊池昌彦)

 

企画の背景は世界的な韓国ブーム

――本書を企画されたのはどのような経緯からですか?

 

澤田 元々、前作の『世界が広がる 推し活英語』は、世界的なオタクカルチャーの盛り上がりと、私自身の体験を背景として企画したものです。昨今、SNSや動画サイトでは、あらゆる国の言葉で、好きなアイドルやアニメなどを応援するコメントが書き込まれています。これに着目し、手始めに多くの方が使用している英語にフォーカスしてオタク語彙を収集したら、ユニークな本ができるのではないかと思いました。また、私自身、海外の友人と互いの好きなものを語り合う際に、自分の語彙力が足りないせいで、十分にコミュニケーションが取れないもどかしさを感じることがよくありました。私と同じように感じている方がいるかもしれないと思い、海外の人々と推しへの愛情を語り合うための本をつくりたいと考えました。

約2年間の構想の末に、昨年3月に発売したのですが、大変ありがたいことに大きな反響をいただきました。本書の予約開始段階から「これの韓国語版も欲しい」という声が多く寄せられまして、『推し活英語』の発売前に企画を立ち上げました。

 

――ご自身でも韓国ブームのようなものは感じておられましたか?

 

澤田 もちろんです! 韓国エンタメの流行はこれまで幾度もありましたが、最近は特に盛り上がっていますよね。BTSなどのK-POPアーティストや「イカゲーム」などのドラマが世界的にヒットしたり、昨年のNHK「紅白歌合戦」には韓国のガールズグループが3組も出演したりと、全世代にわたって浸透しているように思います。私も近年沼落ちした一人です。また、コロナ禍が落ち着く中で、韓国への渡航制限が緩和され、日本人の韓国旅行需要が高まっています。このような背景から、日本人の韓国語学習者が増えていると感じます。

 

――韓国のアーティストや俳優のファンダムの印象はいかがでしたか?

 

澤田 ファン同士が連帯して、いっしょに推しのために活動する“行動力”がすごいなあと思います。例えば、推しのデビューや誕生日を祝うために駅や街頭スクリーンに広告を出したり、撮影現場にコーヒーカーを差し入れしたり、オリジナルカップホルダーを作って配布するイベントを実施したり……。最近は日本をはじめ、外国でも見られますが、韓国発のユニークな文化だと感じています。

 

韓国エンタメを愛するオタクから集めた「推し活」フレーズ

――この本には膨大な量のオタクワードが並んでいますが、制作はどのように進められましたか?

 

澤田 まず、読者の皆さんが韓国語でどんな言葉を言ってみたいのかを知るために、日本人の韓国エンタメを愛するオタクの方々を対象に、20問のウェブアンケートを実施しました。100人以上の方々から、「表情管理の天才」「口からCD音源」などといった回答が集まり、数百の単語・フレーズリストをつくることができましたが、これをそのまま直訳するだけでは、韓国人に通じない表現も出てくるだろうと考えました。

そこで、アイケーブリッジ外語学院で韓国語講師をされている、柳志英先生と南嘉英先生にご協力をお願いすることにしました。お二人は日本語がネイティブ並みにお上手で、韓国エンタメにも精通されているため、日本語のニュアンスを汲み取りながら、実際に韓国人のエンタメオタクがよく使う言葉に置き換えてくださったんです。

例えば、「表情管理の天才」は「表情演技の達人(표정 연기의 달인.)」、「口からCD音源」は「CD飲み込んだかと思った(CD 삼킨 줄.)」のほうが自然だよ、といった形で一つ一つご指摘いただきながら、リストの精度を高めていきました。

 

――韓国カルチャーといっても、アイドル、俳優に関するものから、グルメやファッションまで多岐に渡りますが、言葉の選定にあたっての苦労は?

 

澤田 基本的には、あまり特定の分野に偏らないように気をつけました。どうしてもK-POPファンの方々によるニーズが高いので、比重が大きくなってしまいますが、「すごく会いたかったです(너무 보고 싶었어요.)」や「まぶしくて見えません(눈이 부셔서 볼 수가 없어요.)」などは、推しが誰であっても使えるフレーズです。このように、ジャンルを問わず使える言葉を中心に扱うようにしました。

 

――カットした中で、印象に残っている言葉は?

 

澤田 韓国では、グルメやファッションなどのトレンドが目まぐるしく変わりますよね。読者の皆さんには、本書をできる限り長く使っていただきたいので、一過性のブームで終わりそうなものは避けて、なるべく普遍的なものに絞りました。

それから、韓国カルチャーの推し活をしていると「サセン(사생/スターの私生活まで追いかけ回す、マナーの悪いストーカー的なファン)」などのネガティブな言葉も目にしますが、本書ではあえて扱いませんでした。というのも、読者の中には、初めてこの本で韓国カルチャーに触れる方もいるかもしれません。そんな方々には、あまりネガティブなことを考えず、ハッピーな気持ちで読んでほしいと思ったんです。

 

――言葉の意訳で気をつけた点は?

 

澤田 “韓国語にはあるけど、日本語にはない概念”というものもあります。例えば、「トkトンサゴ(덕통사고/突然起こった事故のように、急にオタクになること)」や「カrグンム(칼군무/刀のようにキレのある群舞)」のようなものです。これらは日本人のオタクの皆さんも言いそうな「突然の沼落ち」や「キレッキレのダンス」といった造語に置き換えて掲載しました。

また、日本のファンのあいだで使われている韓国語が、実は現地ではあまり使われていないというケースもあります。日本では「男性アイドルグループ」を「ナムジャグル」、「女性アイドルグループ」を「ヨジャグル」と言ったりしますが、韓国では「ポイグルp(포이그룹/ボーイズグループ)」「コrグルp(걸그룹/ガールズグループ)」という言い方が一般的だそうです。このように、私を含め、多くの日本人が勘違いしていそうな箇所については、積極的に盛り込んで解説するようにしました。

 

――「オタクが使うフレーズ」だけでなく、CHAPTER 2として「推しが使うフレーズ」が載っているのもおもしろいですね。

 

澤田 こちらは『推し活英語』にはなかった章です。韓国エンタメのファンの中には、自分から何か発信したり、ファン同士で連帯したりまではしないけれど、推しの言葉は理解したいという方がたくさんいるのではないかと思いまして……。そこで、音楽番組やコンサート、SNSや配信などで、アーティストや俳優がよく使う言葉を入れました。

 

――書籍全体として、ハングルの発音表記も独特です。

 

澤田 これはアイケーブリッジの先生方にご提案いただいたものです。韓国語には、日本語にはない、子音で終わる音があります。すべてカタカナで表記している語学書もあるのですが、よりネイティブの発音に近づけるため、カタカナのルビにアルファベットのk、r、m、pを入れるなど、一瞬誤字脱字ととらえられかねない表記方法にチャレンジしてみました。例えば「キムチ」ではなく「キmチ」と表記しています。

 

制作陣全員が韓国カルチャーへの愛を持ってつくった本

――『推し活英語』から関わっている劇団雌猫さんや、イラストレーターのあわいさんも参加されています。

 

澤田 劇団雌猫さんは、国内外のいろいろなジャンルのオタクを取材することをライフワークにされており、オタクカルチャーにお詳しい方々です。「この言い回しは便利そう」「初心者にとっては解説がないとわかりづらい」などと、多角的な視点でご意見をいただけるため、今回も監修をお願いしました。

あわいさんには、韓国で人気の髪型や服装、アイテムをお伝えし、素敵なイラストにしていただきました。特定の誰かをモデルとするのではなく、普遍的なファン像・アーティスト像を追求したおかげで、読者の皆さんに共感していただきやすいイラストになったのではないかと思います。

 

――ダウンロードで聞ける音声にも、現役のアーティストが起用されていて豪華な顔ぶれです。

 

澤田 多くの語学書には標準装備として音声がついていますが、『推し活』シリーズに関して言えば、リスニング用の音声というより、ひとつの作品として楽しめるような音声にしたいと考えています。前作の『推し活英語』でも、オタク女子役の日本語ナレーションは声優の悠木碧さんにお願いし、読者の皆さんにご好評いただきました。

今作では、男性アーティスト役の日本語ナレーションをINIの許豊凡さんと田島将吾さんに、女性ファン役の日本語ナレーションを声優の首藤志奈さんにお願いしました。INIの皆さんは韓国でも活動されていて、中でも許さん・田島さんは韓国語を勉強していることで知られていますので、そのお二人にご出演いただくことは、読者の方々にとって大きな励みになると考えました。許さん・田島さんのフレッシュな演技、首藤さんの感情豊かな演技も、本書の魅力のひとつです。

↑日本語ナレーションに参加したINIの許豊凡さん(左)と田島将吾さん(右)

 

――流行語や若者言葉など、通常の語学書には出てこないような言葉も並びますが、韓国語のナレーションは苦労したのでは?

 

澤田 それは全くありませんでした。女性ファン役のキム・シニョンさんは韓国エンタメをお好きな方で、男性アーティスト役のシン・ウィスさんは音楽プロデューサーとしても活躍されています。若者言葉やオタク用語に日ごろから触れているお二人でしたので、「こんな言葉聞いたことがない」とおっしゃることはなく、収録を楽しんでいらっしゃいました。

 

――紙面のデザインも、韓国らしい色づかいなど、こだわりが感じられます。

 

澤田 前作に続いて、キタダデザインの北田進吾さんがご担当くださっています。『推し活英語』とのシリーズ感を出しながらも、韓国カルチャーを研究したうえでデザインを作り変えています。

単語やフレーズはもちろん、イラスト、音声、デザインと、本書にかかわった全員が、韓国カルチャーへの愛とリスペクトを持って作っているのが『推し活韓国語』です。読者の方々にその点を評価していただき、「中の人がわかってる」と言っていただけるのは、とても嬉しいです。

 

――今後第3弾などシリーズ化していく予定はありますか?

 

澤田 そうですね。最近は中国のゲームやアニメ、創作界隈が熱いですし、タイBLも相当深い沼だと聞いています。読者の方々からそういったニーズがあれば、改めて企画にしていきたいと思います。

 

【書籍紹介】

推し活韓国語

著者:柳志英、南嘉英
発行:Gakken

2022年3月に発売し大きな話題となった『世界が広がる 推し活英語』に続く姉妹編として、最も多くのご要望をいただいた『推し活韓国語』がついに登場! 韓国人のエンタメオタク全面協力のもと、「カムバック」「チッケム」などの367語と、「最強の愛されマンネ」「エンディング妖精、優勝してる」などの517フレーズを掲載しています。ひとつひとつの言葉の意味を丁寧に解説しているから、入門者も安心。ファンレターや運営へのメールの書き方など、コラムも充実しています。韓国のエンタメを愛するすべての方々に活用してもらいたい一冊です。

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