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2023/11/12 11:30

文章を書けば本当の自分がわかる! 書くことは人生修行と説く、全米ベストセラーの文章術~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月鮎です。こういう仕事をしていることもあり、私が文章を書くのは誰かに何かを伝えるためですが、文章を書く効果はそれだけではありません。たとえば目標。ぼんやりと頭のなかで思っているよりも、「自分はこういう理由でこうしたい!」と文字にすることで、はっきりとし、モチベーションも上がります。

悩みも同じ。もやもやしたままより、「何が嫌でどう感じているのか」を具体的に書き出せば、悩みは客観的なものとなり、気持ちが整理されます。

 

創作に関しても、自分のなかにある、おもしろいもの、幸せなもの、恐ろしいもの……そうした種を形にすることで、自分の核に光が当たり、そこから世界が無限に広がっていきます。

 

なんといっても、文章を書くことは安上がりで手軽。今はSNSや投稿サイトなど公開する場所も多数あります。みなさんも、まずは日記などを書いてみてはいかがでしょうか。

 

全米ベストセラーの文章術が新書で復活

さて、今回紹介する新書は魂の文章術』(ナタリー・ゴールドバーグ著/扶桑社新書)。著者のナタリー・ゴールドバーグさんは詩人、作家、創作クラス講師。40年以上にわたって禅修行に取り組み、創作クラスでは精神修行としての”書くこと”を教えています。

 

1986年に原著が出版され、米国で100万部のベストセラー。日本語版は1995年に翻訳され、2019年の増補版が今回新書となって刊行されました。

 

誰にでもできる、文章を書く心構え!

本書は具体的な技術論よりも、文章を書ける人になるための心構えを説いています。禅を学んできたナタリーさんによる、「書くこととは生きる修行である」、そんなモットーを伝えるエッセイ本ともなっています。

 

私が身をもって納得したのは、序盤の章「第一の思考」。ここには文章修行の基本ルールがわかりやすく示されています。まずは、10分でも20分でもいいのでとにかく時間制限を決めて書くこと、とナタリーさん。さらに、書いたものを消さない、つづりや句読点、文法などを気にしない、考えない・論理的にならないなど、書く際の6つのルールが挙げられています。

 

「ニンジンをおろすように、紙の上にあなたの意識という色とりどりのコールスローをぶちまけよう」と、時としてユーモラスな表現を交え、シンプルながら効果的な練習方法が提案されていきます。ランニング同様、やればやるほど会得できるというナタリーさんの言葉は、背中を力強く押してくれます。

 

ニューメキシコ州の小さな町にある車を改造したレストランで、ものを書こうとした場面から始まる章「レストランで書く」。6歳のときピアノの前で歌ったら従姉に「ナタリーは音痴よ!」と金切り声を上げられたエピソードから始まる「聴くこと」など、自分に起きた出来事を軽妙に語るエッセイとしても引き込まれます。

 

そのなかで、題材リストを作る、自分の能力について悩むのはやめる、友達に向かって話すことは書くことの練習場、など具体的な提案もちりばめられています。

 

文章を書くこととどう向き合うか、ひいては自分とどう向き合うかという精神的な話が中心のため、スマホ時代になっても内容は古びていません。新書になったことで手に取りやすくなり、いつでもパラパラめくれるのもプラス。あなただけが持つ内なる魂を紙にぶつけてみましょう!

 

【書籍紹介】

魂の文章術

著:ナタリー・ゴールドバーグ
訳:小谷 啓子
発行:扶桑社

書くことに才能はいらない。誤字脱字も文法も句読点も気にしなくていい。考えなくていい。論理的でなくてもいい。誰でも「書ける人」になるための深遠かつシンプルなメソッド。全米100万部超えの古典的名著が待望の新書化!

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。