本・書籍
2016/12/11 11:00

贈り物にも! 大切な人に届けたい“心に残る”本11選

本は、ときに私たちを勇気付けたり、迷う心を整えたり、リラックスさせたり楽しませたり、また新しい世界へ連れて行ってくれるもの。どんな状況にあるどんな人にも、ぴったりの本はあるのです。

 

まるでソムリエやコンシェルジュのように、その人に合わせて本をおすすめしてくれる“ブックセラピスト”として活躍するのが、元木忍さんです。南青山のブックカフェ「brisa libreria(ブリッサ・リブレリア)」で、訪れる人たちと会話をしながら、その人が本当に欲している本をまるで薬を処方するように、提案してくれるのです。

 

もうすぐ、大切な人にプレゼントを贈るクリスマス。今月はそんな元木さんに、人生において5つのターニングポイントを迎えた人へ贈りたい、素敵な本をピックアップしてもらいました。

 

本は、いつどんな状況で読むかで
見える世界も受け取るメッセージも変わるのです

「私は人に贈り物をする時は、基本的に『本』と決めているんです。それは、子供の時に、本をもらって感激した思い出がたくさんあったからで、この仕事を始める前からそうしてきました。今回ピックアップしたすべての本たちは、贈った経験があるものばかり。いろいろな場面で、いろいろな本を選んでプレゼントしてきたので、思い出もいっぱいあります(笑)。受け取ってくれた人がそこからちょっとでも影響を受けてくれたり、勇気が出たとか、少し人生観が変わったと言ってくれたりすると、本を贈ることでその人とのつながりを感じられて、とてもうれしく思うのです。

 

でも、なぜモノではなくて、本を贈るのか? というと、それは、本がもつメッセージを、大切な人に届けたいからなのです。言葉では言いにくいことでも、本は私の言葉を代弁してくれるから。

 

また、過去が未来を変える。これは当たり前のことです。過去の積み重ねが未来につながると思ってきたんですけど、最近感じるのは、未来が過去を変えるんだってこと。いま新しいことにチャレンジして生き生きしているからこそ、過去も美しく見えるようになる。逆に苦しいことばかり経験してきて、今も変わらない苦しみだけだったら、未来も過去も何も変わらない……。つまり、未来をどう生きるかが、自分が歩んできた過去の見え方を変えるし、それをたったひとりで確認できる作業が、本の素晴らしさだと思うんですよ。

 

本は、今日読んだ内容と来年読んだ内容と、自分が置かれている環境が変われば、受け取り方がまったく変わるものなんです。気に入った同じ本を、繰り返しじっくりと読むことで、今の自分がどんな状態なのかが、見えてくると思うのです。

 

私の場合は昔から、シェル・シルヴァスタインの『おおきな木』をよく読んでいます。すると、自分を“少年”と重ね合せる日もあれば、今は“木”と同じだなと思う日もある。少年の立場に似ていたら、人から何かを得られている状態で、誰かに頼りきり、お世話になっていることに感謝をする。でも、木の立場に似ていたら、誰かに何かを与えている時で、人の面倒を見ていたり、後輩などを育てていたりする自分の立場を感じ、本を読みながら揺さぶられています。そんな風に、1冊の『本』によって自分自身と向き合い、自分を理解する作業をずっと続けていってほしい。身近にいる大切な方へ、今必要としているメッセージを『本』というカタチにして、自分の思いを贈ってみてください」

『おおきな木』(著=シェル・シルヴァスタイン、訳=村上春樹/あすなろ書房/¥1,296)。少年が成長しやがて年老いていくまで、いつでもそばで見守ってくれた大木で“無償の愛”を表現した、時代を超えた名作
「おおきな木」(著=シェル・シルヴァスタイン、訳=村上春樹/あすなろ書房/¥1296)。少年が成長しやがて年老いていくまで、いつでもそばで見守ってくれた大木で“無償の愛”を表現した、時代を超えた名作

 

Selected Books

For.最高の友人

20161210-i01 (3)

「おくりものはナンニモナイ」
パトリック・マクドネル(著)
谷川俊太郎(訳)
あすなろ書房 ¥1296

 

猫のムーチは“なんでももってる”ともだちに贈り物をしたいと考えた。悩んだ末に、ムーチが贈ったのは“ナンニモナイ”! ギフトボックスにしたダンボールの中は空っぽ。モノでなく気持ちを届ける、そこに友を心から思うやさしさが感じられる。「私たちは大人になって、もう子どもの頃のようにモノを欲しがっているわけじゃないですよね。欲しいのは気持ち。この本をプレゼントされること自体が、そんな気持ちを贈られること。それがうれしいんです」。

 

20161210-i01 (4)

「あたしとあなた」
谷川俊太郎(著)
ナナロク社 ¥2160

 

鈍色の布貼り上製本の上から、青・白・金の箔を押した工芸品のようなブックデザイン、開くと伝統的な越前和紙を活用して作られたブルーの中紙、そしてそこに一篇ずつ印字された短くも印象的な37篇の詩。「一貫して、“あたし”と“あなた”の距離感をはかるような詩が集まっています。詩が好きな人にはもちろん、初めて読む人にも贈りたい1冊ですね」。 “あなた”がいることで感じる“あたし”のひっそりとした孤独や喜びを、吟味したわずかな言葉で紡いでいる。

 

For.大人の恋愛をしたい人

20161210-i01 (5)

「まってる。」
セルジュ・ブロック(原著)
デヴィッド・カリ(著)
小山薫堂(訳)
千倉書房 ¥1620

 

ヨーロッパで異例のヒットを記録した『MOI, J’ATTENDS..』を放送作家・小山薫堂氏が翻訳した絵本。「“待つ”ことがテーマ。人生のさまざまな場面で“待つ”姿が描かれ、待つことの優しさや、待ってもらえることの尊さを感じられる、隠れた名作です。私も実際に何人もの方に贈って、喜ばれています」。本としては珍しい短冊のような判型のハードカバーに、中は物語の進行とともに赤い糸が延々と伸びるヴィジュアルが美しく、モノとしても魅力的だ。

 

20161210-i01 (6)

「冷静と情熱のあいだ Rosso/Blu」
江國香織/辻仁成(著)
角川書店 ¥562/¥518

 

時代の寵児とも呼ばれたふたりの作家が、ひとつの恋愛を“Rosso”=赤は女性目線から、“Blu”=青は男性目線からそれぞれ描いた1999年の作品。内容とともにその仕掛けも話題となった。「自分が女性なら“Rosso”から、男性なら“Blu”から読んでみてください。恋愛において、男性は意外にも女々しく、逆に女性は割り切っていて現実的。そんな男女の恋愛観の違いを実感できます」。平穏な幸せを手中にしながら、忘れられない過去の恋に心揺れるふたりの物語。

 

For.人生の伴侶を迎える人

20161210-i01 (7)

「愛する言葉」
岡本太郎・岡本敏子(著)
イースト・プレス ¥1080

 

「太陽の塔」で世界的に知られる芸術家・故岡本太郎氏と敏子夫人の、互いにかけた愛の言葉をピックアップし収録した。「芸術は爆発だ」など、名言を多数残した太郎氏ならではの機知に富んだ言葉と、それを包み込むような敏子夫人の言葉は、生々しくも暖かい。「一般的な日本人ではあり得ないような、熱い言葉が交わされています。まるで男女の仲さえも超越したような。結婚して、伴侶とのコミュニケーションに悩んだときにも、読んで欲しいと思います」。

 

20161210-i01 (8)

「愛すること(はじめての哲学)」
オスカー・ブルニフィエ(著)
ジャック・デプレ(イラスト)
藤田尊潮(訳)
世界文化社 ¥1620

 

世界19カ国で翻訳されている、人気の哲学シリーズ。これは“愛とは何か?”という哲学の基本テーマに迫ったもの。例えば“愛するとはけっして争わないこと”、一方で“すべての点で意見が合わなくても愛し合うことはできる”というように、見開きの左右に異なる視点で“愛”を捉えることで、本質をあぶり出そうとしている。「出会ったときの愛の形は、結婚するといずれ変わっていく。愛にはそもそも答えはなく、どちらも間違いではないと伝えています」。

 

For.小さな命を授かった人

20161210-i01 (9)

「ラヴ・ユー・フォーエバー」
ロバート・マンチ(著)
梅田俊作(イラスト)
乃木りか(訳)
岩崎書店 ¥1234

 

親子の絆を語り、全米で1200万人以上に読まれたほどの大反響を呼んだ。「生まれた子どもに歌を歌ってあげているうちに、子どもはどんどん大きくなって、じきにその手を離れて。さびしく思っているとやがて自分も年をとって、逆に子どもに歌を歌ってもらっている……そんな愛を受け継いでいくお話。愛を受け継ぐ=ラブ・ユー・フォーエバーです。子どもが生まれた人へ贈りたいですね」。絵本だが、子どもに読み聞かせるより、お母さん自身に読んで欲しい。

 

20161210-i01 (10)

「おなかの赤ちゃんとお話ししようよ」
葉祥明(著・イラスト)
リッキー・ニノミヤ(訳)
サンマーク出版 ¥1620

 

やがて生まれてくるわが子と自然に対話できるようになるために、妊娠中から“ふれあい”を意識できる“胎教”のための絵本。やさしいイラストにも癒される。「赤ちゃんを妊娠すると、お母さんは誰でも不安になるはず。そんなお母さんを、“ママ、感じる? ボクだよ。はなしかけてよ、やさしいこえで。”というように、赤ちゃんがまるでおなかの中から語りかけてくるような文章で癒し、勇気付けてくれるんです。妊娠中のお母さんに贈りたい絵本ですね」。

 

For.大切な誰かを失った人

20161210-i01 (11)

「さよならのあとで」
ヘンリー・スコット・ホランド(著)
高橋和枝(イラスト)
夏葉社 ¥1404

 

“ほほえみを忘れないで”など、この世を去った“私”から贈られる42行のメッセージの数々。イギリスの神学者による、美しい言葉が並ぶ。「実は、今回紹介した本の中でこれだけは、私がもらった側なんです。家族がなくなったときに。読んでその死の悲しさに号泣したのではなく、なんだか癒された感じがしたんですね。やさしい気持ちになって、ずっとそばにいると感じられた。亡くなった人からのメッセージであり、亡くなった人へのメッセージでもあると思うんです」。

 

20161210-i01 (12)

「あとに残された人へ 1000の風」
南風 椎(訳)
三五館 ¥1080

 

アメリカで話題となった作者不詳の詩『Do not stand at my grave and weep』を日本語訳。この詩は、映画や楽曲「千の風になって」にもなって日本でも広く知られることとなったが、その基となる詩はとてもシンプルで、よけい心に迫ってくる。「これを読むと、大事なひとの死はとてもつらいものだけれど、会えなくなってもいっしょにいられるのだと思えるはず。詩と関連した美しい情景写真が添えられていて、それにも心が洗われるような気持ちになります」。

 

取材・文=@Living編集部 撮影=田口陽介

 

Profile

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元木 忍

brisa libreria 代表取締役。大学卒業後、学研ホールディングスで書店営業やマーケティング、楽天ブックスではECサイト運営や物流、CCCでは電子書籍ビジネスの立ち上げと、一貫して書籍にかかわる仕事を担当。東日本大震災を機に人生を見直し、2013年、サロンを併設したブックカフェ brisa libreria を南青山に開業。オーガニックスパサロン spa madera も経営している。

 

【URL】

何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」

http://at-living.press