電気設備大手のパナソニック エレクトリックワークス社(以下、EW社)。同社は、コンセントなどの配線器具で国内8割以上のシェアを占めています。そのEW社がいま力を入れているのが、ソリューション開発です。
現在のEW社の主力商品は、コンセントや照明といった“モノ”。しかし今後は、電気設備を通した新しい体験を世にもたらす、ソリューションの拡充を目指しています。
その開発を加速するべく、EW社はR&D(研究開発)の新拠点「SHIOMER(シオメル)」を、東京・田町に開設しました。働きやすさやウェルビーイングに徹底的にこだわったそのオフィスが本格稼働するのを前に、内部が報道陣に公開されました。本稿では、こだわりが詰まったその最新オフィスの中身をお届けします。
「潮目」を読んで、産み、変える場所
SHIOMERの名前の由来は「潮目」です。潮目とは異なる海流がぶつかる場所のことで、ここには多くの魚が集まり、豊かな漁場となります。時代の潮目を読んで、産み、変える場所を目指して、SHIOMERは開設されました。
SHIOMERの機能は、照明などの電気設備を活用した新たなソリューションの開発や試験、さらには他社との共創。生産性を高めるため、働きやすさやウェルビーイングを追求したオフィス環境が整えられています。
EW社は、これまでにも、ウェルビーイングなオフィスを実現するソリューションを事業として展開してきました。こちらはそのノウハウを活かし、自社内で実践した形となります。その内部を見ていきましょう。
ウェルビーイングの国際的認証で最高位を取得するほどの快適性
SHIOMERの内部は、大きく4つのゾーンに区切られています。エンジニアが働く研究開発ゾーン、会話ができるコミュニケーションゾーン、疲れを癒すリフレッシュゾーン、黙々と作業をする集中ゾーンです。それぞれのゾーンには名称があり、たとえば研究開発ゾーンは「DOCK」、コミュニケーションゾーンは「OCEAN」、入り口のカフェカウンターは「PORT」と、港や海辺をイメージした名付けがされています。各ゾーンによって、照明や音環境が異なるため、個々人の好みやそのときの気分に合わせて、場所を選んで働けるようになっています。
SHIOMER全体の特徴として挙げられるのが、パナソニックが開発したオフィス設備・ソリューションがいたるところに導入されていること。たとえば「OCEAN」ゾーンの照明は、照明立地活用の新システム「LiBecoM」によって制御されていますし、天井からの風で温度ムラを防ぐ「スポット気流」が所々に配置されています。
また、心地よい音や照明で、誰もが快適に過ごせる空間であるセンサリールームを設置。入り口付近の「PORT」ゾーンには、照明器具でありながらも、文字を描いたり動きを表現できるマイクロLED照明が導入されています。会話が可能なゾーンには、コミュニケーションを促す次世代照明器具「ランターナ」が置かれていました。
このオフィスの快適性は科学的にも認められており、ウェルビーイングの国際的な認証基準である「WELL認証 v2」で、最高位のプラチナを取得しています。
他社との共創を進め、人材確保にも注力
パナソニックは、SHIOMERの開設にあたって、他社との共創、人材確保にも注力しており、オフィス内には、外部の人を招いてイベントができるスペースもあります。
また、ソリューション開発のためのソフトウェア技術者の採用にあたっては、2022年から2024年までの間に、150名の採用目標を設定。これを現時点で達成しており、今後も人数を増やしていきたいとしています。EW社の担当者によると、応募者にSHIOMERを見てもらうことによって、意欲を高めてもらいたいとのことです。
阪神甲子園球場や新国立競技場、東京スカイツリーのLED照明など、大きなプロジェクトを数多く手がけるEW社。今後も世間を驚かせるような同社の新たな技術開発に期待したいところです。