このところ、「paymo」や「LINE Pay」などに代表される、個人間での送金アプリが次々と発表されています。アメリカでは「Venmo」というアプリが流行っており、「Venmo me(あとでVenmoで送って)」なんて言葉が生まれているほどです。そんななか先日、大手金融機関であるSBIホールディングス及びSBI Ripple Asiaより、新たな送金アプリ「Money Tap」が発表されています。
Money Tapがこれまでの送金アプリと何が違うのか。最近よく耳にする「ブロックチェーン」とともに解説したいと思います。
金融機関を介さず取引できる「ブロックチェーン」の活用
「Money Tap」が他の送金アプリと最も大きく異なる点として「ブロックチェーン技術(分散型台帳技術)」を活用している点が挙げられます。「ブロックチェーン」は昨年から盛り上がりを見せたビットコインなどに代表される仮想通貨で用いられている技術です。
そもそもブロックチェーンとは、いつ誰によって開発され、どういう仕組み・特徴を持つ技術なのでしょうか。その歴史は2008年10月、サトシナカモトという人物(実は、人物なのか団体なのか、未だに正体は不明なのですが…)によって発表された「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」という論文に遡ります。
この論文には金融機関などの第三者機関を通さずに低コストで取引できる「ブロックチェーン」という仕組みについて書かれています。「ブロックチェーン」の仕組みは、”ブロック”というデータの単位が1つ前のブロックのハッシュ値(圧縮値)を含みながら”チェーン”のように連なることを特徴とする技術です。
また、第三者機関を通さないということで中央にサーバーを置くクライアント・サーバー方式ではなく、「分散型台帳技術」とも称されるようにP2P方式を用いています。
つまりこうした仕組みによって、ブロックチェーンは主に…
①不正取引・改ざんができない
②システムダウンに強い
③運用コストが安い
という3つの特徴を備えています。
こうした技術は、仮想通貨以外の分野でも注目されており、
注:ブロックチェーンと分散型台帳技術は厳密には定義が異なりますが、ここでは便宜上、同一のものとして扱わせていただきます。
Money TapはSBIホールディングスとSBI Ripple Asiaより発表されています。SBI Ripple Asiaは日本及びアジアにおける「価値のインターネット」を実現することを目指して、2016年にSBIホールディングスと米Ripple社が出資して設立された会社です。Ripple社はRipple(XRP)という仮想通貨で有名ですね。マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツのゲイツ財団と提携したことでも話題になりました。
Money Tapが接続する「RCクラウド2.0」システムはRipple社が開発しています。また、SBI Ripple Asiaは「内外為替一元化コンソーシアム」と称し、日本国内63行(2018年3月時点)が参加するコンソーシアムの事務局も務めています。
冒頭に述べたように、個人間送金アプリは既に数多のフィンテック企業などがサービスを提供していますが、複数の銀行が主体的に提供するサービスとしては本邦初となります。「内外為替一元化コンソーシアム」参加行のうち、往信SBIネット銀行、スルガ銀行、りそな銀行の3行が先行商用化行として、夏以降に一般公開することを予定しています。また、Money Tapサービス対応銀行は順次増加していく予定とのことです。
大手金融機関の参加、ブロックチェーン技術、これらを組み合わせることで安全・リアルタイムかつ快適に個人間送金を行える「Money Tap」は、個人間送金アプリのスタンダードになる可能性を秘めているといえます。
最後に、先行して少し説明を受けることができたMoney tapの紹介をして締めたいと思います。
Money tapの登場によって、よりシームレスな送金が可能となっていくと思います。ブロック・チェーンと共に解説しましたが、まずは運用が始まる今夏からでも是非活用してみてはいかがでしょうか。