自分は会話上手だと思っている人はごくごく少数派。ビジネスマンの大半は会話下手で悩んでいるのではないだろうか。初対面の相手には緊張して言葉が出ない、誰に対しても話題に困る、会話途中の沈黙が怖い、プレゼンはどうも苦手だ……などなど、悩みは尽きないはず。
『10倍成果が上がる! 話し方の極意』(仕事の教科書編集部・編集/学研プラス・刊)は、それらの悩みを一挙に解決してくれるビジネスマンのための教科書だ。
本書のアドバイザーのひとりで商品開発・経営コンサルタントの美崎栄一郎氏は、仕事とは価値を伝えることだという。「いかに短い時間で価値を伝えられるか」が重要な課題となるのだ。
会話は知識と経験で上手になっていきます。本書にある会話やコミュニケーション、プレゼンなどのノウハウを取り入れて、積み重ねてきた苦労を上手に価値につなげるヒントを見つけてみてください。
(『10倍成果が上がる! 話し方の極意』から引用)
では、さっそく気になる内容をいくつか紹介してみよう。
会話編/会話上手の3本の柱は「聞く」「話す」「質問する」
「話し上手」とは流暢に話すことではないそうだ。明治大学教授の齋藤孝さんによると、世の中には話したがりのほうが圧倒的に多いけれども、人が集まるのは聞き上手な人のほうだという。
「相手の話を再生できるくらいきちんと聞いていますか? 会話を要約してポイントを落とさず再生して、繰り返し話せるくらいでなければ聞いたとはいえません」
(『10倍成果が上がる! 話し方の極意』から引用)
再生して話せるくらい聞けば、ビジネス相手も喜び、同時にポイントを要約することで自身の話す力も身についていくものだそうだ。ただし、黙って聞いているだけではだめで、聞ける能力を相手に示す必要もある。たとえば、「そうなんですね。もっと聞かせてもらえますか」と、相手にゆだねる。「今、おっしゃったことって○○ということでしょうか」と、アクティブに聞く。「その発想は思いつきませんでした。○○さんならではですね!」と、キャラクターをつかむなど、この本には聞き上手になれる実践テクニックが紹介されている。
また齋藤さんは、「話す」ときは、自分のことばかり話しても会話は弾まないので、相手との接点を探って、共通の話題を見つけるといいという。そのとき雑談は、だらだら話さずポイントをまとめて話すこと。また、否定から入らないことも重要だそうだ。
そして、どんどん話題を広げるのが「質問力」だ。たとえば、取引先の人とタクシーで2人きり。さあ、何を話したらよいのだろう? これに対し齋藤さんは、
「まずは向こうに教えを乞うつもりで質問してみましょう。共通の話題を踏まえつつ、相手の話を引き出すことです。(中略)相手が身につけているものを話題にするのもよいですね。つまり相手本位の話になるように持っていけばよいわけです」
(『10倍成果が上がる! 話し方の極意』から引用)
会話編では、この他にも、沈黙を味方にする方法、リアクションの技術、気遣い、褒め方など、知っておきたい会話テクニックが満載だ。
伝え方編/わかりやすさの3点セットとは?
経済ジャーナリストの木暮太一さんによると、日本人は伝えるトレーニングをしないまま大人になってしまっているという。学生時代に伝えることを教わらずに社会人になるため、ビジネスの現場で伝わらないことに対してストレスをためていく人が多いという。
わかりやすく伝えるためにはどうしたらいいか、と考えました。ひとつは複雑な構造を整理してシンプルにすること。もうひとつは難しい言葉をやさしい言葉に置き換えること。そして、自分の話に興味を持ってもらえるように工夫すること。これを『わかりやすさの3点セット』と呼んでいます。
(『10倍成果が上がる! 話し方の極意』から引用)
木暮さんによるとこの3つを実践すれば、どんな話もわかりやすく伝えることができるようになるそうだ。伝えるときのチェックポイントは、「誰に」、「何を(結論)」、「その理由」を明確にすること。必ず結論を先に伝え、そのあとに理由を述べるようにすれば、わかりにくさを排除できるそうだ。
この項では、詳しい実践テクニックが紹介されているので、読めば、伝わらない悩みは解消されるだろう。
この他、伝え方編では、話し方のプロフェッショナルともいえるアドバイザーたちによる、交渉、依頼、謝る、断る、反論するなどのあらゆる場面での「伝えるテクニック」が受け答え実例と共に解説されているので、とても役に立つ。
プレゼン編/プレゼンの成功は名刺交換からはじまる
そして、「プレゼンはどうも苦手だ」と思っている人ぜひ読んでほしいのがこの章だ。前出の経営コンサルタントの美崎さんは、「プレゼンは聴衆が聞きたくて聞いているものではないことを理解しましょう」と言っている。そして、「自分に興味を持たない人が、こちらの味方になってくれること。それがプレゼンの本当の目的です」と。
プレゼンを成功させるには事前準備を徹底することが必須だが、あまり構えすぎてもいけないという。
「毎日のように行われる名刺交換だって、自分を売り込むための立派なプレゼンです。まずは、日々の名刺交換から意識して、相手の印象に残るようなやりかたをしてみましょう。大会場のプレゼンもその延長線上にあるのです」
(『10倍成果が上がる! 話し方の極意』から引用)
美崎さんによるとプレゼンを成功させるには4つのポイントがあるそうだ。
1 コンセプトを決める
2 構成と展開をマスターする
3 説得力のある話し方を身につける
4 相手を夢中にさせるテクニック
この項では展開例とともに、詳しい解説があるので、すぐに実践に生かせるだろう。プレゼン編では、他のアドバイザーたちによるプレゼンの極意の数々も必見。
さらに本書には、ビジネス常識編もあり、ビジネスマンとしての基本常識の再チェックから、敬語・言葉遣いのマナー、電話対応のコツ、ビジネス文書の書き方、ビジネスメールの書き方も、紹介されている。
デスクに常に置いておきたい一冊になること間違いなしだ。
【書籍紹介】
10倍成果が上がる!話し方の極意
著者:仕事の教科書編集部(編)
発行:学研プラス
ビジネスパーソンの悩みを一気に解決する「話し方の極意」が満載。会話の基本から、「交渉・説得」「依頼」「断り方」「謝り方」「反論」の実例までプロがアドバイス。名刺交換、電話対応、社内文書など、「いまさら聞けないビジネス常識マニュアル」も特集。
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