続く「町中華」と続かない新規ラーメン店
――昔ながらの町の中華料理屋さんはどうやって成り立っているのでしょうか?
木下 町の中華料理屋さんが続いている一番の理由は、人件費が安く済むからでしょうね。その多くは家族経営かつ地域密着型であるため、ランニングコストが見込みやすいんです。だから、町中華は成り立っているのだと思います。
いまの時代に飲食店を始めようと思ったとき、まず壁になるのが人件費です。近年、アルバイトの賃金が高くなっているうえ、せっかく人を雇ったとしても定着率は不安定。アルバイトは何かあるとすぐに辞めてしまいます。「スタッフが辞めないように、接客をマニュアル化して、待遇もよくする」という考え方もありますが、ただでさえ初期投資のリスクがかさんでいるところに、このような負担はかけられません。特に開店当初は、来るか来ないかわからないお客さんのために、スタッフを常に抱え、給料を支払うということは、かなり難しいと思います。
――「ラーメンが大好きだから、ラーメン屋を始めた」というケースもありますが……
木下 残念ですが、「好き」だけではお店を続けられないのが現実です。ラーメンにも流行り廃りがあります。あるラーメンが大当りしても、長くは続きません。飽きられるのが早いからです。数年後にはそのジャンルのラーメンが廃れてしまうことだってあります。
また、自分で開発したラーメンが当たると、必ず大資本が同じジャンルのラーメンを展開します。そうなると、トップにのし上がることはまず難しいんです。
フランチャイズは比較的ローリスクだが……
――定年退職後や老後に飲食店を夫婦で始める方もいらっしゃいますね。
木下 あくまでも「趣味」としてやる分ならいいと思います。つまり、「赤字され出さなければいいんだ」という考えです。しかし、その飲食店で利益を追求するとなると、あまりオススメできません。
定年退職後にどうしても飲食業界での独立・開業をしたいと考えるなら、まだリスクが低いフランチャイズがよいと思います。フランチャイズとは、本部が加盟店に特定の地域において、その看板を使って商売することを許し、加盟店(オーナー店)がその対価としてロイヤルティを支払うシステムのこと。よくラーメン屋さんのチェーン店なども「オーナー募集。開業資金さえ出してくれれば、場所も提供し、メニュー、食材も全部提供します」と言って募集していますよね。
まず、すでに知名度のある飲食チェーンだと、集客がしやすいというメリットがあります。ブランドが持つ信用力に加えて、商品ラインナップもすでに定着しているものだったり、他店舗で人気があるものだったり。経営者は商品開発について頭を悩まさなくていいわけです。
ただし、フランチャイズは加盟店がロイヤリティを本部に支払うシステムですから、実際の利幅がかなり少なくなります。スタッフ確保と人件費の問題も、個人での開業同様に大変です。
さらに、本部の判断はシビアです。フランチャイズの場合、営業は本部がすべて管理していますが、売り上げが落ち込んだとき、オーナーが「もう少し粘りたい」と思っても、本部の判断で撤退・閉店を言い渡されることがあります。本部は自分たちの看板に傷がつくのはイヤですし、オーナー店から看板料や指導料の回収も薄い場合、すぐに打ち切ることがあるんですね。
――フランチャイズの場合、開業資金はいくら必要でしょうか?
木下 やっぱり500万円くらいでしょうね。200万円くらいは最初に本部がロイヤリティとして持っていきます。
個人経営店とフランチャイズは開業時、同じくらいの資金が必要になるわけですが、後者は膨大なデータや商品開発、認知度などがありますから、そういった点で前者よりもリスクが低く、「老後にやる」という意味でもよいのではないかと思います。
まとめ
存続することが難しい飲食業界。個人経営店はコストが高く、利益を生み出しにくい構造になっていることがわかりました。独立開業を計画するときは、情熱を燃やすだけではなく、様々なリスクについて冷静に考えることが大切でしょう。後編では、飲食業界で生き残っていくための具体的な方法やアイデアをご紹介します。