ビジネス
スタートアップ
2016/9/12 19:00

月間2000万ユーザーまで拡大中! グルメサイト「Retty」の野望と“食べ尽くすカルチャー”とは?

「五反田スタートアップ」第3回「Retty株式会社」

 

おいしいものを食べたい、大切な人との食事に使いたいーーさまざまなシーンで、お店を選ぶ必要が出てきたとき、信頼の置ける人に相談し、おすすめの店に行くということがある。それをネット上で実現しているのが実名口コミグルメサイト「Retty(レッティ)」だ。7月28日には約11億円の資金調達をし、月間ユーザー数が2000万人に達している。

 

五反田にオフィスを構える企業にフォーカスし、事業や地域についてインタビューしていく「五反田スタートアップ」連載第3回目は、Retty株式会社のCEO・武田和也氏に話を伺った。

 

【会社概要編】世界をリードし、新しい価値を提供できる分野として選んだ食文化

――今回はGetNavi webで連載中の「五反田スタートアップ」ということでお話を伺っていきたいと思います。

Retty株式会社CEO・武田和也氏(以下:武田) ぼくはここが五反田だと思っていないんですけどね(笑)。

注:Rettyのオフィスは「品川区東五反田3-20-14」にあり、五反田/大崎/高輪台の中間地点にある

 

――(笑)。まずは、月間ユーザー数2000万人達成、おめでとうございます。ユーザー数がこれだけ多くなった実名口コミグルメサイト「Retty」を立ち上げられたきっかけを教えていただけますか?

武田 元々起業したいという思いがあったため、ネットエイジという会社を3年で辞め、考えるために米・サンフランシスコに行きました。

↑Retty株式会社CEO・武田和也氏
↑Retty株式会社CEO・武田和也氏

 

起業はいわば“山”。「人生の半分をかけて登る山」というのは孫 正義さんの言葉ですが、登るのであれば小さい山より大きいほうがいい。何を事業として選ぶかが重要だ、ということを学生時代や社会人時代の経験から痛感していたんです。それで、じっくり考えるために約1年ほどサンフランシスコに滞在してみたんです。

 

そこで再認識させられたのは、インターネットの領域では常にアメリカのほうが日本の半年先を進んでいるということ。そんな中で「日本が新しい価値観を世界に示し、リードできる領域って何があるだろう?」と考えました。ゲーム、食べ物、アニメーー。これらは日本のユーザーレベルが高く、世界に発信していける分野です。ただ、ゲームやアニメはあまり自分らしくないなと感じ、食を選びました。

 

おいしいものって、シンプルに人を幸せにしますよね。どうせ自分が人生をかけて携わるのであれば、世界をリードでき、かつ自信を持って人を幸せにしていけるものをやりたい。それで、「お店探しの役に立つメディアを作ろう」と思ったのがきっかけです。

 ↑オフィス入り口に掲げられた標語「食を通じて世界中の人々をHAPPYに」
↑オフィス入り口に掲げられた標語「食を通じて世界中の人々をHAPPYに」

 

――サービスをローンチされたのが2011年5月31日でしたよね。やりたいことが見つかった後、ローンチまで順調でしたか?

武田 2010年末に帰国し、事業を立ち上げようとしたけれどエンジニアも誰もいない状態で始めました。そのため、人探しからはじめ、みんなで勉強をし、試行錯誤しながらサイトを作ったという経緯があります。

 

また、「実名クチコミ」ですから、クチコミを投稿してくださるユーザーさんがいなければサービスは提供できません。そこで立ち上げから2、3年は投稿してくださるユーザーさんを増やすことに注力していました。その後、徐々にwebでの展開を強めたりしながらユーザー数が増えてきました。

 

――Rettyではクチコミが「実名」ですよね。ユーザーが増えるまでの間、投稿を知人に呼びかけたりされたのですか?

武田 ごく初期にはそういうこともありましたが、「Retty Night」というオフ会イベントなどを通じて増えていったように思います。いわゆる、アーリーアダプターな方々にも気に入っていただき、サービスローンチしてから2か月後の8月に第1回目を開催したところ、大勢の方が来てくださいました。

 

六本木からはじめて、その後全国のあちこちで開催してきて、直近では、7月17日に「Retty 5周年」ということで盛大にやらせてもらいました。Rettyで出会ったユーザーさんたちが自主的に飲み会を開き、交流されている方も多々いらっしゃるので、そういうつながりに貢献できたというのは純粋に嬉しいですよね。

↑トップユーザーのみが参加できる「Retty Night」。5周年の今回は7月に開催された
↑Rettyを長くご愛顧いただいている一部ユーザーを対象に開催した「Retty Night」。5周年の今回は7月に開催された

 

――そして、立ち上げからわずか5年で月間ユーザー数が2000万。

武田 そういうことになりますね。とはいえ、本格的にビジネスが始動したのはここ1年半といったところですが。

 

――ところで、サービス自体は無料で使えるわけですが、マネタイズはどのようになっていますか?

武田 展開しているビジネスは大きくわけて2つあり、1つは飲食店向けの集客支援。もう1つはナショナルクライアント、つまり大手の広告主と連携して、商品認知を高めるというビジネスです。これで半々の比率になっています。

 

 

【五反田企業編】オフィス周辺を「食べ尽くす」

――それでは、五反田企業編の質問に入っていきますね。この地にオフィスを構えられた理由を教えていただけますか?

武田 うーん、五反田には構えていないかなぁ。だってこのビル名「高輪パークタワー」ですからね、ここは高輪ですよ(笑)。

編集部 広い意味で五反田地域ですよね!?

武田 ふふ、そうですね。実はぼくたちのオフィスは、創業してからずっと1年に1回以上移転しているんです。「オフィス周辺を食べ尽くす」と引っ越す、という。創業は赤坂で、その後新宿三丁目、六本木、築地、恵比寿、また恵比寿ときました。次はその周辺かなぁと思っていたんですが、ある程度の広さでコストが安く、条件に合うのがこの高輪だった、ということなんですよ。

 

知る人ぞ知る隠れ家的飲食店がクチコミで広がっていくという共通点

――この五反田のキャラクターについてはどういう印象を持っていますか?

武田 渋い店が多いですね。「食堂とだか」とか。料理がおいしくアットホームな雰囲気のお店が多いように感じますね。それでいて、あまりほかの人たちに知られていない、常連さんたちに愛されて支えられている渋いお店が多い。Rettyもそんなお店をクチコミで広げていくような世界観が側面としてあるので、そういう点でいうと面白いところだなぁと感じています。

↑五反田との共通点は「おいしい隠れ家的なお店を口コミで広げていくところ」
↑五反田との共通点は「おいしい隠れ家的なお店をクチコミで広げていくところ」

――立場的に挙げていただくのは難しいかもしれませんが、武田さんのお好きな飲食店を教えていただいてもいいですか?

武田 好きなのはさっき出てきた「食堂とだか」ですね。ぼくはRettyの中で焼き肉担当なんですが、“肉くくり”でいえば「あげ福」というとんかつ屋もいいですね。あと、ここから10分ほど歩いたところにある餃子の「壇太」がすごくいいんですよ。「小泉純一郎が愛した餃子」っていうキャッチーなキーワードで紹介されるお店です。

 

――えぇと……、高輪?

武田 高輪台ですねぇ。ここが何を食べてもおいしいんですよ。

 

――ところで、五反田周辺の食べ尽くし度はどのくらいの割合でしょうか?

武田 食べ尽くしパーセンテージでいえばほとんどですね。

 

――では、もう次の移転先を決めていらっしゃるとか?

武田 まだ「ここ」というのは決めていないんですよね。今まで行っていなくてそれなりの外食の規模があるところって……、なかなかないんですよね。

 

――この五反田でコラボレーションしたい企業がもしあれば教えていただけますか?

武田 実はこれが思いつかないんですよね。なので、もしコラボしたいという企業があればリクエストをお待ちしています!

 

――ありがとうございます(笑)。では、最後になりますが、今後のビジョンについてお聞かせください。

武田 本格的にビジネスが始動したのが1年半前なので、まずは収益をちゃんと上げていきたいですね。あと、最も間近な目標としては、「年内に月間ユーザー3000万」。長期的には、日本の食という分野で世界に対して新しい価値を作っていくのがテーマなので、「海外展開でユーザー1億人」というのが2020年までの目標になっています。

 

いままでだと、リアルな人と人とのつながりの中で「食の好みの合うあの人のおすすめする店だから、自分も行ってみたい」というのがありましたよね。ぼくらはそれをネットの世界でやっていきたいんです。以前に比べてSNSが普及したこともあり、ネットの情報は人に依存するようになってきました。「あの人の伝えている情報だから信頼できる」と。同じようなことを食の分野で、世界規模でできるようにして、新しい価値観を浸透させていきたい、と考えています。

 

クチコミが「実名」であるというのは、そういうところで生きてくる。信頼できる人がおすすめするから行ってみる。これまで行かなかった、または自分一人では見つけられなかったお店にも行けるようになる。そうやっておいしいものを食べることで、みんなが幸せになれればなぁというのが、ぼくたちの願いです。

↑「ネット上でも信頼できる人のクチコミからおいしい店を見いだす、という新しい価値観を作ることで、みんながHAPPYになってくれればいいですね」と武田氏