iPhoneの最新モデルであるiPhone 7/7 Plus、およびApple Watch Series2がついに非接触型のICカード技術「FeliCa」に対応。これにより、日本でも同社の電子決済サービス「Apple Pay」が利用可能になった。そこで本サイトでは、いま注目のApple Payの解説をクレジットカード評論家の岩田昭男さんに依頼。前編では日本でのApple Pay導入の経緯とアップルの戦略について話を聞いた。後編では、実際の使い方とApple Pay利用における注意点を聞いていこう。
【解説してくれる人】
クレジットカード評論家
岩田昭男さん
20年以上にわたってクレジットカード、電子マネーの取材・研究に携わるスペシャリスト。独自の情報網を持ち、最新のApple Pay 事情に精通している。現在発売中の「絶対トクする! クレジットカード最強ガイド 2016Winter」(740円+税/学研プラス)の監修も務める。
カメラを使ったApple Payの設定は驚くほどカンタン!
--まずは、Apple Payを使う前の設定方法を教えてください。
岩田 最初に言っておきたいのは、Apple Payの設定は驚くほど簡単だということです。iPhone 7にはApple Payがプリインストールされています。必要なのは電子マネーのiDやQUICPayの引き落とし先となるクレジットカードの登録ですが、これはiPhone 7に搭載のiSightカメラでカードの券面を撮影し、カード裏面のセキュリティコードを入力するだけ。撮影画像からカード番号や有効期限、名前を取得して、自動的に登録します。カード会社への届け出も必要ありません。また、複数のクレジットカードを登録することも可能です(その場合は、iDやQUICPayに紐付けするカードを指定する必要あり)。Suicaの場合はさらに簡単で、iPhone 7をSuicaのカードの上に置くだけで、自動的にカード情報がiPhone 7に移行し、画面にSuicaの券面が現れます。ちなみに、移行したあとのSuicaカードは無効化され、使えなくなるのでご注意を。「ビュー・スイカ」カードやビックカメラSUicaカードなど、Suica一体型のクレジットカードを登録する方法は、現在ビュー・カードからのアナウンス待ちの状態です。
--登録手続きがかなり簡略化されているのは画期的ですね! では登録後、実際に使うにはどうすればいいんでしょう?
岩田 まず、カードに紐付けされている電子マネーの種類によって、レジ前で「iDで」「QUICPayで」「Suicaで」と店員さんに伝えます。次にTouch IDに指を置いたままレジの専用端末にiPhone 7をかざす(Apple Watch 2の場合はサイドボタンをダブルクリックする)と、支払いが終了します。指紋認証をしながら決済するからセキュリティも万全。支払いの際に、本体ロックを解除したり、専用アプリを起動しておく必要はありません」
--Suicaで駅の改札を通るとき、Touch IDを押しながら端末にタッチするのは不便ではないですか?
岩田 Suicaの場合は、Touch IDを押さなくても本体をかざすだけで決済できるようになっています。iPhone 7がスリープの状態でももちろん決済可能。ちなみにSuicaが使えるコンビニなら、Touch IDを押さずに支払いを行うことができ、さらに手軽です。ちなみに、Apple Watch Series2のSuicaで駅の改札を入るとき、少々問題があります。時計はだいたい左腕に巻いているものですが、Suicaのタッチパネルは右側。タッチするのに身体をひねらねばなりません。これが苦痛ですね。タッチパネルを左側にも作るか、右腕に時計を巻かないといけません。
--SuicaをApple Payに移行するとSuicaカードが使えなくなるとのことですが、チャージはどうやって行うんですか?
岩田 Apple Payの操作でスマホ上で簡単に行えます。電車に乗って残高が足りなくなった場合も、車内ですぐにチャージできて便利。また、定期券の更新もApple Pay内で手軽に手続きできます。オートチャージに関しては、これもビュー・カードのアナウンス待ちですね。
--Apple Payの日本での運用開始は、「iPhoneでおサイフケータイが使えないのが残念」と言っていた人には、待ちに待ったニュース。これでAndroidからの乗り換えや、iPhoneユーザーの中でも最新機種に乗り換える人も多いと思います。
岩田 ただ、Apple Payを使うためにiPhone 7に乗り換えよう、という人は、いくつか注意しておくべきポイントがあります。ひとつは、現状Apple Payに対応しているカードと対応していないカードがあること。例えば、楽天カードやREXカードなどのジャックス系のカードはiDやQUICPayに対応していないこともあり、現在はApple Payが使えません。また、カードがiDやQUICPayに対応していても、Apple Payが使えない場合があるなど、「使える」「使えない」の線引きが複雑化し、混乱しています。Apple Pay対応に関しては、10月末に各カード会社から正式アナウンスがあるので、それを待ったほうがいいかもしれませんね。
さらに国際ブランドでは、JCBとMasterCard、American Expressは対応していますが、VISAが完全には対応していないのが問題。正確には、iDやQUICPayを使ったリアル店舗での買い物には使えますが、VISAのネットシステムがApple Payに未対応のために、ネットショッピングやアプリ購入に使えません。また、同じくネット未対応のせいで、Suicaにチャージできない、つまり現状Suicaが使えない、というのも大きな問題。このため、同じカードユーザーでも、国際ブランドがVISAの場合は、ブランドをJCBかMasterCardに変更する必要が出てきます。
--それはかなり面倒な手続きですね。
岩田 いずれにしても、ユーザーは自分のカードがApple Payに対応しているか調べて、対応していなければ、ほかのカードに乗り換える必要があるわけです。
Apple Pay利用でオススメカードはこの3つ
--そんななかで「Apple Payでの利用にオススメのクレジットカード」というと、どんなカードが挙げられますか?
岩田 Suica系のなかから選ぶなら、「ビュー・スイカ」カードですね。JR東日本の窓口でのチケットや定期券購入(更新)、Suicaチャージなどで通常の3倍のビューサンクスポイントが貯まります。
QUICPayと結びつきが強いカード会社はJCBやトヨタファイナンスなどがありますが、JCBがQUICPayの開発元だけに、オススメはJCB ORIGINAL SERIES。JCB会員専用の「MyJCBアプリ」がApple Payと連携し、アプリ経由でポイント交換が簡単に行えるなど、利便性も高いです。
一方iDの場合は、開発元であるNTTドコモと三井住友カードとの結びつきが強いですが、特にポイント還元率が1%の高還元率で、ローソンでの3%割引など、各加盟店ごとの特典も適用されるNTTドコモのdカードは魅力的です。これらのカードの発行元はApple Payとの連携をいち早く進めてきただけに、他のカードに比べて有利な立場にあるといえ、今後ポイント以外にもいろいろなサービスの提供が期待できます。
--Apple Payを利用したい人で、現在使っているクレジットカードが対応していない場合は、対応しているカードのなかでもポイント還元率がいいものなどを探してみるのもいいかもしれませんね。
岩田 本来は共通ポイントのように、Apple Payの利用でポイントが付けばいいんですけどね。でも、アップルはそれはやらないだろうな。安易にその手の“おトク”アピールに走らないところが、アップルのいいところでもある。そういう哲学に惚れている人が、日本人にも多いですからね。