令和の世になって、普及が進むLED照明。しかしいまだ、蛍光灯が至る所に残っているのも実情です。LED照明は省電力効果が大きいことから、導入費用をその後の電気代の値下がり分でペイできるとはいっても、改修にかかる初期費用そのものは決して安くありません。その捻出が難しい店舗などの施設では、LED照明の導入に踏み切れないというケースがまだまだあるのです。
そこで注目されているのが、「機能提供型」LED照明。これはLED照明のサブスクといえそうなもので、単に照明器具という“モノ”貸し出す形態ではなく、適切な照明空間の実現という“機能”を提供しているという点が特徴です。その活用例を取材しました。
照明空間の設計・導入からメンテナンスまでを月額でサポート
機能提供型LED照明のサービスを行なっているのは、パナソニック エレクトリックワークス社。カーボンニュートラル社会の実現に向けて、メーカーの立場から注力している同社は、LED照明の導入障壁を下げるためのひとつの手段として、このサービスを開始しました。
その特徴は、設計・導入・利用・メンテナンスと、LED照明の導入から運用におけるすべてのフェーズを、月額費用でサポートしていること。いわゆるレンタルやリースの場合、借主の意思で器具を選び、施工者へ依頼することになりますが、機能提供型の場合は、すべてをプロに任せられます。導入する照明器具の種類は、施主が望む空間デザインや省エネ効果に基づいて、パナソニックの担当者が設計します。
機能提供型LED照明の契約期間は7年。契約満了時には再契約を行います。再契約時には照明環境を再度設計し、機材も入れ替える改修を実行。契約期間を7年としている理由には、約4万時間とされているLEDの定格寿命が関係しています。
というのも、照明を1日15時間点灯させ、7年間毎日使用した場合、おおよそ4万時間に到達するのです。機能提供型LED照明の導入先は、主にスーパーなどの商業施設であるため、長い点灯時間を想定しています。
北海道内のスーパー108店舗への導入を皮切りに、全国へ
機能提供型LED照明を導入している企業のひとつが、北海道の生活協同組合・コープさっぽろ。道内に108の店舗を展開する同組合では、初期費用の兼ね合いでLED照明の導入が遅れていたといいます。店舗が多数あるうえ、特定の株主を持たず組合員から集めた組合費で運営しているという事情もあって、一度に巨額の設備投資をすることが難しかったそうです。
かつて他社の安価なLED照明を導入したこともあったという同組合ですが、それが早期に壊れてしまったという経験もあって、パナソニックの機能提供型LED照明を採用するに至りました。
同サービスによって改修を行なったコープさっぽろのそうえん店では、パナソニックが誇る多彩なLED照明器具が導入されています。売り場全体に設置されたベースライトとしては、LED一体型ベースライト・iDシリーズ、生鮮食品売り場には商品の彩りを際立たせる彩光色のスポットライト。温もりのある間接照明が設置されたエントランスや、夜間でも力強く駐車場を照らすLED投光器の導入も、機能提供型LED照明の一環に含まれています。
全体的に明るい印象を受けるそうえん店の店内ですが、コープさっぽろの開発本部長・村上伸吾さんによれば、以前には節電で明るさを落としていた時期もあったそう。しかし機能提供型LED照明を導入した際に、現在のような明るい照明を導入しました。その裏にはパナソニックからの「利用者に高齢者が多いので、売り場を明るくして商品が見えやすくしたほうがいいのではないか」という提案があったといいます。
さて、機能提供型サービスの長所を紹介しましたが、やはり気になるのはコストでしょう。同サービスの営業を担当するパナソニックの馬杉道裕さんによると「機材・工事費用を含む一括購入費用が2000万円の事例を想定した場合、機能提供型LED照明の月々の支払いは35万円程度になる」そうです。契約は7年なので、費用の総計としては一括購入より割高になりますが、自然故障はもちろん、火災・水害などの災害による故障をカバーする保険も付帯。
コープさっぽろのケースでは、同組合の要望によって地震保険の特約も契約に含めています。村上さんは「生活協同組合という組織の都合上、損は出せない。故障などの不確定要素を排除できるのは助かっている」と語ります。
コープさっぽろが運営する、道内108店舗のうち、機能提供型LED照明を契約しているのは78店舗。今後、全店舗に拡大する見込みです。パナソニックも、この事例を足がかりに、機能提供型LED照明の全国展開を目指しています。あなたのお近くの施設の照明がガラッと入れ替わったら……その裏にはこのサービスが導入されているかもしれません。