ライフスタイル
2023/2/23 11:00

パナソニックの「ショウルームオフィス」から見た、LED照明の現在地

2000年代に登場したLED照明は、省エネ性を武器に、広く普及してきました。そのLED照明は現代においてさらなる進化を遂げており、元来の強みであった省エネ性の向上はもちろん、室内空間の快適化を後押しする存在になっています。オフィス向けLED照明器具を扱うパナソニック エレクトリックワークス社に、その進歩のほどを取材しました。

 

LED照明の進化の象徴。一体型ベースライト「iDシリーズ」

パナソニックが初めてLED照明を発売したのは、2002年のこと。そののち、2010年には直管型LED照明の発売に至りました。しかし直管型LEDの黎明期は、従来使われていた口金とLED照明の相性が悪いケースがあるなど、適切な使用がなされなかったことも多かったといいます。そこで同社では「蛍光灯照明をLEDに交換するときは、ライトだけでなく、器具を丸ごと交換する」ことを推奨してきました。

↑直管型照明

 

そこで2012年に開発されたのが、LED照明「iDシリーズ」でした。本シリーズは、LEDライトを照明器具と一体化した「一体型LEDベースライト」です。ベースライトとは、オフィス、学校、病院、ホールなどの施設で使われる、部屋全体を均一に明るく照らす目的で使われる照明のこと。私たちの生活のあらゆるところで、ベースライトは使われています。

↑iDシリーズの各製品。モデルによる差こそありますが、どれも直管型とは形状が異なっています

 

iDシリーズに代表される一体型ベースライトは、すでに広く普及しています。iDシリーズは発売から10周年を迎えた2022年、累計販売台数5000万台を達成。またこの10年の間に同シリーズは進化を続けており、たとえば高効率モデルでは、2012年モデルと比べて消費エネルギー効率を4割以上も向上させています。

 

ほかにも、設置工事の施工を簡易化するための改良を行なったり、無線での調光が可能な機種や自然光により近い光を放つ映光色モデルなどを発売したりしてきました。iDシリーズをはじめとしたLED照明は、より省エネで、より快適な空間を作れるよう、着実な歩みを続けてきたのです。

↑蛍光灯(左)と最新のiDシリーズ(右)による、消費電力の違いの展示。現在のiDシリーズは蛍光灯に比べて60%以上も消費電力が少ないため、改修費用を数年でペイできます

 

↑パナソニックが開発している照明は、iDシリーズだけではありません。目的にあわせた多彩なラインナップを揃えています

 

LED照明の現在地を体感できる「ショウルームオフィス」

しかし、進化した照明の良さをユーザーに伝えるには、文面や写真だけでは難しいものがあります。肉眼で見ないと、最新の照明の本当の良さがわからないケースが多々あるのは、筆者も日頃の取材で実感していることです。

 

そこで同社は、新潟工場に併設されているオフィスを、照明空間の「ショウルームオフィス」としてリニューアルしました。このショウルームオフィスには、iDシリーズはもちろん、省エネ性と快適性を両立させる最新のLED照明が多く用いられています。新たな照明器具の導入を考えている人たちのために、最新のLED照明を導入するとどんな空間が実現できるのか、体感できるようにしたのです。

↑ショウルームオフィスの内部。ショウルームとしての機能を持ちつつも、あくまでもオフィスであるため、同社の社員が普通に働いています

 

ショウルームオフィスは、異なる特徴を持った6つのエリアから構成されています。入り口付近の「明るさ×電力 比較体感エリア」では、照度ごとの見え方・印象の違いを、300ルクス〜1000ルクスの範囲で体感できます。

↑ショウルームオフィスを構成する6つのエリア

 

これまでのオフィス照明は、机上面の照度が750ルクスになるよう設計されることが主流でした。しかし紙を使うことが少ない現代のオフィスワークでは、パソコンの明るい画面を見て作業をすることがほとんどです。それゆえ、製図などの細かい作業でもなければ、照度を500ルクスまで落としても業務に支障をきたすことはないといいます。なおこのエリアでは、改修前の状態と比較できるよう、一部にそれを残した展示もされています。

↑照度計。数値上と体感の明るさを、両方確かめることができます

 

「簡単改修 タスク・アンビエントエリア」の天井には、照明用器具を設置できるダクトレールが埋め込まれています。ダクトレールの優れているところは、レールがある範囲であれば任意の場所に照明器具を設置できるということ。一度このレールさえ導入してしまえば、照明器具のアレンジの幅が増えるうえ、事後の改修も容易になります。

↑ダクトレールに設置されたLED照明

 

そして、照明器具のアレンジの方法について、いま注目されているのが「タスク・アンビエント照明」という概念です。これは、作業面(=タスク)への照明と、周辺(=アンビエント)への照明を切り分け、必要なところに必要なだけの光を届けるというもの。タスク・アンビエント照明による”適所適光”を実現すると、快適性や安全性は維持したまま、従来のオフィスと比べて20〜60%もの省エネが可能になります。

↑タスク・アンビエント照明では、作業面は明るくなるよう照度500〜750ルクスに設定。周辺の通路などはそれより暗い100〜300ルクスにして、メリハリを持たせます

 

「iDシリーズ紹介エリア(最新技術体感エリア)」では、最新のiDシリーズによる調光などを体験可能。また、均一照明と、タスク・アンビエント照明を併存させるなど、新たな照明デザインにも挑戦しています。

↑iDシリーズ紹介エリアでは、無線による調光などを体感できます

 

「ABWオフィス×メリハリ演出エリア」「オフィス改革エリア」「オフィス・カフェエリア」も、新たなオフィス照明のスタイルを模索する取り組みを形にしたものです。業務内容や気分にあわせて、社員が自律的に時間と場所を選択して働くことを指すABWを冠した「ABWオフィス×メリハリ演出エリア」は、コワークエリア、休息エリア、コミュニケーションエリア、集中エリアといった形でスペース内を区切っています。

↑ABWオフィス×メリハリ演出エリアのコワークスペース。什器に仕切られた空間で、机上に光が集中しています

 

また「オフィス改革エリア」では、既存のオフィスのイメージを覆す取り組みを行なっています。ここには会議スペースがありますが、従来の会議室にありがちな堅苦しさとは、まるで異なった雰囲気が特徴的です。曲線を用いた什器や照明器具が、温もりのある空間を演出します。

↑オフィス改革エリアの会議スペース。照明器具と椅子は丸いものを使用し、机も角がかくばっていないものを採用しました

 

そして、食堂と一体化しているのが「オフィス・カフェエリア」。家庭のダイニングを思わせるような温もりがあるこの空間にいると、会話が弾みそうな印象を受けます。

↑オフィス・カフェエリア。食事OKとNGのスペースが区切られています

 

省エネ製品をCO2ゼロで生産へ。新潟工場は2028年にカーボンニュートラル達成予定

iDシリーズやLED照明器具を多く生産しているのが、ショウルームオフィスを併設している新潟工場。省エネをアシストする製品を製造するこの工場は、2028年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げています。省エネ製品によって社会の脱炭素化に貢献するだけでなく、自らの工場も脱炭素化しようとしているのです。

↑新潟工場の内部。これだけ大きな機械を数多く稼働させながら、CO2排出を実質ゼロにするという目標には凄みを感じます

 

新たなオフィス照明のモデル、さらにはカーボンニュートラル工場のモデルとして。新潟工場は、ダブルのモデルケースをここから発信しようとしています。