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スタートアップ
2016/11/16 18:00

資格は取ったら終わり?――オンライン型サービスで業界の閉塞感を打破する「資格スクエア」が次に目指すものとは?

五反田スタートアップ第5回「資格スクエア」

 

就職や転職の際、持っていれば自分のスキルレベルを客観的に証明できる“資格”。取得するには自習より教えてもらったほうが効率良く学べることもあり、スクールに通う人も少なくないだろう。しかし、特殊な資格であればあるほど予備校の費用はかさんでくる。

 

そのような資格業界に新風を巻き起こしたのが「資格スクエア」だ。資格スクエアは、一流の講師による講義動画をオンラインで、しかも従来より低価格で受講できるサービスだ。

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五反田を拠点とする企業にフォーカスし、起業のきっかけや五反田という地域についてインタビューしていく「五反田スタートアップ」連載第5回目は、資格スクエアを運営するサイトビジット 代表取締役・鬼頭政人氏に話を伺った。

 

閉塞感を打破したかった

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↑オンライン講義「資格スクエア」を運営するサイトビジット 代表取締役 鬼頭政人氏

 

――「資格」と聞くとちょっと固いイメージがありますが、ざっくばらんにお話をうかがえればと思います。まずお聞きしたいのですが、どのような経緯でこのサービスを立ち上げられたのでしょうか。

鬼頭政人氏(以下、鬼頭) 資格試験業界にある閉塞感を打破したかった、というのがきっかけです。わたし自身も司法試験を受けていたのですが、当時、旧態依然とした予備校が数社あり、毎年毎年同じような授業ばかり。しかも、学費は100万円以上と高額で、資格取得へのハードルをより高くさせてしまっている状況でした。

 

奨学金を受けながら大学を卒業した経験から、その先に資金面で進めない人たちが多いのでは? と考えたんです。 もっとも、わたし自身は自学自習が苦にならなかったため、予備校に通うことはありませんでした。しかし、そういう人ばかりではないと思います。

 

閉塞感がありマイナスイメージをもつこの業界で、資格を取りたいと考えている人にとっても手が出しやすく、効果的なサービスを……とさまざまなビジネスモデルを考えてみたんです。その中で、オンライン型であれば普及しやすいのではないか、と思い、2014年11月に起業しました。

 

――100万円! それでは確かに資金面でのハードルが高いですね……。しかも時間もかかるんですよね。

鬼頭 予備校に通うのであれば2年必要ですね。

 

――資格スクエアでは、司法試験以外だとどのような学科を準備されているんですか。

鬼頭 簿記やファイナンシャルプランナーといったものから社労士、宅建士、行政書士など、仕事に役立つものに絞った学科を準備しています。IT系ではITパスポートなど、今のところおおよそ30の講座を取り扱っていますね。

 

効率よく効果的な学習のサポートを模索したサービス展開

――現在の事業領域や規模についても教えていただけますか。

鬼頭 オンラインで資格取得までの勉強ができる「資格スクエア」に加え、2015年2月には、そこから一歩進んだクラウド型の学習システムサービス「資格スクエアクラウド」の提供を開始しました。これは、受講者が共通して抱く疑問とその回答を集めたナレッジデータベースで、効率よく学習を進めていただくためのサービスです。

 

また、2016年3月には「脳科学ラーニング」というAI搭載問題演習機能サービスの提供をはじめました。つまり、学習に必要なインプットとアウトプット、その両方をオンラインに一元化できるようにしたんです。講義を聞いた直後に自分の理解度を測れるようになったため、苦手な分野を確認したり、モチベーションを維持したりするのに役立っています。

 

しかし、さらなるモチベーションアップや学習計画を管理するために対面型で指導を受けたいという要望があり、2016年7月に対面型の塾「資格スクエア・リアル」サービスを開始しました。内容は、個別指導、学習計画の策定・管理。普通の塾と違い、講義を受ける場所ではなく、自分の知識をアウトプットしていく場所というのが特徴です。自分で勉強を続けるのが難しいと思っている受講者からの反響は大きく、独学力を引き出すのに役立っているようです。

 

――講師はどのくらいいらっしゃいますか。

鬼頭 オンライン講義をしていただいているのは30人くらいですね。

 

――そのような先生方や受講生同士の交流の場、というのはあるのでしょうか。

鬼頭 リアルイベントを定期的に開催していて、その場で交流していただいています。学習についてだけでなく、勉強への支障を考慮した「恋人にはどれくらいの頻度で会ったらよいでしょうか」といった質問も出てきます。悩み相談ですね。

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↑自身の経験からも、「回答を得ることでもやもやが晴れるので、難しい悩み相談でも答えるようにしている」と鬼頭氏

 

――答えにくくないですか?

鬼頭 資格試験を控えている人にとっては不安要素の1つなので、経験者として答えますよ。

 

――悩み相談での回答も大変だと思いますが、そのほかに苦労されたことはありますか。

鬼頭 毎日が苦労の連続ですよ(笑)。というのはさておき、“ヒト”という面で苦労の連続でした。たとえば講師陣。さっきもお伝えしたとおり、わたし自身は塾や、予備校などで教えてもらった経験がないので、知り合いの講師がいなかったのです。

 

でも、前職で働いていたときに知り合った先生が最初の講師になってくださってから状況は変わりました。彼が講師としても有名だったため、“講師の開拓”に伺った際に「彼がやっているなら……」と、大勢の先生方が快く引き受けてくださるようになったんです。

 

そのほか、エンジニアに来てもらうのにも苦労しましたね。もともとIT畑の人間じゃありませんでしたから。知り合いでもなく名前も知られていないできたばかりの会社に、普通だったら入社しませんよね。

 

――たしかに給与面で不安になりますしね。マネタイズについてはどのようになっているんですか。

鬼頭 B to Cですので、会費が収入源。資格を取得できるまでをサポートさせていただきますので、人によって期間の長短はありますが、長い人だと2年以上ご利用いただいています。

 

――それなりの期間を要するとはいえ、難関資格に備えるとしたら格安ですよね。

 

自分だけの街にしたいほどの愛着

――ところで、事務所を五反田にされたのには何か理由があるのですか。

鬼頭 何より坪単価が安かったというのがありますね。でもそれ以外に、中学高校と、電車通学の際に五反田で乗り換えをしていて地の利があった、というのが大きかったですね。

 

――ほかの場所と比べ、五反田にして良かったなぁと思われたことはありますか。

鬼頭 渋谷には負けますが交通のアクセスがいいですよね。実は代々木も検討していたんです。同じく交通アクセスがよく、家賃も安かったので。でも全体のバランスが五反田は良い感じなんですよね。人が多すぎず少なすぎず、程よく都会で。

 

以前に事務所を構えていた日比谷では、ごはん屋さんが少なくて困っていたんですが、五反田だとたくさんあっていろいろ選べるのも魅力の1つだと感じています。

 

――“ごはん屋さん”の話が出たところで、お気に入りまたはオススメの飲食店を教えていただけませんか。

鬼頭 そうですね、ランチではトラットリア アリエッタがいいですね。週に1回は行きます。空間は広いですし、おしゃれでおいしいですよ。
焼き肉では、大山飯店が昼も夜もいいですね。ただ、夜だと1人8000円くらいかかってしまうので、月に1回くらいに抑えています。 居酒屋だと酒田屋ですね。めちゃめちゃうまいです。

 

――家賃よし、アクセスよし、ごはんよしの五反田ですが、今後も会社の拠点にされますか。

鬼頭 そうしていきたいんですが、社員数が増えたらわからないですね。

 

――えっ?! 

 

鬼頭 五反田は好きですよ。好きですけど、自分だけの街にしたいんですよ。オフィスがあると仕事関係の人に会っちゃうじゃないですか。

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↑「自分だけの街にしておきたい」と笑顔で語る鬼頭氏

 

――「自分だけの街にしたい」! 愛着のほどがうかがえます! ところで、この地域でコラボしたい企業があったら教えていただけますか。

鬼頭 2つあるんですよ。まずは「学研」。若年層への知名度は抜群ですよね。わたしたちが行う大人向けの資格学習も組み合わせれば、Win-Winの関係が築けるのではないかなぁと考えています。

 

もう1つは「freee」です。会計事務所や税理士事務所と関係があるので、提携の可能性があるかな、と。

 

――それでは最後に、資格スクエアの今後の展開についてお聞かせいただけますか。

鬼頭 今、資格スクエアで取り扱っているのは仕事に役立つ分野のみです。でも、目指しているのは「資格への合格」ではなく、仕事を軸にした幸せな人生を送っていただくこと。資格というのはあくまでもそのキャリアサポートの一部でしかないんです。

 

その人の可能性を最大化できるよう、仕事を斡旋したり、資格取得後の学習をお手伝いしたりする、そんな関わりかたができるようになれば、と考えています。