2024年4月、労働基準法の改正により、一部の職種における時間外労働時間の上限規制が強化されます。規制の対象となる業界では、人手不足が深刻化することが予想され「2024年問題」と呼ばれています。
2024年問題が起こる職種として、しばしばニュースで取り上げられるのはトラックやバスなどのドライバーです。しかし、その対象はドライバーだけではありません。今回取り上げる電気工事士も、そのひとつ。建物内の配線や照明など、あらゆる電気工事を担当する彼らの人手が不足した場合、工事の安全性への影響や工期の延長などが懸念されています。
といっても、いまから人手を急に増やすことは難しいのが現実。そこで注目されているのが、従来より少ない工数で施工ができる、省施工製品です。
2024年問題の影響は大。「丁寧に工事作業を行えなくなる」との声も
電気工事の現場は、2024年問題に直面する以前から、人手不足に悩まされてきました。産業構造審議会の調査によると、第1種電気工事士、第2種電気工事士ともに、必要な数を満たすだけの人材がいないそうです。高齢化で退職者が増えているうえ、入職者も減っているため、その傾向には拍車がかかっています。
そんななか、2024年4月から、労働基準法の改正により、建設業における時間外労働時間に上限が設定されることになりました。ただでさえ人手が足りていない現場にとっては、まさにダブルパンチです。パナソニックが電気工事の現場職員や経営者に対して行った、2023年9月のアンケートの結果は、2024年問題への危機感にあふれるものとなりました。
2024年問題よって起こる問題を尋ねた質問(複数回答可)では、54.8%が「人手不足が深刻化する」と回答。48.1%の「予定していた工期に間に合わない」や、45.6%の「時間内に施工作業を終わらせられない」、32.4%の「丁寧に工事作業を行えなくなる」といった、仕事のクオリティに影響を及ぼしかねないという声も目立つ結果になりました。
また8割以上の人が、2024年4月以降は以前より工期が伸びるとしています。うち37.7%は工期が「1.5倍〜2倍になる」と答えており、影響の大きさがわかります。ここまでくると、単なる業界内の問題にとどまらず、一般社会にも影響を及ぼしうるといえるでしょう。しかし、特効薬があるわけでもないのが現状です。2024年問題に対する対策については、全体の36.4%が「特にない」「わからない」と答えました。
パナソニックが省施工シリーズ「ハヤワザリニューアル」を展開
2024年問題を受け、パナソニックは、従来製品より簡単に取り付けられる省施工製品のPRに力を入れています。同社は「ハヤワザリニューアル」と称したシリーズを、照明、電気設備、空調・換気設備の3ジャンルで展開。2024年3月時点では、16商材をラインナップしています。
省施工製品による時短効果は確かなものがあります。蛍光ランプの生産終了に伴い、多くの需要が見込まれるLEDベースライトでは、天井に埋め込むタイプのもので、施工にかかる時間を従来品より55%も短縮。1台あたりの時短効果は4分強ですが、工事の現場では10台単位、多いところでは100台単位で施工することになります。塵も積もれば山となるとはよくいったもので、10台でも40分以上、100台なら7時間近い時短が可能といえば、その効果の大きさがわかるでしょう。
ほかにも、街路灯の立て直し向けの「QQポール」は、従来の基礎をそのまま使える機構にすることで、従来は2日かかっていた工事を1日で済むようにしました。すでに販売されているハヤワザリニューアルシリーズの製品は、前年比で30%ほど売り上げを伸ばしているといい、現場から堅調な支持を受けていることがうかがえます。パナソニックの調査では、すでに省施工製品を導入している現場の80%以上が「今後も採用したい」または「やや採用したい」と答えており、支持率の高さが裏付けられています。
つなぎを着たヒーロー「ヤッターマン」をイメージキャラクターに起用
ハヤワザリニューアルのPRでは、イメージキャラクターにヤッターマンが起用されています。パナソニックの担当者によると「電気工事士は、インフラを支えるヒーロー的な存在。つなぎを着用したヒーローキャラクターのヤッターマンは、電気工事士のイメージにピッタリだと思い、採用した」そうです。
ハヤワザリニューアルのPR活動は、2024年3月以降、WEB動画や展示会などで電気工事会社向けに展開されます。このシリーズのリリースを皮切りに、省施工製品が今後の電気工事業界のトレンドになるかもしれません。