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2024/10/5 20:00

新NISAで「クレカ積立」やってない人いる? 賢く「投資ポイ活」する極意を伝授!

クレジットカードやキャッシュレス決済に関する疑問や悩みを“クレカの鉄人”岩田昭男師範がズバリ解決する連載企画。今回は、最近話題が再燃している「クレカ積立」に関する疑問にお答えします!

 

【第21回】クレカ積立の極意を教えてほしい!

 

【解説する人】岩田 昭男

クレジットカード分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】輿末 登士(こしすえ とうし)

妻と13歳の息子と3人で暮らす38歳会社員。日々の生活費や子どもの教育費が両肩に重くのしかかり家計は決して楽ではないが、老後に向けてそろそろ資金形成を始めねばと考えている。そんななか「クレカ積立」という言葉を度々目にするようになり、改めて新NISAに関心が。新しくなったNISAおよびクレカ積立について教えを請いに道場を訪ねた。

 

(相談者の要望)

〇クレカ積立のメリットを改めて教えてほしい。

〇クレカ積立でオススメの証券会社とクレジットカードの組み合わせが知りたい。

〇クレカ積立で銘柄を選ぶときのポイントを教えて!

 

新NISAで非課税上限額が大幅に拡大。非課税期間も無制限に!

師範  クレカ積立について知りたいというのはおぬしか?

 

輿末  はい。これから子どもの教育資金を貯めたりいろいろ大変な時期ではありますが、そろそろ老後の資産形成も考えるべきかと思いまして。新NISAの話題に関連して「クレカ積立」との言葉をよく聞くので、一度お話を伺いたいと。

 

師範  確かに近年、国は「緩やかなインフレ」を目指しておるが、資産を貯蓄のみに頼っていると段々目減りしていく。そのため、より積極的な資産運用を促すためにNISA~新NISAを推奨しているというわけじゃ。

 

輿末  新NISAはこれまでのNISAから何が変わったんですか? また「クレカ積立」とはどういうことなんですか?

 

師範  まず新NISAについては本連載の第14回でも取り上げたが、投資信託などの運用益に対してかかる税金がゼロになる年間非課税上限額が「成長投資枠(旧・一般NISA)」では120万円から240万円に、「つみたて投資枠(旧・つみたてNISA)」では40万円から120万円に、それぞれ引き上げられた。

 

輿末  それは例えば「つみたて投資枠」では、年間120万円までの購入ぶんに関しては将来売却したときの利益が非課税になるってことですね。

 

師範  その通り! さらに重要なのは、これまで「一般NISA」の非課税保有期間が5年、「つみたてNISA」の非課税保有期間が20年だったのが、新NISAではどちらも保有期間無制限になったこと。例えば、旧NISAでは2023年に「つみたてNISA」で購入した商品は2043年までに売却しないと利益に対して税金がかかる建て付けだったが、新NISAで購入した商品は購入した30年後に売却しても税金がかからない。長期運用(ほったらかし投資)がよりやりやすくなったわけじゃ。

 

輿末  確かに私なんか手軽に資産運用したい派なので、満期が近づいて売りどきを気にする必要がないのはうれしいです。

 

師範  ちなみに新NISAでは非課税保有限度額アップも大きなトピック。従来の一般NISAでは総額600万円、つみたてNISAでは総額800万円だった非課税保有限度額が、新NISAでは成長投資枠・つみたて投資枠合わせて1800万円(うち成長投資枠は限度額1200万円)となった。

 

輿末  特につみたて投資枠の商品は低リスクで初心者向きとも聞くので、その限度額が増えたのはありがたいです。

 

師範  また、新NISAではこれまでできなかったつみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になり、さらに非課税上限額に達したあとでも、そこから売却したぶんに関しては売却の翌年に非課税枠が復活するようになった。これまでは保有していた金融商品を売却するとそのぶん非課税枠が減ってしまっていたが、今後は一度売ったぶんの買い足しに対して再び非課税の恩恵を受けられ、より柔軟に資産運用できるようになったと言える。

 

つみたて投資でポイントが付く「クレカ積立」の上限が2倍に!

師範  で、おぬしが気になる「クレカ積立」じゃが、その名の通り、新NISAでのつみたて投資をクレジットカード決済で行うこと。そもそもNISA~新NISAに限らず、クレジットカード決済で株式投資や投資信託を行うには2つの条件がある。ひとつは毎月定額を投資する「累積投資」であること。株式や投資信託商品を単発でまとめて購入するのでなく、一定額を買い続けなければならん。そしてもうひとつの条件は、商品購入後2か月以内に決済すること。つまり分割払いやリボ払いでなく「一回払い」が必須となる。

 

輿末  毎月行うつみたて投資をさらにリボ払いにしたら支払いプランがメチャメチャになりそうだし、利子も取られてバカらしい。「一回払い」は納得できます。

 

師範  また、クレカ積立のメリットは資産形成しながらカードのポイントが貯まること。例えばSBI証券では三井住友カードが積み立てに使え、カードのランクや条件によって0.5~3%のポイントが貯まる。ちなみに、これまでつみたて投資でのクレカ決済の上限は月5万円じゃったが、新NISAのつみたて投資枠の上限が月10万円にアップしたのに合わせて、多くの証券会社がクレカ積立の上限額を月10万円に増額した。

 

輿末  それは無理をしてでも上限までつみたて投資したい人が増えるでしょうね。

 

師範  じゃが、無理は禁物。何も考えずにつみたて投資額を月10万円に設定すると、前月のカード利用額と当月のつみたて投資の引き落としが急に重なり、支払いが破綻する。くれぐれも「長く続けられる額」に設定するのが大事じゃ。

 

輿末  うちでは10万円はとてもとても……。まずは3万、いや2万円ぐらいから始めるのがいいかなと。

 

師範  つみたて投資を本格化するのは子どもが就職したあとでも十分。まずは少額から始めるのもいいと思うぞ。

 

新NISAのつみたて投資枠の取扱銘柄は比較的低リスク!

輿末  ところで新NISAを始めようと思ってもどんな商品を買えばいいのか、よくわからないんですが……。

 

師範  新NISAの取扱銘柄に関して、どれを買えばいいかというのは残念じゃがワシの管轄外。ただ、つみたて投資枠で買える銘柄は「長期・積立・分散投資」に適しているとして金融庁が定めた基準をクリアした投資信託のみ。具体的には「購入手数料が無料」「投資信託の運用・管理費用が一定水準より安い」「デリバティブ取引による運用を行っていない」などの条件をクリアしており、運用リスクはかなり低い。また、成長投資枠の銘柄もつみたて投資枠より規制が緩いとはいえ、「整理銘柄や管理銘柄」「信託期間20年未満の投資信託」「毎月分配型の投資信託」「デリバティブ取引を用いた投資信託」は除外されており、いわゆる「ハイリスクな商品」は少ない。まあ最初はよりリスクの少ないつみたて投資枠の銘柄を買い続けるのが良いじゃろうな。

 

輿末  なるほど。ではそうした金融商品を購入する証券会社は、どんなポイントに注意して選べばいいんですか?

 

師範  そもそも新NISAの商品を取り扱っている金融機関はネット証券、総合証券、銀行の3種類。そして、NISAの口座はひとり1口座しか開設できない。それゆえ、どの証券会社・銀行を選ぶかはじっくり吟味する必要がある。ちなみに、証券会社(金融機関)ごとに取扱銘柄の種類も数も異なり、顧客対応に違いもある。まず、つみたて投資枠と成長投資枠の取り扱い商品数が圧倒的に多いのはネット証券。ネット証券は実店舗を持たないなどコスト削減して各種手数料を徹底的に抑えており、新NISAとの相性は抜群じゃ。一方、総合証券や銀行は資産形成について対面相談できるのがメリット。将来的に一般株式なども含めた資産運用をしたいと考える初心者や、新NISAの取り扱い商品のなかでどれを選んだらいいかわからない場合は、総合証券・銀行を選ぶのもアリじゃろう。ただし、証券会社や銀行が勧める商品はあくまで「先方が売りたい商品」であって、必ずしも「顧客の利益のみを考えた商品」ではないと心得よ。まあこれはあくまでワシ個人の見解じゃがな。

 

取扱銘柄が多く手数料の安いネット証券は新NISAと相性抜群!

師範  というわけで、ワシがオススメする証券会社の基準は「取扱銘柄の豊富さ」「証券会社の信頼度」「手数料の安さ」。ゆえにどうしてもネット証券推しになる。また、クレカ投資は証券会社ごとに使えるクレジットカードが決まっているので、証券会社選びはクレジットカードとの組み合わせで考える必要がある。

 

輿末  師範のオススメはどこですか?

 

師範  第1のオススメは、先ほども挙げたSBI証券と三井住友カードの組み合わせ。SBI証券は新NISAのつみたて投資枠の取扱銘柄が247本と充実。そのSBI証券でのクレカ積立に使えるのが三井住友カードで、一般カードなら0.5%、三井住友カード プラチナプリファード、Oliveフレキシブルペイプラチナプリファードなら最大3%のVポイントが付与される。ポイント付与率は前年のカード利用額によっても変動するぞ。ちなみに三井住友カード プラチナプリファードは今年9月の積み立て設定締切ぶん(2024年10月買付ぶん)までポイント付与率最大5%じゃったが付与率が最大3%に変更された経緯がある。それでも3%ポイント付与はまだまだ魅力的じゃな。また、三井住友カード ゴールドもオススメ。年間100万円以上の利用で1万ポイントが付与されるうえに翌年以降5500円の年会費が永年無料。さらに年間100万円以上の利用で翌年のつみたて投資に対するポイント付与率は1%に。年間10万円以上の利用でも付与率0.75%となる。

 

輿末  三井住友カードは私も持ってますが、普段の生活でもコンビニなどですごくポイントが貯まります。さらにクレカ積立でもポイントが貯まるとすごくうれしいですね。

 

師範  次にオススメなのは楽天証券×楽天カード。楽天証券もつみたて投資枠の取扱銘柄が238本と豊富で、ほとんどの取引で手数料が無料。楽天カードを使えば積立金額に対し代行手数料年率0.4%以上の商品には1〜2%、0.4%未満の商品には0.5〜2%のポイントが貯まる。保有残高に応じて楽天ポイントが付く銘柄もあるぞ。続いてオススメのマネックス証券は、自社カードのマネックスカードに加えてdカードでもクレカ積立ができる。つみたて投資枠の取扱銘柄は233本で、マネックスカードもdカードも積立に対するポイント付与率は最大1.1%(月の積立額が5万円以下の場合)。さらに、投資信託を持っているだけで保有残高に応じた投信保有ポイントも貯まり、10月保有分より最大付与率もアップする。そして4つ目のオススメはauカブコム証券×au PAY カード。auカブコム証券はつみたて投資枠の取扱銘柄が235本。au PAY カードでつみたて投資すると付与率1%のPontaポイントが貯まる。年会費無料で一律1%ポイント付与は魅力なうえに、ここも保有残高に応じたポイント付与がある。auカブコム証券は運営母体がKDDIと三菱UFJグループであることもあり、格付投資情報センターの信用格付けでは業界最高の「AA」の評価を受けとるぞ。

 

大暴落した株価も5年経てば回復、パニック売りは胆力で堪えよ

師範  いまオススメとして挙げた4証券会社は、どこも取り扱い銘柄が豊富なうえ、口座開設数も100万以上。特にSBI証券や楽天証券は1000万口座を超えており、信頼度は高い。最初はリターンが低くても安定して運用できるつみたて投資枠の商品をコツコツ買い続け、そのままリスクの少ない商品のみで運用するもよし、資産運用のコツが飲み込めてきたらより高いリターンが期待できる成長投資枠の商品に挑戦するもよしじゃ。

 

輿末  まずは低リスクの投資を少額からであれば、投資のハードルもだいぶ低くなりますね。

 

師範  つみたて投資のメリットは少額を長い年月買い続けることで投資のリスクを分散できること。一定の金額で定期的に購入を続けるやり方は「ドル・コスト平均法」とも呼ばれ、株価が高いときには少なく、株価が下がったときは多く購入できるため、平均購入単価を平準化できる。この方法では短期で資産を増やすのは難しいが、相場変動に一喜一憂せず投資が続けられ、長期運用の複利効果で資産を増やすことができる。

 

輿末  だからこそ、国は「新しい資産形成の手段」としてNISAを私たちにススメているわけですね。

 

師範  うむ。ちなみに新NISAなどのつみたて投資の場合、気をつけるべきは売りどき。要は、株式相場の下落局面でも「損切り」のために慌てて売らないことが肝心じゃ。例えば、リーマンショックのときは大きく株価が下落したが、その後アメリカは2年4か月でショック前の株価を回復、日本では5年でショック前の水準に回復した。今年8月のように突然株価が急落しても、新NISAで積み立ててきた商品をすぐ売却するのは絶対に避けたほうがよい。

 

輿末  でも株価が何年も下がったままだとどうしても不安になりますけどね。

 

師範  その気持ちはわかるぞ。が、それでもそこは胆力でグッと堪えよ。一方、新NISAを始めて20年、30年経ち、いよいよ資産を現金化する時期を迎えたら、その少し前から株式市場の動向に注意しておく必要がある。具体的には運用資産の現金化を想定していた年の5年前くらいから売りどきを検討し始める。その時点で十分資産形成できていれば、迷わず一括売却するのもひとつの考え方じゃ。万一その時点で株式相場が下落局面に入っている場合は、株価回復まで数年間売却を我慢するのが吉。もしどうしてもまとまったお金が必要なら、資産全部を売却するのでなく、できるだけ回数・期間を分けて売却し、購入時と同じように売却時の価格を平準化するのがよかろう。

 

輿末  いままでのお話を聞いていると、私も30代後半のこれから、新NISAで「少額・長期」の投資を始めるのは理にかなっている気がしてきました。

 

師範  つみたて投資で重要なのは、市場の動向に惑わされず、淡々と少額投資を続けること。投資の世界では「運用実績が最も良好なのは『運用を忘れていた人』」と言われるくらい、多くの人が余計な売買・資金移動で運用を失敗しているとも聞く。その意味でも、まずは毎月の引き落としが気にならないくらい無理のない額でNISA/つみたて投資を始める、その後はつみたて投資のことはほとんど意識せずに働くのがよいのではないかな。

 

  • 価格はすべて税込価格。情報はすべて本稿執筆時のものです。

 

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男