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【スイセンの撮り方③】なぜ、朝夕の時間帯がフォトジェニックな撮影に最適なのだろう?

一般的にスイセンといえば、ニホンスイセンを思い浮かべると思います。白い花びらに黄色いカップ形の副花冠がついた独特な形状で、2cmほどの小さな花が房状に広がっています。12月から2月にとてもよい香りを放ちながら咲く冬の花です。

ニホンスイセンは、日本の海岸線などで群生していますが、公園や道端でも見ることができます。野山に咲いたり、都心の公園などでも見られるスイセン。昨今は広大なスイセン畑が観光の目玉となっている場所もあります。

 

 

朝や夕方の光に照らされたスイセンはとてもフォトジェニックで美しい

冬は日が短く、元日の日の出が7時前後なので、それほど早起きをしなくても早朝の光で撮影ができます。空が焼け始めるところから撮りたいなら、日の出時刻の1時間ほど前には撮影場所に到着しておくと安心です。反対に夕方は、15時くらいには夕暮れの暖色の光になってくるので、こちらも早めの行動が不可欠です。

朝夕の時間帯は日中とは違った光になるので、とても新鮮に感じます。明け方の青み、夕暮れの赤み、低い位置から差し込む太陽光など、朝夕でしか味わえない光があり、それらを取り入れるとフォトジェニックに仕上がります。また、光に合わせた大幅な露出補正を行って、その光に合った明るさを選ぶと、より光を感じる写真になって効果的です。

 

 

基本テクニック

朝夕は明暗差がつきやすいので露出決定が難しい。空の色を残しつつ、スイセンも見える露出が〇

日の出時刻に近づくと、空はどんどんと明るくなっていく。スイセンに光が当たる前は、空と花との露出差が大きいため、露出の判断が難しい。どちらに露出を合わせるかでイメージが変わるが、基本は空の色を残しつつ花も見える露出にするのが正解だ。迷う場合は露出を変えて何枚か撮っておこう。

 

空の色と花の描写を見て、ここではプラス1.3を正解にした
補正なし(±0)は空に露出を合わせている。花は暗くなるが、空の重厚感が出ている。しかし、これではスイセンが暗すぎる。ここからプラス1.3の補正をすると、空の色も感じられつつ花も明るくなった。これがベストだろう。さらにプラス2.3に補正すると、花は適正に写ったが、空は明るすぎる。ここではプラス1.3を正解にしたが、どの露出を選ぶかは、花のイメージや自分の好みで決めよう。

 

 

応用テクニック①

夕日を画面に入れる場合は夕日に露出を合わせる

夕日が背景に入る場合は、夕日の濃度をしっかりと出したい。明るいと全体的に色があるのに、そこだけが白い塊になってしまう。露出は夕日に合わせ、スイセンは成り行きで暗く落ちても構わない。暗くても冬の夕暮れの雰囲気になるので、違和感はないだろう。

夕日の露出を優先してマイナス2.3補正した
明るいほうがスイセンはきれいに見えるが、夕日の丸いボケが真っ白く飛んでしまった。これでもマイナス1の露出補正を行っているが、夕日の濃度が落ちるまで露出をアンダー気味に抑えるべき。マイナス2.3に補正すると夕日がしっかり描写された。

 

 

応用テクニック②

強い逆光時に発生しやすいフレアを逆手にとって、まぶしさを表現する

レンズの正面から強い光が差し込むとフレアが発生して、画面が白っぽくなる。風景写真では描写が不鮮明になることから嫌う人もいるが、まぶしさを表現する要素として取り入れるのも手だ。この際、プラス補正を行うと明るくフワッとして、フレア描写が生きてくる。


 

〇+2.3

露出オーバー気味に撮るとフレアが、際立ってまぶしさが強調できる
日没直前、地上すれすれの太陽から強光が差し込んできた。レンズフードを使っていても、正面から差し込んでくる強い光は防げないので、フレアを意図的に取り込んでみた。逆光なのでプラス1.3でスイセンが適正に写る。フレアを生かすためプラス2.3補正すると、ソフトフィルターを掛けたようなふんわりした写りになった。露出オーバー気味に撮ると、ハイキーな写りになる。マイナス0.3したローキー調の描写は、あまり似合わない。
 

 

写真・解説/吉住志穂