提供:宝酒造株式会社
前回、「料理酒」の製法やその効果について様々なことを学んだ鈴木翔子さん(「GetNavi」編集部のフード担当)。今回はその実践編として、「料理用清酒」を使ったワンランク上のおつまみ作りに挑戦します。
講師を務めるのは、宝酒造の商品第四部、東日本調味料カスタマーセンターの宮本裕佳さん。鈴木さんがアドバイスを受けながら「真鯛の昆布〆 カルパッチョ仕立て」「鶏の香味清酒唐揚げ〜柚子胡椒マヨディップ〜」「豚バラと大根の煮物」の3品を調理。試食やお酒とのフードペアリングも行います。


●鈴木翔子(右)/雑誌『GetNavi』編集部(フード担当)。普段から料理に酒をよく使うが、「料理酒」を意識したことはなく飲用の清酒を使っている。
この記事でわかること
「料理酒」を使うときのポイント
鈴木 前回は、センター長の内藤さんから料理酒の特徴などを教えていただいたのですが、今回は実際の料理に使う際のコツなどを体験しながら学ばせていただきたいと思います。よろしくお願いします!
宮本 こちらこそ、よろしくお願いします。今回は、食材のおいしさを引き立てる料理用清酒のレシピ設計と工程をテーマに、調理法の異なるおつまみを3品考えてみました。
鈴木 ありがとうございます。まずは基本的なポイントとして、料理用清酒はいつ、どれぐらいの量を使えばいいんでしょうか? また、塩や醤油といった他の調味料との相性に違いなどはありますか?
宮本 まず、料理用清酒を使うタイミングや分量は、料理によって異なるというのが前提ですが、「狙う味によって変える」という考え方もあります。
鈴木 なるほど。
宮本 また、よく味付けの基本といわれる「さしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)」とは、どれも基本的に相性がよく、それぞれの持ち味を邪魔することなく料理用清酒がおいしさを底上げしてくれます。
また、加塩された醗酵調味料(加塩料理酒)は塩分が多く含まれているため、使用時は塩分調整が必要です。
鈴木 大事なポイントですね。では、もし飲用の清酒を料理に使う場合、どんな基準で選べばいいですか?
宮本 選び方の目安としては、ラベルに記載されている「特定名称酒」の分類を参考にするといいでしょう。一般論的には、華やかな香りが特徴の吟醸酒ではないほうが、料理本来のおいしさを引き立てると思いますね。ですので、純米酒、本醸造酒、普通酒から選ぶとよいかと思います。
ですが、せっかく料理に使うのであれば、飲用の清酒と比べてアミノ酸やコハク酸と言ったうまみ成分が豊富で、料理の不快臭が抑制できる料理用清酒を使うことがおすすめです。
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みりんと料理酒の違い
鈴木 ありがとうございます。ではもうひとつ、みりんと料理酒は何が違うんですか?
宮本 調理効果でいえば、生臭さを抑えてうまみやコクを付与する点は共通しています。ただ、みりんのほうが糖類やとろみが豊かなので、甘みやてりつやを出す効果は高いですね。でも、甘みやてりつやが不要な料理もありますよね。その意味で、幅広く使いやすいのが料理用清酒です。料理によってはみりんと料理用清酒の両方を使いますし、今回のおつまみでも3品中2品にみりんも使っています。
鈴木 みりんと料理酒では、製法上の違いもあるんですか?
宮本 みりんにも、「本みりん」「みりん風調味料」「みりんタイプ調味料(醗酵調味料)」の3種類があり、最も伝統的なのが本みりんです。原料でいえば、料理用清酒はうるち米、みりんはもち米が主原料となりますし、そのもち米と米麹(こめこうじ)、醸造アルコールまたは焼酎を仕込んで糖化、熟成させるのが本みりんです。
一方、料理用清酒は、うるち米と米麹、水に酵母を加えて仕込み、糖化、醗酵の工程を経て造られます。醸造アルコールを使うかどうか、や醗酵の有無なども、料理用清酒と本みりんの大きな違いといえますね。
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【1】「真鯛の昆布〆 カルパッチョ仕立て」
料理用清酒が昆布のうまみをさらに引き出し、魚の生臭みを抑える


■材料
・真鯛(刺身用) 100g <ドレッシング>
・食塩 少々 ・料理用清酒(煮切り*) 大さじ1
・昆布、料理用清酒 各適量 ・本みりん(煮切り*) 小さじ1
・岩塩 適量 ・EXオリーブオイル 大さじ1* 煮切り:料理用清酒と本みりんのアルコール分を加熱して飛ばす作業
宮本 それでは、調理に入りましょう。1品目は冷菜。「真鯛の昆布〆 カルパッチョ仕立て」を作っていきます。まず、刺身用の真鯛を薄切りにし、片面に塩を少々。それを、料理用清酒を含ませた昆布で挟み、冷蔵庫で2時間寝かせます。


鈴木 昆布〆ですね。本格的!
宮本 料理用清酒によって魚の生臭みを抑えるとともに、昆布のうまみや、素材のおいしさを最大限に引き出します。透明の小皿に入ってるのは、煮切った料理用清酒と煮切った本みりん、EXオリーブオイル。こちらを混ぜてドレッシングにし、真鯛に振りかけましょう。
鈴木 ここで本みりんを使うんですね。
宮本 本みりんの甘みと照りで、やさしいコクとうまみを感じられる、まとまりのある味わいに仕立てました。真鯛のおいしさも引き立ててくれますよ。盛り付けは、お皿に並べて岩塩を振り、彩り野菜をあしらえば完成です。
【2】「鶏の香味清酒唐揚げ~柚子胡椒マヨディップ~」
料理用清酒が素材を柔らかくして、味をしみこみやすくする
■材料
・鶏もも肉 300g <柚子胡椒マヨディップ>
・食塩 少々 ・マヨネーズ 大さじ2
・料理用清酒 大さじ1 ・柚子胡椒 小さじ1
・濃口醤油 大さじ1 ・レモン汁 小さじ1
・おろし生姜 小さじ1
・おろしにんにく 小さじ1/2
・片栗粉 大さじ2
宮本 2品目は「鶏の香味清酒唐揚げ〜柚子胡椒マヨディップ〜」です。料理用清酒の効果をより引き立たせるため、まずは料理用清酒と食塩を鶏肉にもみ込み、少し時間をおいてから醤油ベースのタレをもみ込むのがポイントです。
鈴木 2段階で下味をつけるんですね。
宮本 はい。まず料理用清酒と食塩だけをもみ込むことで、お肉に料理用清酒の効果がダイレクトに伝わって、食感や味の浸透がよくなります。また、一度に下味をつけるよりもメリハリがはっきりし、味の奥行きも深くなりますからね。


鈴木 スピード重視なら一度でいいかもしれませんが、やっぱり手間をかけたほうがおいしくなるんですね。
宮本 15分ほど置いて鶏肉をやわらかく、味をしみこみやすくしたところで、濃口醬油、おろし生姜、おろしにんにくを混ぜたタレを加えてもみ込み、片栗粉を馴染ませます。
鈴木 醤油ダレは、そこまで漬け込まなくていいんですね。
宮本 はい。最初にもみ込んだ食塩と料理用清酒の味がしみこんでいますし、片栗粉でコーティングすることで、外と中とで味のメリハリがはっきり出ますから。また、今回はキリッとした醤油感を引き立たせるために、本みりんは使いませんが、甘みを加えたい場合は本みりんを使うといいですよ。
鈴木 揚げる際のコツはありますか?
宮本 今回の油の温度は、160℃で約5分にしました。あと、お肉を鍋に入れる際は菜箸ではなく手でやさしく入れると、コロンと丸い形に揚がりますよ。


鈴木 そうなんですね。勉強になります!
宮本 盛り付けは、仕上げに柚子胡椒、マヨネーズ、レモン汁を混ぜたソースをかければ完成です。生の柚子があれば、こちらを削って振りかけることで色味と香りのアクセントを演出できますよ。
【3】「豚バラと大根の煮物」
料理用清酒が素材の旨味を底上げする
■材料
・豚バラ肉(ブロック) 200g <下茹で用(豚バラ)>
・大根 300g ・水 600ml
・料理用清酒 50ml ・塩 3g(小さじ1/2)
・水 150ml <下茹で用(大根)>
・濃口醤油 大さじ2 ・水 600ml
・本みりん 大さじ4 ・塩 3g(小さじ1/2)
宮本 最後は「豚バラと大根の煮物」。まずは角切りの豚バラ肉を沸騰した湯にサッとくぐらせ、脂を落とします。次は、鍋に0.5%の食塩水と豚肉を入れて火にかけ、弱火で1時間茹でます。
鈴木 下準備が大切ってことですよね。
宮本 少々手間はかかるものの、おいしくするコツのひとつが丁寧に仕込むことですね。大根も同じく、輪切りにしたら隠し包丁を入れ、こちらは0.5%の食塩水で、水から10分茹でます。
鈴木 料理用清酒の登場は、味付けの段階からになりますか?
宮本 はい。このあと、料理用清酒をたっぷり使って煮込んでいきます。水150mlに対して料理用清酒は50ml。さらに濃口醬油と本みりんを加えて鍋に入れ、そこに豚肉と大根を合わせて火にかけます。
鈴木 味付けは、料理用清酒と醬油と本みりんだけで、だしは使わないんですね。
宮本 はい。煮物には魚介などのだしをよく使いますが、今回はあえてだしは使わず、料理用清酒の効果を最大化させ、素材のうまみを底上げします。
鈴木 甘みも、砂糖ではなく本みりんで代用できると。
宮本 そうですね。本みりんのやさしい甘みとうまみが付与されることで、さっぱりとした味わいのなかに、醤油のカドを抑えたまとまりのある配合にしました。
鈴木 煮込む時間はどれぐらいですか?
宮本 落とし蓋を使って、弱火で30分です。落とし蓋を使うことで熱が均一に回り味がしっかりしみこみます。
鈴木 煮込みは、圧力鍋を使ったほうがより早く作れるんですか?
宮本 時短にはなりますね。ただ圧力鍋は時間調整が難しく、野菜が煮とけやすい側面もあるので、用途に応じて使い分けると良いと思います。
3品の料理が完成したので、いよいよ実食。今回は、3種類のお酒とのペアリングも考慮したレシピになっているので、それぞれ合わせることで、よりおいしく味わえるはず。早速、いただきましょう!
「真鯛の昆布〆 カルパッチョ仕立て」×松竹梅「昴」
宮本 まずは「真鯛の昆布〆 カルパッチョ仕立て」から。こちらには松竹梅「昴」の冷やを合わせます。
鈴木 カルパッチョに合わせるお酒ってワインをイメージしがちですけど、煮切った料理用清酒が使われているからか、松竹梅「昴」にもすごく合いますね。
宮本 よかったです。料理用清酒がネガティブな香りをマスキングしつつ、日本酒由来の風味が松竹梅「昴」との一体感が高めてくれるよう狙いました。
鈴木 ドレッシングもやさしい味付けで、素材のうまみが生かされているからお刺身感覚もあり、松竹梅「昴」ともドンピシャな組み合わせです。
「鶏の香味清酒唐揚げ〜柚子胡椒マヨディップ〜」×タカラ「焼酎ハイボール」
宮本 「鶏の香味清酒唐揚げ~柚子胡椒マヨディップ~」には、タカラ「焼酎ハイボール」を。フレーバーはドライを用意しました。
鈴木 唐揚げにタカラ「焼酎ハイボール」は想像するだけでもベストマッチですね。特にドライは絶妙な風味と抜群のキレで間違いないでしょう! 楽しみです。
宮本 酎ハイはどんな料理にも合うお酒ですが、タカラ「焼酎ハイボール」は甘くないのでより万能。炭酸の刺激や鮮烈なキレも特徴で、濃厚な料理には特に合うと思います。
鈴木 はい! やっぱり最高の組み合わせですね。唐揚げは、衣からお肉の中心までしっかり味がしみていて、サクッと香ばしくジューシー。肉汁のリッチなうまみと、味わいのレイヤー感が絶品です。
宮本 味変には柚子胡椒マヨディップをどうぞ。クリーミーな中に、酸味やピリ辛なニュアンスがあり、アクセントになりますよ。
鈴木 これもおいしいです! どこか和風で、ちょっぴり大人な表情になりますね。そして、そのすべてをタカラ「焼酎ハイボール」が受け止めつつ、余韻はスカッとウォッシュアウト。これは止まりません(笑)。
「豚バラと大根の煮物」×全量芋焼酎「ISAINA」
宮本 「豚バラと大根の煮物」には、全量芋焼酎「ISAINA」のソーダ割りをペアリングしてみてください。全量芋焼酎「ISAINA」は、独自のかおり酵母と芋麹仕込みで実現した、ユニークな香味特性が魅力です。
鈴木 割り方で香りが変わる焼酎ですよね。最近コンビニで「ISAINA」のソーダ缶も見かけました。
宮本 はい。ソーダ割りではりんごを思わせるフルーティな香り、ロックでは焼き芋のようなほっこり甘い香りが楽しめるのが特徴です。
鈴木 確かに! 口に近づけると、果実味を感じる香りがふわりと広がります。
宮本 そのままでもおいしいですが、ぜひ料理と合わせてみてください。
鈴木 豚肉はほろっとジューシーで、大根もシャクッとしつつしっとり。どちらも味がしっかりしみこんでいて、丁寧に仕込まれているから濃厚すぎず、素材のうまみを感じます。
宮本 食材のやわらかさや味の浸透度を高める効果は、料理用清酒の得意分野ですからね。さらに本みりんも使っているので、甘みやコクもアップしていると思います。
鈴木 ベースの料理酒を泡盛にして、味付けに黒糖を使うと沖縄のラフテーみたいな味になると思いますが、今回のは小料理屋さんで味わうような、上品なおいしさですね。キリッとクリアで、華やかな芳香が魅惑的な「ISAINA」ソーダがスゴくマッチします。
宮本 3品をそれぞれペアリングしてみて、どう感じられましたか?
鈴木 料理用清酒を使うと、おつまみがおいしくなるのはもちろん、使うタイミングや分量によって様々な効果を狙えるので、自炊がもっと楽しくなると思いました。これまでは飲用の清酒を適当に使うだけでしたが、今日学んだことを生かして、晩酌をアップデートしていきます!
前回は料理酒の特徴や効果などの基本を、今回は実際の調理で使い方などを学んだ鈴木さん。皆さんも本稿を参考に、ぜひ料理用清酒を使ったおつまみ作りや晩酌をもっと楽しんでください。
撮影/鈴木謙介
記事に登場した商品の紹介はこちら▼
・タカラ料理のための清酒
https://www.takarashuzo.co.jp/cooking/honseishu/ryoutame/
・松竹梅「昴」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/subaru/
・全量芋焼酎「ISAINA」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/isaina/
・タカラ焼酎ハイボール
https://shochu-hiball.jp/
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