グルメ
2018/4/8 11:00

【街中華の名店】スタミナ丼や洋食も豊富な中野坂上のハイブリッド中華「新華楼」

中野坂上駅は、青梅街道と山手通りというふたつの幹線道路が交差する場所にある。また、南東の方角に新宿のコンクリートジャングルを望む立地でもある。「中野」の飲食店と言われて思い浮かべるのは、密集した飲み屋街から連想されるディープな印象かもしれないが、それはJR中野駅の話。中野坂上付近の風景は、ディープさとは無縁の大都会であり、店もまばらなのだ。とはいえ路地裏に一歩入れば、なんともエモーショナルな街中華が存在する。それが今回紹介する「新華楼」(しんかろう)だ。

 

 

開発の波に飲まれず半世紀愛されてきた匠の技と味

創業は1969年。来年で50周年となる老舗だ。看板には“味の王者”と書かれているが、地元住民にとっての街中華のチャンピオンといえばここなのだろう。開発の波に飲まれず約半世紀続く歴史が、王者の風格を物語っている。

↑外観。傍らにはホンダの名車「スーパーカブ50」があるが、これは買い出し用とのことで、現在出前は行っていない

 

料理の特徴は、中華系以外のメニューが豊富なこと。街中華のなかには、時代や常連客の要望に応える形で、かつ丼やカレーといった中華料理以外を出すことになったという店がよくある。そうはいっても「新華楼」はそのラインナップが半端ではない。しかも、独創的な一品もある。たとえば名物のひとつとなっている「スタミナ丼」。

 

この料理は、まず豚の肩ロースをブロックで仕入れ、毎朝一枚肉にカットしてとんかつを揚げておく。オーダーが入るとにら、玉ねぎ、ひき肉を炒め、5~6等分に切ったとんかつを加えて卵でとじる。フタはせずに強火でスピーディに鍋を振り、エアリーな要素をもたせながら丼に流し込むのだ。その早業は、まさに匠。

↑「スタミナ丼」750円。かつ丼のレシピをベースに、ひき肉とにらを加えて唐辛子をふりかけた、オリジナリティの高い一皿である

 

“スタミナ”とあるものの、ニンニク由来のパンチではない。ひき肉ととんかつのジューシーなうまみ、にらのシャキっとしたエッジ、そして甘じょっぱい味付けと唐辛子のピリッとしたアクセントがジャンク感を演出。また、栄養バランスを考えて卵と玉ねぎを入れている点は、店主のやさしさでもある。ガッツりしてはいるものの、卵のマイルド感が合わさって、味自体は心にしみるおいしさだ。

 

 

洋食の経験も持つ店主の多才さが生む独創性

ご飯もので「スタミナ丼」と人気を二分しているのは、洋食的なメニューの「オムレツライス」だ。このたぐいはよく「オムライス」と呼ばれるが同店は異なり、具材にも違いが表れている。まず、一般的なオムライスの中身は鶏肉を使ったチキンライスとなるが「新華楼」の場合は豚肉。仕上げに福神漬けを添えるのもポイントである。

↑「オムレツライス」730円。洋食店の正統派オムライスが整ったラグビーボールであるならば、この「オムレツライス」はまるで野球のキャッチャーミットだ

 

調理におけるこだわりは、ライスが焦げるギリギリまで強火でしっかり炒めること。適度に水分が飛んでいるためベチャっとしておらず、様々な味が米にも浸透していて抜群にうまい。また砂糖で甘みを足しながら、全体のバランスを整えることも大切だという。ボリュームたっぷりで、ズバっと豪快にかけられたケチャップも武骨だが、だからこそ「いまから食べるぞ!」という戦闘モードにしてくれる。

↑卵の薄皮のなかにはポークケチャップライスがパンパンに。具材はほかにピーマンと玉ねぎが入っている

 

街中華らしいメニューにも定評がある。麺類でいえば、野菜がたっぷり入った塩味の「タンメン」は人気だ。豚骨と鶏がらがベースの中華スープに豚のこま切れ肉、キャベツ、ピーマン、もやし、玉ねぎ、にんじんなどのうまみが加わり、あっさりしたなかに深みもある。

↑「タンメン」600円。約140gの麺は新宿の「山口や製麺所」の中細タイプを使用

 

ところで、なぜ「新華楼」はこれほどまでに中華以外のメニューが多いのか。聞くと、それは店主の歩んできた人生に秘密があった。主人の遠藤忠重さんは山形県出身の74歳。幼くして父親を戦争で亡くし、母親と祖父に育てられた。やがて中学卒業後に働くために上京し、料理の道へ。様々な飲食店を渡り歩くなかでたどり着いたのが、当時吉祥寺南口の駅前にあった「帝都」というレストラン。

↑「カレーうどん」650円、「クッパ」680円、「焼肉丼」700円などメニューは実に多彩。サービスセットとして「半チャーハンラーメン」と「ミニカレーラーメン」を常時700円で提供するなど良心的でもある

 

↑夜限定のつまみもある。ビールは大瓶620円の中瓶580円、日本酒は380円、焼酎は飲み方豊富でどれも400円

 

ここはジャンル問わず、和洋中なんでも提供するスタイルだったという。遠藤さんは中華のセクションだったが、洋食の厨房と背中合わせであり、フォローにもよく回った。そうこうするなかで、洋食のレシピもマスターすることに。

↑同店の料理に欠かせない、豚肩ロースのブロックを持つ遠藤さん。戦後に身ひとつで上京した青年は、料理の腕ひとつで店舗を構え、中野坂上の地に欠かせない存在となった

 

豊富な経験があったため「新華楼」には洋食メニューが多く、そして遠藤さん自身が創作意欲にあふれる性格なことから「スタミナ丼」のような独自の料理も生まれたのだ。駅から徒歩1分程度の至便な立地にある同店。昼夜問わず、ぜひ訪れてみてほしい。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

新華楼

住所:東京都中野区中央2-2-22

アクセス:東京メトロ丸の内線ほか「中野坂上駅」A2口徒歩1分

営業時間:11:30~15:00、17:30~22:00

定休日:日曜、祝日

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