いまから約15年前、焼酎ブームが巻き起こりました。2003年に焼酎全体の出荷量が日本酒の出荷量を約50年ぶりに上回り、翌年には売上高がピークになったほど。その理由は、ほかのお酒に比べて糖質やカロリーが低いというヘルシーさや、お湯でも割れるといった飲み方の幅広さが挙げられます。そしてこのトレンドをけん引し、以来焼酎のトップブランドに君臨しているのが「黒霧島」。
この名作から今秋、「黒霧島EX」という新作が発売されます。「黒霧島」魅力をさらに磨いたということですが、もともとの完成度が高いこともあり、味の創生には新たな製法が用いられました。今回は改めて「黒霧島」のブランド解説と、「黒霧島EX」の製法や味を中心に紹介していきたいと思います。
革新的な発想でブームをけん引したのが「黒霧島」だ
いまやコンビニや、どこの居酒屋でも大抵置いてあるほどメジャーな「黒霧島」ですが、実は今年やっと二十歳を迎えた、比較的新しい焼酎です。そのデビューはセンセーショナルでした。当時は珍しかった黒麹を仕込みに使う(焼酎には白麹、というのが常識だった)製法や、業界内でタブーとされていた黒いラベルを使用するなど、時代を先取りしたプロダクトが革命的だったのです。
独創的な製法は、味の面でも革命をもたらすことに。それまで芋焼酎は「イモ臭い」などと敬遠されることも少なくありませんでした。ところが「黒霧島」は洗練された味わいで、トロっとした甘みとキリっとした後キレが特徴。さらには自己主張しすぎず、食事を邪魔しない万能性も。この飲みやすさが、幅広い層に受け入れられることとなった要因なのです。
なお、蔵元である「霧島酒造」は「黒霧島」以外でも、焼酎業界におけるパイオニアです。たとえば、「本格焼酎」という位置づけ。これは焼酎が製法の違いによって「甲類」(チューハイなどの割材に適したクセのないタイプ)と「乙類」(原料の個性を生かした伝統的なタイプ)に分けられていたものを、当時の江夏順吉社長が「乙類が甲類に劣ると誤解されかねない」と危惧して提唱したもの。結果、霧島の商品をはじめとする多くの乙類焼酎は、本格焼酎と呼ばれることになったのです。