JUN SKY WALKER(S)のベースとして、また、「ゆず」や植村花菜などのプロデューサーとして知られる寺岡呼人さん。今年の7月には、ソロアーティスト25周年を記念して奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本といったビッグネームを集めて「カーリングシトーンズ」なるバンドを結成し、さらに活動の場を広げています。今回は、そんな寺岡さんのご自宅のオーディオルームを訪ね、「音楽と酒」をテーマにインタビュー。菊水の吟醸酒「無冠帝」を飲んでもらいながら、「お酒でインスピレーションが湧くことはある?」「日本酒に合う音楽は?」「ミュージシャンの飲み方って?」などなど、気になることを存分に語っていただきました!
PROFILE
寺岡呼人(てらおか・よひと)
1988年にJUN SKY WALKER(S)にベーシストとして加入。93年の脱退後は、ソロ活動と並行してプロデュース活動も行い、ゆず、矢野まき、ミドリカワ書房、植村花菜「トイレの神様」、グッドモーニングアメリカ、八代亜紀らを手がける。2018年にはソロ・アーティスト25周年を記念して奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本とカーリングシトーンズを結成した。
「音楽と酒」といえば、マンハッタンで観たライブが忘れられない
──このオーディオルーム、素晴らしい設備ですね! アナログレコードはどれも状態がいいですし……。普段は、こちらのお部屋でお酒を飲みながら音楽を聴いたり、映画を観たりされているんでしょうか?
寺岡 いまはちょっと忙しいので、以前ほどではないのですが。時間のあるときはお酒を持ち込んで、アナログプレイヤーでレコードをかけたり、プロジェクターで映画を観たり……そこは、自分だけの贅沢な時間ですね。
──寺岡さんがオーガナイズしているライブイベント「Special Living Live」でも、ライブを観ながら食事やお酒を楽しめますよね。背景には、「音楽とお酒」が作る「贅沢な時間」をみんなにも楽しんでほしい、という思いがあるわけですか?
寺岡 はい。20代のころにニューヨークのマンハッタンで観たライブがまさにそうだった。歌手は、日本でもかなり有名なカントリー歌手だったんですが、ライブハウスではない、すごく小さなお店で歌っていて。そこは着席して食事をしながら演奏を楽しめるスペースがあって、これはいいな、と感じたことをずっと覚えていたんです。欧米だと音楽がもっと人々の生活と密着していて、色々な楽しみ方がある。日本でも、ブルーノートやビルボードライブほどかしこまらず、ライブハウスより落ち着いて観られるところがあるといい……と。ずっと思っていたところに、渋谷にeplus LIVING ROOM CAFE & DININGがオープンして、去年から「Special Living Live」を始めたんです。
あまり飲めなかった20代、酒を飲んで騒ぐ「意味がわからなかった」
──さきほど、ブルーノート(※)という言葉が出てきましたが、今回飲んでいただいた「無冠帝」もブルーノートのメニューに加わっているんですよ。
※ブルーノート……ブルーノート東京(BLUE NOTE TOKYO)のこと。東京・港区にあるジャズライブが鑑賞できるレストラン
寺岡 へえ、そうなんですか。ああ、でもわかるなあ。味もすっきりとして気持ちのよいうまさがあるし、ボトルやラベルのデザインがすごくオシャレだし。ボトルにはちょっと懐かしい印象もありますよね、嵌めガラスっぽい感じというか。料理も器によって味が変わると言われるのと同じで、お酒も酒器や見た目で印象が変わってくる。味のイメージやコンセプトを伝えるという意味で、デザインも重要ですよね。
「無冠帝」の詳細はコチラ
──と、ここまでお酒について聞いてきましたが、実は寺岡さん、20代まではお酒が好きではなかったとうかがったのですが……本当ですか?
寺岡 はい。20代のころはあまり飲めなかったから、みんなが騒ぐ意味がわからなかった。ライブの打ち上げも「早く帰りたいな」とばかり思っていたんです(笑)。ですが、30代のとき、知り合いの家に行って赤ワインを飲んだら、「あれ、飲めるかも」と思い始めて。じゃあ、ちょっと練習してみようと。「赤ワインなら飲める」という暗示をかけながら、ちょっとずつ毎日飲むようにしたんです。すると、「あ、いける。やっぱりいける……お、2杯いける…!」みたいになって(笑)。それをきっかけに、ほかのお酒もいけるようになりました。最後に行き着いたのが、日本酒ですね。
「日本酒はもっと世界で認められていい」と飲むたびに思う
──なるほど。では、飲めるようになってからは、どんなお酒を中心に飲むようになったんですか?
寺岡 僕には割と、「マイブーム」みたいなものがあって。ワインのときはずっとワイン、焼酎のときはずっと焼酎といった具合です。元々、お酒が強くなかったので、日本酒は自分のなかで怖い存在でしたが、ちょっとずつ家で飲みだしたら、「すごくおいしいな」と思うようになって、一時期ず~っと日本酒を飲んでいたときがありました。日本酒って、ちょっとクセになるところがありますよね。毎日飲んでいるときは、夕方くらいから喉が鳴るんですよね(笑)。
そして、日本酒を飲むたびに思うのは、「もっと世界で楽しんでもらえるはずだ」ということ。パリやロスでも和食はものすごく尊敬されていて、そのヘルシーできめ細やかな味に最も合うのは、やはり日本酒。世界に胸を張って自慢できますよね。この「無冠帝」のデザインを見たときも、日本だけじゃなく世界も狙っているのかな、という印象を持ちました。そんなお酒が1000円ちょっとで飲めているなんて、すごく幸せなことですよ、やっぱり。でも、日本酒のウマさに世界の人々が気付いたら、ウイスキーのようにどんどん値段が上がってしまうのでは……という心配があって、ちょっと複雑です(笑)。
「無冠帝」の詳細はコチラ
「日本酒に合う音楽」はアナログ・レコードで聞くジャズ
──先ほど「日本酒がクセになりそう」とおっしゃっていましたが、そんな日本酒のイメージに合う音楽とは何でしょうか?
寺岡 間違いなく、ジャズは合いますね。ジャズのアドリブは演奏時のインスピレーションが投影されているもので、そのいちどしかない演奏が作品として世に出されている。ある意味、ライブと同じなんです。何回聴いても、新しい発見があったり。その意味で、「無冠帝」はもちろん、日本酒全般の酒造りにも通じるんじゃないですかね。あとは音楽ジャンルというよりもアナログ・レコードの音が合うと思う。レコードのふくよかで深い音質に感じる気持ちよさに、日本酒が加われば、もう何も言うことがないですね(笑)。
だから、最近はアナログ・レコードが聴けるお店ばかり行く。昨日行ったお店もマスターが我々の会話を聞いて、その会話の内容に合ったレコードをかけてくれて。そうすると帰れなくなくなってしまって、「もう一杯」「もう一杯」ってなっちゃう(笑)。雰囲気でいえば、蔵の中で、レコードを聴きながら日本酒を飲めたら最高だろうなあ。そんな店なら、ぜひプロデュースさせてほしいですね!
ミュージシャンは基本的に人見知り。互いの出方をうかがって集まらないことも多い
──では、日本酒に限らず、お酒が寺岡さんの音楽にインスピレーションを与えたということはありますか?
寺岡 「お酒を飲んだら曲が降ってきた」という直接的なことはないんですが。お酒を介して人に気を許せるようになったり、初めての方とも距離感を縮めることができたり。ただの打ち合わせだと、終始硬い印象で終わることもありますが、「お酒でも飲みましょう」となると、初めて相手の本性がわかる。リラックスして打ち解けたことで、色んなアイデアが浮かんだこともあります。だから、いまはお酒を酌み交わすことがすごく大事だな、と思うんですよね。
──ちなみに、寺岡さんはプロデューサーという立場上、お酒を酌み交わす相手は、ミュージシャンの方が多いのでしょうか?
寺岡 そうでもないです。基本的に、ミュージシャンは人見知りですから。「誰か誘ってくれないかな……」といつも思っているけれど、自分からは誘えないという人が多い。だから、集まるときには一気にワっと集まるんですけど、集まらなかったらずっと集まらないということが多いんです。お互いにずっと「行くのか? 行かないのか?」とけん制しあうような(笑)。飲み方でいえば、20代は「ずっとMAXで楽しい」というノリがあったけど、ぼくらみたいに50代になると、みんなマイペース。のらりくらり飲んでいたと思ったら、急にドカーンと盛り上がって、またグダグダ……とか。またそれがいいんですけどね。
──カーリングシトーンズのメンバーだと、どなたと飲むことが多いですか。
寺岡 トータス松本くんですね。彼もぼくと同じで30代になってから飲むようになったらしいんですが、カーリングシトーンズを始めるときはお互いにまだそれほど距離が近くなくて。でも、だんだんふたりで飲むことが増えてくるにつれて、「実はこういう人だったんだ」とか、「ああ、優しい気持ちで接してくれているんだな」とか、「音楽に対してこう向き合ってるんだ」とか。お酒を通してわかり合えましたね。
──ミュージシャンはお互いの気心が知れると普段の付き合いだけでなく、演奏も変わってくるという面もあるんじゃないですか?
寺岡 ああ、絶対そうだと思います。出る音が違ってきますね。そういう意味でも、お酒は重要な役割を果たしてくれていると思います。
人間関係の面も含めて、「音楽と酒」がある時間をとても大切に思っているという寺岡さん。取材時には、お気に入りのマイルス・デイビスを流しながら、「無冠帝」をじっくり味わう姿が印象的でした。みなさんもぜひ、「贅沢な時間」に日本酒を選んでみてはいかがでしょうか。
撮影/篠田麦也
【今回寺岡さんが飲んだお酒】
菊水酒造「無冠帝」 ※画像クリックで製品紹介ページにジャンプします
サイズは300mlと720ml/オープン価格
ちょっといいコトがあった「ハレの日」のお酒として、菊水が提案する吟醸酒。新潟県産米を100%使用。穏やかな香りながらも吟醸らしいクリアな味わいを実現し、サラリと飲める心地よい飲み口に仕上げました。また、通常、2回行う火入れ(加熱)を貯蔵前に行う1回に留める「生詰」(なまづめ)を採用。品質を安定させるとともに、蔵出し特有のフレッシュな風味を実現しています。
「無冠帝」の詳細はコチラ