コーヒーをもっと深く楽しみたい、という“コーヒー趣味”な人にピッタリな講座があります。コーヒーの老舗、キーコーヒーが東京・新橋で開催している「コーヒーセミナー」です。前回はコーヒーブランド「illy」とキーコーヒーのコラボ講座「UNIVERSITÀ del CAFFÈ(イリーコーヒー大学)」を紹介しましたが、今回はキーコーヒーが開催しているセミナーをレポートします。
上級者向けの「スキルアップクラス」を解説
キーコーヒーではこれまで、コーヒーの抽出や焙煎の方法などを、一般向けとプロ向けでそれぞれセミナー形式で展開してきました。
一般向けには「カルチャークラス」として、コーヒーをおいしくドリップする方法などを体験できる講座を用意。プロ向けには「カレッジクラス」として、コーヒーの抽出理論、焙煎方法を伝授するコースや、栽培からカッピングまでを体系的に学べるコースなどが用意されています。
新設された「スキルアップクラス」は、カルチャークラスの“一歩上”を目指す人のための講座。コーヒーを深く楽しみたい人のために、基礎知識から、焙煎、抽出まで、プロの知識を学べる内容です。今回は、コーヒーの焙煎(ばいせん)とカッピング講座を体験しました。
コーヒーの「焙煎」とは、コーヒー豆を生豆をローストマシンにかけて、煎り豆にする工程のこと。キーコーヒー本社前にある焙煎スポット「錠前屋珈琲」で焙煎の基礎を学びます。
「スキルアップクラス」の焙煎講座は、少人数で1台の焙煎機を囲み、ローストマイスターの指導のもと、コーヒーを焙煎します。コーヒーの焙煎にかかる時間は浅煎りの場合、約10分間ほど。焙煎している豆をときおり取り出して、その状態を見ながら、煎り時間や温度を調整します。
コーヒーをおいしく煎るためには、コーヒー豆の見た目や香りを頼りにするのはもちろんのこと、コーヒーが煎られてはぜる音も手がかりになるのだそう。プロはその日の温度や湿気によっても、煎り加減を調整するといいます。煎りあがったコーヒーの味を見るだけではとどまらず、まさに五感を総動員する作業なのです。
なお、「錠前屋珈琲」のロースターは予約制で時間貸しも行っています。コーヒーの焙煎だけを体験したい人には、こちらもおすすめです。
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ベリー、チョコレート、ナッツ……このコーヒーはどんな味?
「スキルアップクラス」では、プロがコーヒーの味を確認する手法「カッピング」を体験できます。ワインでいう「ソムリエ」のように、コーヒーにもプロフェッショナル制度が存在します。その中でも有名な資格の1つが、 CQI(Coffee Quality Institute)が認定する「Qグレーダー」。コーヒーの味を評価するプロフェッショナルです。
スキルアップクラスのカッピングコースでは、このQグレーダー資格を持つ講師から、カッピングの方法をレクチャーを受けられます。
コーヒーを味わう前に、まずは腕試し。4つの透明な水が用意されました。4つの水のうち3つには塩み、甘み、酸みがうっすらとつけられています(それぞれ薄い塩水、砂糖水、クエン酸水です)。そしてもう1つはダミーの水。水につけられたわずかな味を試すという、味覚のテストです。
味覚の状態を確認したところで、いよいよ本番。カッピングの体験です。その際、円グラフのようなものが書かれたシートが渡されます。そのシートは、「COFFEE TASTER’S FLAVOR WHEEL」と名付けられたもの。SCAAとWCR(World Coffee Research)という2つのコーヒー団体が策定した「コーヒーの味を表現するときの基準」です。
「COFFEE TASTER’S FLAVOR WHEEL」の内側の円には「FRUITY(フルーティー)」や「SWEET(甘み)」「ROASTAED(香ばしい)」といったコーヒーの味を表現することばが並び、外周に行くにしたがって、より詳しい説明になっていきます。
このシートを参考にすれば、「このコーヒーはフルーティーの中でも、特にベリー系の香りが強いね。そう、ラズベリーの香りだ!」といったように味を表現できるわけです。そして、その表現は世界共通で通じるようになっています。コーヒー生産国で品質管理に携わる人から、消費国でコーヒーを出すバリスタまで、世界中の人が同じ表現を使えるコーヒー界の「共通言語」というわけです。
カップテスト、実践
講座では、ブラジル産とグァテマラ産の2つのコーヒーで、その香りを表現しました。まず、挽き立ての粉の状態で嗅いでみると、ブラジル産は「ナッツの香りもするし、チョコレートの甘さもある……」といった印象。対してグァテマラ産は「すごく華やか。ローズのよう。イチゴやラズベリーのような甘酸っぱさも感じる」と、これだけで産地や品種の違いが実感できます。
さらにカップテストでは、コーヒーに直接お湯を注いだときの香り、お湯を吸って膨らんだ粉をスプーンで割った時の香りと、3段階で香りを確かめます。
そして、カップテストで最後に行うのがテイスティング。スプーンですくって、味を確かめます。この時のお作法は、スプーンにすくったコーヒーを直接なめず、蕎麦をすするようにズズっと吸い込むというもの。すこしお行儀が悪いようにも思えますが、こうすることで口の中に香りが広がり、味が分かりやすくなるのだといいます。
ふだんはただ「おいしい……!」とだけ思って飲んでいるコーヒーでも、実際に表現してみると、驚くほどの複雑な味の要素が詰まっているのが分かります。そして、粉をかいでみたとき、お湯を注いだとき、熱いうちに飲んだとき、冷めたときと、それぞれのタイミングで香りの印象が変わるのも発見でした。
「おいしいコーヒー」を作るためにも、コーヒーの味を的確に認識して、表現できるプロフェッショナルの存在は欠かせません。ふだん何気なく飲んでいるおいしいコーヒーも、それが手元に届くまでに、何人もプロの舌が支えているのだろうな、と考えさせられる体験でした。
キーコーヒーのコーヒーセミナー「スキルアップクラス」は、隔月開催で全3回の構成。それぞれの講座は、1日で完結する内容です。次回は2019年1月16日に開催されます。予約はキーコーヒーのホームページからできます。