グルメ
2018/12/18 18:00

食べ飲み放題2980円はなぜ可能?「大陸系中華」が首都圏に増えているワケ

当サイトで連載中の【街中華の名店】。こういった大衆中華には日本式の街中華ともうひとつ、本場の大陸系中華がカテゴライズされると思います。大陸系の特徴は、スタッフが中国出身、日本式ではない本場の味、コースや食べ飲み放題が超激安などなど。

 

この大陸系激安中華、最近首都圏で新規オープンが目立つと感じているのは筆者だけではないはず。なぜ増えているのか? どうやって激安を実現しているのか?これらのナゾを明らかにするべく、詳しい人物にインタビューを敢行しました!

 

 

中華専門のフリーペーパーにビジネスの答えがある!

教えてくれたのは、「中華料理もっと向上委員会」なる組織で議長を務める菊池一弘さん。菊池さんは北京に4年留学していた経験があり、レストランや食材関係者とのつながりが幅広いエキスパートです。

菊池一弘さん。中国は羊食大国でもある関係で、オージーラムのPR大使「ラムバサダー」としても活動しています

 

まずは大陸系中華店の新規オープンが目立つ理由から。あっせんする企業がある、あるいは何かの規制が緩くなったのでしょうか? 個人的には、とある濃厚系ラーメンやつけ麺のチェ―ンは、中国人ネットワークでサポートする会社の運営だと聞いたことがあります。

 

「あっせんする企業はあるでしょう。ただ、いまの時代は自力でどうにかなるんですよ。なぜかというと、フリーペーパーが充実しているから。たとえば、池袋には20~30の編集・出版社が存在。街のあちこちに冊子が置いてあります」(菊池さん)

↑池袋の北口にある、中華スーパーの「海羽日光 池袋店」。スーパーといっても1階ではなく、雑居ビルの2~4階を活用した構成。通路には中国系のフリーペーパーが数種類も

 

そういって菊池さんが取り出したのは、まさにその現物。日本語は、日本系企業の広告ぐらいで、ほとんどが中国語。そのなかの数少ない英語で「WEEKLY DIGEST」と書かれた冊子には、「1993年創刊」との表記が。なんと25年前から存在し、毎週発刊しているようです。

 

「でもよく見てください! 9割が広告なんです。記事は1割で、その内容は日本や中国の日常的なニュース。政治経済系が中心ですね。そして広告も特徴的。ジャンルごとにまとめられているのですが、どこの店がおいしいとかの情報じゃないんです。ほぼすべてが仕事関連なんですよ」(菊池さん)

↑「ここは行政書士とか、そういった手続きをする事務所の広告が載るページですね」と菊池さん

 

ページごとに不動産、食品卸、求人、印刷、内装などがびっしり。確かにこの一誌があれば開業できそうな情報ばかりです。これは逆の立場で考えてみれば納得。たとえばもし、日本人が開業するためのフリーペーパーが中国の随所に置いてあったら、中国への出店もそこまで難しくなさそうです。菊池さん曰く、フリーペーパーが日本でこれほど充実している国は中国だけ、とのこと。では、25年前からありながら、近年増えている理由は?

 

「特に大きな理由は、2017年から中国人への訪日ビザの発給要件が緩和されることになったからです。有効期間も、それまでの最長5年から最長10年へ延長されました。来やすくなるから訪日観光客が増えて、それが商売になるので在留者が増えるということにつながっています」(菊池さん)

 

2008年の北京オリンピック以降から中国人の富裕層が増え、距離が近いアジア圏の先進国・日本へビジネスチャンスを広げる経営者も増加。そんな彼らが従業員として、中国人を日本に呼び寄せるというケースも。そのほかにも菊池さんは、SNSで情報のシェアが進んだことも大きな理由だと言います。

 

「たとえば、前述のフリーペーパーの話。それまでは紙媒体を中心に流れていた情報が、WeChat(日本におけるLINEのようなアプリ)などのSNSで広く多く、すぐに流れるようになったのも原因かなと思いますね」

↑池袋北口近くの食料品店「陽光城」は、グループ企業がフリーペーパーを発行しているようです

 

では、なぜ激安料理が実現可能なのでしょうか? その理由は、誤解を恐れずにいうと、中華料理は安価な食材を調味料や技でおいしくするのが基本だからだと菊池さん。

 

「料理人はピンキリですので、当たりはずれはありますけどね。注意すべきは刀削麺。昔は専門の麺点師が削っていましたが、ここ最近は安い製麺機が登場して、だから刀削麺の店が増えたんです。あとは場所でいえば、“ターミナルではないオフィス街駅”の周辺の店はあまり味に期待ができないかもしれません。一方で、飲食激戦区にある老舗にはおいしいお店が多いですね。山手線でいえば池袋や新宿など」(菊池さん)

 

 

池袋と西川口が新興の中華街となったワケ

菊池さんは今回の取材で、池袋の北口周辺を案内してくれました。このエリアには中国関連の店が多いからです。そして、その理由も、ビザの緩和が強く影響していると言います。では、ほかに大陸系中華がアツい街ってあるのでしょうか?

 

「いわゆる中華街化しているエリアですね。首都圏のオールドチャイナタウンは神保町。日清戦争後に、中国人留学生が来日してあの辺の学校に通っていた歴史があります。その名残が、明治39(1906)年創業で冷やし中華の元祖説がある『揚子江菜館』とかでしょうね。神保町より古いのは、言わずもがなの横浜元町。比較的近代ですと池袋、そして現代のニューチャイナタウンは西川口ですね」(菊池さん)

↑池袋北口エリアにある、西川口の名店「火焔山」運営の蘭州ラーメン店。入口付近のラックの中断には、やはりフリーペーパーが

 

そういえば、西川口は「タモリ俱楽部」でも特集されていました。ここはかつて風俗街として名をはせましたが、2005年ごろの一斉摘発で風俗店が激減し、空き物件が増加。格安で空いたその場所に店や住居を構え、中華街化していったそうです。

 

「西川口がニューチャイナタウンになった理由は『芝園団地』をはじめ、近辺に家賃の安い県営や市営住宅が多く、そこに中国人が大勢住んだということも挙げられますね。立地もいいんですよ。安いながら都心へのアクセスがよく、働きに出やすいので」(菊池さん)

↑池袋駅北口には、中国専門の書店なども。西川口から池袋へは、赤羽で乗り換えれば20分程度で行けます

 

なるほど! そういうことだったのですね。すみずみまでじっくり観察していると、入りづらいながらも興味深い店が多いふたつの街。まずは池袋駅の北口エリアから散策してみてたいと思います。