クラフトビール大国・アメリカ。なかでも有名なのがブルックリンブルワリーです。日本でも、このビールなら知っている、という人は少なくないはず。そのフラッグシップ商品といえば「ブルックリンラガー」ですが、先日、新たなフレーバーが発売されることになりました。
商品名は「ブルックリン ソラチエース」。実は、日本とものすごく縁が深いのですが、今回は知られざるストーリーとともに、ブルックリンブルワリーについて紹介したいと思います。
ブルックリンの発展に貢献したブルワリー
教えてくれたのは、ブランドアンバサダーのユン・ヘジョンさん。韓国出身で、ワーキングホリデーなどで各国を巡り、日本で働きたいと思い2015年にキリンに入社。なお、日本におけるブルックリンブランド事業は、2017年からキリンが展開をしています。
まずはブルックリンブルワリーについて。設立は1988年。世界有数の通信社であるAP通信のジャーナリストだった、スティーブ・ヒンディさんが創業しました。そして、インパクトのあるブランドロゴは、「I♥NY」で有名なミルトン・グレーザーさんがデザイン。
もうひとり、同ブルワリーを語るうえで欠かせないのが、ブリューマスターのギャレット・オリバーさん。もともとロックバンドのマネージャーをしていたギャレットさんは、腕利きの料理人でもあったとか。様々な才能とパッションが、ブルックリンブルワリーを世界的なブランドにしたのです。
「いまでこそブルックリンは食とファッションのトレンド発信地となっていますが、ブルックリンブルワリー創業以前は環境や治安がとても悪かったんです。その状況を変えていったのが多くのアーティスト。そんな彼らの芸術や音楽をビールで応援して地元に根付き、街の発展に貢献したのがブルックリンブルワリーなんです。現在では、クラフトビール革命を起こしたパイオニア的存在として知られるようになりました」(ユンさん)
定番商品は、冒頭で紹介した「ブルックリンラガー」。同社が30か国以上で発売する、そのシェアの約6割を占めるそう。
「すっきり爽快なラガータイプでありながら、カスケードホップのハーバルで華やかな香りが『ブルックリンラガー』の特徴。そのため、温度がぬるくなってもおいしく、ゆっくり楽しめるんです」(ユンさん)
ソラチエースって、そんな身近なホップだったのか!
日本でもこれまで、基本的には「ブルックリンラガー」のみが販売されていました。でもブルックリンブルワリーの商品には、ほかにも30種以上の多彩なビアスタイルがあります。
そのなか、2018年10月に北海道から先行発売される形で登場したのが「ブルックリン ソラチエース」。「ソラチ」という名の由来は、北海道空知(そらち)郡が起源のホップを使っているから。そう、ソラチエースは日本で生まれ、海外で人気に火がついたホップなのです。
「ただ、誕生した1984年当時の日本は、いま以上にピルスナー(黄金色ですっきり爽快な、日本で伝統的に愛されるビール)のビールが飲まれていた時代です。風味の個性的なソラチエースは実用が難しかったのか、商品化されず眠っていました。その後、アメリカに渡って保存されていたところ、ギャレットが出合うことに。それが2008年。彼は最初、日本のホップだとは知らなかったようですね。魅力的なフレーバーに感動して、2009年に限定発売したところ大反響となり、通年商品となったのです」(ユンさん)
「ギャレットはソラチエースの香りから、シーフードとの相性を着想。そこでフルーティかつ爽快、なおかつスパイシーなフレーバーもあるセゾンスタイルでこのビールをつくり上げました。トロピカルなニュアンスもあるので、魚はもちろんカレーやタイ料理にも合いますよ!」(ユンさん)
ギャレットさん以外にもソラチエースに魅せられたブリュワーは多く、このホップを使ったビールはいくつか発売され、数々の名作が生まれました。ただ、グローバルな規模で展開し、ソラチエースの名声を高めたのは「ブルックリン ソラチエース」なのです。
「『ブルックリン ソラチエース』は、アメリカ以外では特にスウェーデンでの人気が高いです。同国はサーモンをはじめとした魚介類が豊富な国ですが、日本でサーモンといえば北海道。ソラチエースの故郷だから、相性がいいのかもしれませんね」(ユンさん)
ユンさんは今後、その他のブルックリンブルワリー商品もどんどん日本上陸させたいと想いを語ります。クラフトビール人気が高まるなか、それは遠い未来ではないかもしれませんが、日本人ならまずは「ブルックリン ソラチエース」をお試しあれ!