お酒市場のなかで、好調なカテゴリーのひとつがウイスキーです。人気のため国内銘柄は出荷制限がかかるほどですが、種類が豊富な輸入酒はすこぶる元気。そんななか、今春4つの有名ブランドに新商品が仲間入りしました。しかもそれらは、国や製法が異なる個性的なものばかり。1本ずつ、ストーリーや味わいを紹介していきましょう!
【その1】ハイランドモルトの名スコッチ「グレンドロナック」
1826年に創業と、スコットランドで最も歴史ある蒸溜所に数えられるグレンドロナック。東ハイランドのフォルグの渓谷に位置し、シェリー樽熟成のマスターとして知られる同ブランドに、15年ものが仲間入りしました。
この15年は、ペドロヒメネス樽やオロロソシェリー樽で15年以上貯蔵した原酒を使用。濃厚で力強い味わいとともに、滑らかな口当たりを楽しめるのが魅力です。
【その2】スペイサイドの独創的なスコッチ「ベンリアック」
スペイサイド地域の中心に位置し、1898年に創業したベンリアック蒸溜所。希少かつ伝統的な製麦工程(フロアモルティング)を自社内で行うことや、ノンピート(ピートという泥炭を焚くことでスモーキーな香りが付きます)とヘビーピート、2タイプのシングルモルトを製造するチャレンジングなブランドとしても知られています。新作は、その12年シェリーウッド。
大きな特徴は、シェリー樽で熟成させた原酒に、オロロソやペドロヒメネスの樽でフィニッシュさせた原酒をヴァッティングしていること。いくつもの果実味が重なるフルーティさと、オーク由来のスパイシー感が魅力です。
【その3】アイリッシュの入門に最適な「ブッシュミルズ」
1608年創業と、現在操業中のアイリッシュウイスキー蒸溜所のなかで最古といわれるブッシュミルズ。伝統の3回蒸溜を守りつつも未発芽の麦は使用せず、ノンピート麦芽にこだわっているのも特徴です。心地よい飲み口で支持を得ているロングセラーであり、アイリッシュの入門にも最適といえるでしょう。
新商品はシェリー樽とバーボン樽で熟成された原酒をヴァッティングした後に、マルサラワイン樽で熟成。スムースな口当たりでありながら、余韻の長い複雑な味わいが特徴です。
【その4】超プレミアムバーボンの雄「ウッドフォードリザーブ」のライ
1812年創業のウッドフォードリザーブは、アメリカ・ケンタッキー州最古の蒸溜所といわれる名門です。イトスギの木桶による発酵や、ポットスチルでの3回蒸溜といった伝統的製法から生み出されるまろやかな味わいが特徴。
定番のバーボンは、エレガントなフレーバーとリッチな飲み応えで「スーパープレミアム」に格付け。また、アレンジがしやすいことから世界中のバーテンダーからもカクテルベースとして愛用されています。
今回の新作は原材料にライ麦を51%以上使用したライウイスキーとなり、それでいてライ麦の使用比率が53%と、一般的なライウイスキーよりも低めに設定。甘さとスパイシーさがバランスよく調和しています。
ライウイスキーも、「オールドファッションド」や「マンハッタン」などのクラシックカクテルのベースとして世界的に親しまれるアメリカンウイスキー。ということで、商品発表会ではバーボンベースで作ったカクテルとの飲み比べも体験しました。
感想としては、余韻のタイプがライのほうがスパイシーな印象。キャラクターは若干違えどそれぞれのよさがあり、甘香ばしく柔らかな飲み心地がたまりません。もしバーでカクテルを飲むなら、ウッドフォードリザーブをベースにしてオーダーを。
なお、いまでこそアメリカンウイスキーといえばトウモロコシを51%以上含むバーボンが主流ですが、もともとはライウイスキーから出発した歴史があるそう。そんな、アメリカンウイスキーの原点に思いを馳せながら飲むと、また楽しさが増すのではないでしょうか。
今回の4本はどれもそれなりの価格はしますが、そのぶんプレゼントにもぴったり。王道ならスコッチ、おだやかさならアイリッシュ、アメリカ好きならライなど、相手の性格に合わせるのもよし。また、熟成の年数やラベルのデザインで選ぶのもいいでしょう。贈答の機会に、ぜひ本稿を参考にしていただけたら。