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2019/7/13 17:00

【ラ飲みの名店】「コスパの概念」が吹っ飛ぶ店を知っているか? つまみ、手打ち麺ともに衝撃的な「金町製麺」

酒のあとにシメる。その定番といえばラーメンだ。飲み屋を出たら、近くのラーメン店で一杯…というのがセオリーだが、昨今は酒を楽しめるラーメン店もあり、そこで飲むことを「ラ飲み」と呼ぶこともある。

 

本稿は、お酒をより深く楽しむための情報サイト「酒噺」(さかばなし)とコラボし、「ラ飲み」にスポットを当てた企画。コラボの企画段階で、GetNavi本誌でラーメン連載を持つミュージシャン、サニーデイ・サービスの田中 貴さんに、「ラ飲みを語ってもらったら面白いよね」という話が持ち上がり、企画の実現に至った。以降、今回を含めた全6回の連載で、田中さんとともに名店を行脚しつつ、「ラ飲み」の楽しみ方や珠玉のラーメンを紹介していこう。

 

【プロフィール】

田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。2019年はアルバム制作が中心だが、スピッツ主催イベントの初日(8月22日)に出演。

 

また、ライブサポートとして今夏はスネオヘアー(6月14、29日、8月24、30日)、サニーデイ・サービスの曽我部恵一ソロ(7月6、7日)、新井仁(7月15日)、ワタナベイビー(8月10日、18日)などに出演する。8月4日(日)の10~16時には、片瀬東浜海水浴場でイベントを開催。田中さん直々のオファーにより、超人気ラーメン店「凪」が出店して限定メニューを提供するほか、本人出演のミニライブ&トークショーを行う予定(詳細は追って当サイトにて告知)。

 

ラーメンの名門がプロデュースする葛飾区「金町製麺」へ

酒噺とのコラボ、「ラ飲み」企画の第1回は、葛飾区にある「金町製麺」。店名から想像できるようにラーメンの店ながら、ラーメン専門ではなくラーメン居酒屋だ。2010年の開業時はスタンディング形式の「立ち呑み居酒屋 金町製麺」としてスタートしたが、翌年には椅子やスツールを用意して現在のスタイルに。

↑看板には「立ち呑み居酒屋」、のれんには「居酒屋」の表記がある

 

オープン当初から同店をよく知る田中さん。それもそのはず、同店はラーメン好きに知らぬ者はないという、名門の系譜に連なる実力派なのだ。

 

「『麺や 七彩』がプロデュースしてるんです。八丁堀店は打ち立て麺が有名ですが、手打ちの麺はここにも健在。スープの仕込みだけでも大変なのに、麺も打ってつまみも作ると。しかも、調理関連はすべて店主の長尾優介さんひとりでこなしてるんです。『いったいどうやってんだ?』と。神業ですよ!」(田中さん)

↑長尾優介店主。「金町製麺」では、開店前に数食ぶんの麺を打つが、その工程はあっという間。数分で粉から生地にして、伸ばして小分けに。注文ごとに切ってゆで上げる

「ラ飲み」の際は、「アルコールの種類」「長居してもいいか」をチェック

まずは連載の第1回ということもあって、ふだんから「ラ飲み」を頻繁に楽しんでいる田中さんに、飲める店の探し方や、楽しみ方を聞いてみた。

 

「街中華と呼ばれるような店はたいがい飲めるんで、そういう中華屋さんに行くのが基本ですね。ラーメン店であれば、まず、『アルコールを何種類置いてるか』と、『長居しても迷惑がかからないか』をチェック。そういった店なら、トッピングのチャーシューやメンマを単品で注文して、それをアテに楽しめばいいでしょう。なかには本格的なつまみを用意しているところもありますけど、『金町製麺』ほどハイクオリティな店は希少ですね」(田中さん)

 

食材の質、調理の多彩さに価格以上のクオリティを感じる

ということで、まずはつまみをオーダーすることに。お品書きを手にすると、一目でクオリティの高さを実感できるラインナップ。しかも、メニューはなんと日替わりで、毎日長尾さんがリストを作っている。しかも驚くほどにリーズナブルなのだ。

↑「千葉県産 ノドグロの炙り」(左手前)は、とろける上質な脂が美味。「タラコの燻製とバイ貝のうま煮」(右手前)は自家燻製によるパワフルな香りと、バイ貝のプリっとした食感がたまらない。ともに390円(税込・以下同) ※お酒の画像はイメージ。店舗でも取り扱いなし(以下同)

 

まれに400円以上のメニューもあるというが、この日は用意された20種のつまみが390円均一(税込・以下同)。この日は高級魚のノドグロの炙りが390円で提供されていたが、これがまずありえない。聞けば、釣り好きの常連が、その日の釣果に応じて持ってきてくれるという。魚は刺身をはじめ、焼き霜造り、なめろう、肝和えとアレンジも多彩。高品質かつ鮮度抜群な魚介を、様々な調理法で安く味わえるというわけだ。

↑「冷じゃがいもとしめじのポタージュ」(左)は、クリーミーかつ後味すっきりで、大量に作れればラーメンにすることもあるという。「おつまみCURRYボロネーゼ」(右)は、粒の大きい挽肉がスパイシーなトマト味に仕立てられ、温泉卵をくずすとマイルドに変化。ともに390円

 

料理は和洋中とジャンルの幅も広く、客を飽きさせない工夫が随所に感じられる。これには長尾さんの経歴も関係している。長尾さんは調理師学校を卒業後にリストランテや和食店などを経て、「麺や 七彩」グループの「食堂 七彩」へ。現在は出向の形で「金町製麺」を切り盛りしている。なるほど、様々なジャンルの料理を調理した経験が、現在の多彩なメニューにつながっているというわけだ。

 

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「手打ち中華そば」のキジのうまみ、醤油の風味に独創性を感じる

ラーメンは、基本的には醤油と塩の2種類。そのうえで、仕込みによっては数量限定で日替わりの一杯を出すこともあるという。今回は、醤油と限定メニューを一杯ずつ作ってもらうことに。

↑お待ちかねのシメ。田中さんは、飲む相手によってはシメたあとにスナックなどで飲み直し、その後2回目のシメに繰り出すこともあるとか

 

提供された一杯「手打ち中華そば」は、ルックスからして美麗。チャーシューは豚と鶏の2種、ネギは切り方を変えるなどで3種。メンマではなく細身で小ぶりな姫竹を盛り付けるなど、トッピングにも手間をかけていることがわかる。

↑「手打ち中華そば」850円。スープは愛媛県産のキジガラと真昆布、鶏肉、香味野菜でダシをとり、茨城県産の柴沼醤油、長野県産のマルヰ醤油をブレンドしている

 

スープの軸は愛媛県産のキジだ。キジは高級食材だが、地鶏に似た力強いうまみがあることからあえて使用し、ふくよかな味わいを生み出している。

 

「スタイルは七彩に似たものですが、キジのうまみ、醤油の風味は金町製麺じゃなければ味わえない独創性を感じます。正直、飲んだあとに食べるのがもったいないくらいウマい。極太手打ち麺の風味とコシも、言うまでもなく絶品。機械では絶対に作れない、手で捏ねるからこその麺の食感を味わってください。僕自身、いつも片道一時間以上電車を乗り継いでここまでやってきてるんですが、この手間暇かけた贅沢な一杯を味わうためなら、どうってことないです!」(田中さん)

 

ちなみに、塩ラーメンの麺は、手打ちではなく製麺所に依頼したものを採用。そしてスープは仕入れた鮮魚のアラや、貝などを中心とした魚介ダシを使う。醤油ラーメンと違いを出すことで、メリハリを楽しめるようになっているのだ。

 

さらにもうひとつ、長尾さんが心がけているのは季節感。秋はサンマを使ったり、冬はカキやキジの白湯ラーメンを出したり、Xmasに七面鳥を使うこともあるという。

 

「麻婆ナスそば」は序盤に頼んでつまみにしても最高!

続いて、限定メニュー「麻婆ナスそば」を頂いた。

 

「麺は中華そばより太めに切られていて、刀削麺(とうしょうめん)にも似たニュアンス。大きめのナスと挽肉も食べ応えがあってイイですね。とろみある餡は、唐辛子の辛さだけではなく、花椒(ホアジャオ)の痺れもある流行りのタイプ。これは、シメじゃなく、序盤に頼んでつまみにするのもサイコーのやつです!」(田中さん)

↑日替わりの「麻婆ナスそば」950円。甜面醤、四川調味料のシャンラージャン、熟成されたピーシェン豆板醤で味付け、仕上げに花椒(ホアジャオ)と自家製ラー油をかけている

 

↑太めにカットされていることで、より弾力を楽しめる手打ち麺。濃厚で刺激的なスープとも相性抜群だ

 

絶品のつまみとラーメンを破格で楽しめ、メニューは日替わりだから行くたびに新たなおいしさを発見できる。都心からはやや離れているものの、遠出する価値は十分にあるだろう。にぎやかな雰囲気で入りやすく、「ラ飲み」入門にも最適。今夏の暑気払いに、ぜひ活用してみては?

↑取材にはGetNaviの元プロデューサー・松井謙介も駆けつけて、乾杯。このあと、ハシゴしてスナックに行ったという

 

撮影/中田 悟

 

【SHOP DATA】

金町製麺

住所:東京都葛飾区金町6-2-1 ヴィナシス金町 1F

アクセス:東京メトロ千代田線直通、JR常磐線「金町駅」徒歩2分、京成金町線「京成金町駅」徒歩1分

営業時間:平日18:00~23:00、土日11:30~14:00(L.O.)/18:00~23:00
定休日:月

 

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