良質な水と米に恵まれた福島県。全国新酒鑑評会では金賞受賞数が4年連続日本一となるなど、日本酒好きの注目を集めています。そんな福島県のなかでも、会津盆地を中心とする地域の会津では、有望な若手蔵元が育っており、全国的な人気銘柄が数多く誕生しています。「会津の酒」でまとめて覚えれば、かなりの有名銘柄が網羅できるはず。この機会に一気に覚えて、今後の居酒屋探訪に役立ててください!
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その1
“土産土法”によるやさしく軽やかな味わい
髙橋庄作酒造店[会津若松市]
会津娘(あいづむすめ)
芳醇純米酒 一火(ほうじゅんじゅんまいしゅ いちび)
3024円(1.8ℓ)
地元の人間が、地元のものと手法で仕込む“土産土法”をテーマとする蔵元。化学肥料を使わず、有機栽培での米作りに取り組んでいます。本品は、蔵の9割を占める純米酒から原酒での香味バランスが良いものを選び、1回のみ火入れを行ったもの。グラスに口をつけた瞬間、果実のような香りが感じられ、口に残る味わいはやさしく軽やか。ぬる燗にしても抜群で、料理を上手に引き立ててくれます。
蔵元コメント
髙橋庄作酒造店 髙橋 亘(たかはし・わたる)さん
日本酒が世界で存在を確立し、新たな魅力を得るには地域性=土産土法が不可欠。幸い当蔵は兼業農家として成り立ち、先代・先々代の尽力で自社田を蔵の周囲に残すことができました。使用する酒米の9割が会津産で、製品の7割は県内で販売。また、会津は刺激しあえる蔵元や熱心な農家、酒販店、愛飲家のみなさまが多く、日々そのつながりに感謝しております。今後もこの環境を生かし、会津の景色が目に浮かぶようなお酒を造っていきます。
その2
鮮烈な飲み口で無濾過生原酒の潮流を確立
廣木酒造本店[河沼郡会津坂下町]
飛露喜(ひろき)
特別純米(とくべつじゅんまい)
2808円(1.8ℓ)
飛露喜は杜氏の引退、実父の急逝を受けて蔵を継いだ廣木健司氏が、1999年、試行錯誤の末に完成させた銘柄です。鮮烈な飲み口、透明感のあるボディを備えた味わいは瞬く間に日本酒ファンの支持を獲得。無濾過生原酒の潮流を確立し、会津の酒を全国区にしました。本品は、蔵元が「飛露喜を語るための1本」と位置づける通年商品。口に含むと舌の上に上品な旨みが広がり、余韻が長く続きます。
蔵元コメント
廣木酒造本店 廣木健司(ひろき・けんじ)さん
毎月出荷の定番酒でこそ、蔵の技術が問われます。その意味でも、特別純米は銘柄を代表する1本。
いつ飲んで頂いても、飲み手を決して裏切りません。造りで意識している点は、洗米から吸水、蒸しまでの原料処理。工程の川上をしっかり行うことがブレのない酒につながります。今後は、飲むだけで会津の風土、蔵の情景までイメージできるような酒を造りたいですね。
その3
「楽しさが無限に溢れる酒」を目指し挑戦を続ける
曙酒造[河沼郡会津坂下町]
天明(てんめい)
純米吟醸 火入れ 一年熟成(じゅんまいぎんじょう ひいれ いちねんじゅくせい)
3024円(1.8ℓ)
1904年( 明治37年)創業の蔵元。2011年、鈴木孝市氏が20代で杜氏に就任すると、「ちょいリッチ」「中取り」シリーズや日本酒ベースのリキュール「スノードロップ」などの斬新な製品を醸し、評価を高めました。この純米吟醸は、冷蔵管理で1年熟成させてから出荷する通年商品。無濾過特有のインパクトのある口当たりで、旨み、甘み、酸味のバランスが整った食中酒タイプとなっています。
蔵元コメント
曙酒造 鈴木孝市さん
飲んでも造っても、楽しさが無限に溢れる酒を目指しています。米や造りを変えたり、熟成をかけた
り、定番品をすべてブレンドにしたりと、毎年色々な挑戦をして楽しく造っています。まずは造り手
が楽しまなければ、楽しさが溢れる酒なんてできっこありません。常々思っているのは、「当蔵の酒は、地元の窓でありたい」ということ。地元の空気を感じる事ができ、足を運びたくなるような酒が目標です。そのためにも、造り手と同じ地に立ち、同じ陽を浴び、同じ水で育った会津産の米の使用比率を100%にしたいです(現在は8割)。
その4
評価が急上昇中で近年は入手困難に
宮泉銘醸[会津若松市]
寫樂(しゃらく)
純米酒
2520円(1.8ℓ)
近年評価がうなぎ上りで、入手困難になりつつあるブランド。同じく会津の有名銘柄「飛露喜」の蔵元、廣木健司氏から大きな影響を受けたといいます。「夢の香」や「五百万石」など、地元で契約栽培した米を使用するほか、県外の名産地の米を使用。本品は穏やかな果実香とふくよかな米の甘み、絶妙な酸味が楽しめ、肉料理との相性も抜群です。
その5
豪雪地帯で伝承のもち米四段仕込みで醸す
花泉酒造[会津郡南会津町]
ロ万(ろまん)
純米吟醸 無濾過一回火入れ(じゅんまいぎんじょう むろかいっかいひいれ)
2931円(1.8ℓ)
日本有数の豪雪地帯、南会津町の南郷地区にある蔵で、伝承のもち米四段仕込みで醸します。本品はフレッシュ感を残した1回火入れの通年商品。心地よい旨みが広がるやさしい味わいで、冷やから燗まで幅広い温度で楽しめます。
その6
次代蔵元が好奇心のままに醸す酒
会津酒造[南会津群南会津町]
山の井(やまのい)
山の井50(やまのいごじゅう)
4104円(1.8ℓ)
山の井は「人と同じことがしたくない」と語る次代蔵元、渡部景大氏が好奇心のままに醸す銘柄。本品は雄町米を使ったアルコール13度の低アルコール酒です。透明感と米の旨みが同居し、飽きのこない1本となっています。
その7
穏やかな香りでどんな料理にも合う
夢心酒造[喜多方市]
奈良萬(ならまん)
純米酒(じゅんまいしゅ)
2592円(1.8ℓ)
1877年に創業した喜多方の蔵。「本物の地酒」を目指し、普通酒から純米大吟醸まで、原料米のほ
とんどを地元農家との契約栽培でまかない、県が開発したうつくしま夢酵母を用いて醸します。こちらは穏やかな香りでどんな料理にも合う酒。冷やでは淡麗な風味だが、燗にするとより一層味がふくらみます。
その8
SAKE COMPETITION 2015で部門1位に輝く
鶴乃江酒造[会津若松市]
会津中将(あいづちゅうじょう)
純米大吟醸 特醸酒(じゅんまいだいぎんじょう とくじょうしゅ)
1万800万円(1.8ℓ)
地元の酒米と良質な地下水を使い、和釜で米を蒸し、全量が槽搾りという昔ながらの製法で醸す蔵。本品は2015年SAKE COMPETITION純米大吟醸部門1位に輝いた逸品で、華やかな香りと上品な甘みが楽しめます。
会津娘の蔵元が「刺激しあえる蔵元が多い」と語る通り、会津では蔵元同士が切磋琢磨し、高めあっているのがわかります。将来は、よりおいしいお酒ができるのを期待するとともに、新たなスター銘柄の登場にも期待したいところ。今後も会津に注目していきましょう!