キリンビールの「一番搾り とれたてホップ生ビール」が今年も10月29日から数量限定で全国発売されました! 岩手県遠野産のホップを使用したこのビールは、1999年に初登場し、今年で発売16年目を迎える人気のビール。毎年楽しみにしている人も多いのではないでしょうか?
「ホップによってビールに多様性が生まれる」とまで言われるほど、ホップはビール作りの重要な役割を担っているのだとか。メディア向けに開催された試飲会で同社の主幹研究員の村上敦司さんが、一番搾り とれたてホップ生ビールの美味しさの秘密を教えてくれました。
ホップはビール作りにおける4つの役割を担う
ビール作りに欠かせないのが、麦芽、ホップ、水、酵母です。なかでもホップはビールの苦味、香り、泡持ち、混濁菌の増殖を抑制する効果をもたらします。
ビール作りは麦芽と水を混ぜて、「糖化」させるところから始まります。麦芽のデンプン質が「糖」に変わったら、麦汁を濾過します。キリンの一番搾りでは、この麦汁を濾過する際に自然に流れる一番搾り麦汁だけを使用しているので、雑味のないスッキリとした味わい仕上がっています。
その後、麦汁を沸騰させるのですが、火を止める直前にホップを添加します。このとき、加えるホップの品種や添加のタイミング、さらには添加する量でビールの味わいが大きく変化するんです。あとは酵母を加えて発酵させたら、貯蔵、濾過の工程を経てビールが完成します。普段飲んでいるビールが数々の工程を経て作られていることを忘れがちですが、本当に「奇跡の飲み物」ですね。
今年のホップは「香り」に注目
一番搾り とれたてホップ生ビールは、その年に採れた岩手県遠野産のホップを使用しています。ホップは収穫すると同時に鮮度が落ちる植物なので、通常は乾燥させて圧縮・固形化したペレット状のものを使うのが一般的です。
しかし、一番搾り とれたてホップ生ビールでは、マイナス20℃の状態で冷凍工場に輸送し、収穫後24時間以内にマイナス50℃で急速凍結するんです。凍ったままのホップはマイナス40℃で粉砕され、手作業でタイミングを見ながら麦汁に添加されます。とにかく「鮮度が命」なホップの香りを手間隙かけてキープしているんです。
ペレット状のホップは乾燥したハーブや草木を思わせる香りなのに対し、凍結ホップは青草や果実のような新鮮な香り成分がたくさん含まれており、フルーラルな香りが際立っているとのこと。素人でもその香りの違いは感じられるので、凍結ホップのすごさを実感しました。
「毎年、今年のホップの特徴を聞かれるので、どう表現するか悩む」と話す村上さん。ちなみに今年は「昨年以上に香度が強く、遠野の自然をそのまま味わっているような感じ」がするそうです。
去年の味は忘れた……でもやっぱりウマい!
凍結ホップが何たるかを学んだところで、ようやく「一番搾り」と「一番搾り とれたてホップ生ビール」の飲み比べへ。筆者は日頃から一番搾りを愛飲しているのですが、こうして真剣に飲み比べた経験はほとんどありません。
まずは香りから嗅いでみたところ……驚くほどに違う! とれたてホップのほうが爽やかかつ香りが強く、一番搾りはほんの少し香りが甘く感じます。味わいも香りと同様、まったく別のビールのよう。とれたてホップのほうが青っぽさがあり、山椒のようなアクセントがありました。
実はこのとれたてホップは、毎年味わいは異なっています。今年は香味が引き立つように仕込み条件を工夫しており、去年のとれたてホップとは違っているそうです。正直、1年前に飲んだ味をはっきり覚えていないのですが、おいしいことに間違いありません!
遠野の食材を使ったペアリングがおすすめ
試飲会では、キリンシティでも提供されている東北の食材を使ったおつまみが用意されていました。遠野のホップを使用しているので、同じ東北地方で育った食材が合わないわけがありませんよね。
「遠野パドロン」は、遠野の町づくりを加速させるきかっけともなった野菜。2007年からキリンビールは日本産ホップを通した地域活性化に向けた取り組みを展開しています。そして、2018年には、キリンと農林中央金庫が出資して、ビール農業に特化した地域として遠野を活性化させるために農業法人「BEER EXPERIENCE株式会社」が設立されました。そんな同社の事業として、遠野パドロンの生産と販売を行っているそうです。
日本産のホップは年々生産量が減っており、2008年は446トンあったのに対し、2018年には202トンと半減しているそうです。そんな日本のホップを使ったビールを飲めば、地域の活性化にもつながるなんて一石二鳥かも!? 今年も「一番搾り とれたてホップ生ビール」を飲んで、この時期だけの新鮮なホップの香りを堪能しましょう。
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