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2019/11/15 18:00

あの交差点から六本木を見つめて55年。「アマンド 六本木店」の今昔物語

六本木を象徴する名所といえば、首都高架の「ROPPONGI ROPPONGI」ロゴが印象的な「六本木交差点」。併せて有名なのが、一角で鮮やかな色彩を放つ「アマンド 六本木店」です。

 

↑「アマンド 六本木店」は、「六本木交差点」一角の南西に存在。鮮やかなピンク色の内外観が印象的です

 

老舗の喫茶店であり名物メニューも人気ですが、この地にオープンした背景や理由、そして店舗デザインの由来などは知らない人も多いでしょう。この六本木店が2019年で55周年を迎えたいま、担当者インタビューを中心に「アマンド」の歴史に迫りたいと思います。

 

↑株式会社アマンドの御園真道(みその しんどう)さん。営業本部の部長で、ブランディングなども担当しています

 

 

ピンクだけじゃない。あのサービスの元祖も「アマンド」だ

アマンド自体の創業は1946年。戦後間もない時代にあって、創業者・滝原健之氏が願ったのは人々の笑顔。そのひとつが“甘いもの”だということで、闇市で物資を調達しながら喫茶と甘味のお店を立ち上げ、「甘人=あまんど」や「フランス語のアーモンド=アマンド」を意味する店名に。

 

「“笑顔で、明るい気持ちに”という創業者の想いは、店舗デザインにも表現されました。それが、ピンクを基調としたインテリアやパッケージです。1949年に開業した有楽町店(現在は閉店)から実装されました。斬新な発想として注目を浴び、ネットがなかった当時に影響力が強かった新聞をはじめ、取材が相次いだそうです」(御園さん)

 

↑在りし日の「アマンド 有楽町店」

 

いまでいうショッキングピンク的なインパクト大のカラーリングは、やがて「アマンドピンク」と呼ばれるように。そしてほかにも「アマンド」が先駆けたアイデアは多数あるといいます。

 

「おしぼりの提供、店頭にパラソルを置く、彫刻や絵画を飾る、などは当社が発祥といわれています。そして業態自体が珍しかった“本格的な洋菓子と喫茶の店”は、『アマンドスタイル』として認知されていきました」(御園さん)

 

↑かつての面影は、現在の六本木店内に飾られた写真で楽しむことができます

 

経営だけでなくマーケティングにも長けていた創業者ですが、「アマンド」のデザインにはモチーフとなるものがありました。それが宝塚。事実、歌劇団をはじめ芸能関係者とも親しく、同店は業界人が利用する洋菓子喫茶として憧れの存在となっていきます。また、創業者自身、元タカラジェンヌの如月美和子さんと結婚(のちに「アマンド」社長を継承)。耽美的な世界観をより広げていきました。

 

↑銀座店(1968年開業)。いまでも変わらないショーウインドウ脇のアイコニックな階段は、まるで宝塚の舞台における階段のよう

 

「女性向けに開発し、特に女優さんに好まれたメニューが、1952年の誕生以来アイコンとして親しまれている『リングシュー』です。なぜ女性向けかというと、『口を汚さないよう、フォークとナイフで召し上がって欲しい』という想いが込められているからなんです。普通のシュークリームは丸いので、小さくカットしづらいですよね。そこでリング状にしたのです」(御園さん)

 

↑お土産としても大定番。昭和風の「リングシュークラシック」と、薄めの生地にコク深くミルキーなクリームをサンドした現代風の「リングシュー“昭和テイスト”2018」(ともに337円/税抜)があります

 

リングシュー自体は『パリブレスト』というフランスの伝統菓子。創業者は知ってか知らずか、いずれにせよ優れたアイデアマンだったのでしょう。そんな敏腕社長が次に仕掛けた試み。それが前回の東京オリンピックが開催された1964年、六本木店のオープンです。

 

「携帯電話が普及していない時代ですから、主要な街での待ち合わせは、目印になる場所で約束をすることが一般的でした。新宿ならアルタ前、渋谷ならハチ公前ですよね。それらメジャーなスポットと同様に、六本木は交差点で目立つ喫茶店として、『アマンド 六本木店』が格好の場所だったのです」(御園さん)

 

↑オープン当時の「アマンド 六本木店」は、当時3階建て。2008年にビルの老朽化で取り壊され、2010年に建て替え(その間は裏手で臨時営業)となりいまに至ります

 

最盛期には、最大約30店舗まで拡大。都内を中心に軽井沢、御殿場、海老名といった地にも展開されていたアマンドですが、バブル崩壊や喫茶店に代わるカフェの台頭などで縮小を余儀なくされることに。そこに手を差し伸べたのが、来年で創業100周年を迎えるコーヒー界の雄「キーコーヒー」です。2012年に「アマンド」を子会社化し、再建に乗り出しました。

 

「直営工場や不採算店を閉じるなどのそぎ落としからはじめ、実店舗は現在の六本木と銀座のみとなりました。そうして「アマンド」創業70周年にあたる2016年には整理が終わり、再スタートを切ったのです。コンセプトは、懐かしくも新しい“オールドニュー”な喫茶店。往年のファンを中心に好調だった通販のギフトを強化するほか、メニューもより“オールドニュー”らしくリニューアルをはかったのです」(御園さん)

 

 

 

今年のレトロ喫茶ブームのはしりが「アマンド」だ!

それまではトレンド感のあるカフェを意識したメニュー展開をしていましたが、そうではなく、「アマンド」にしかできない味の提供へとシフト。それが2017年よりはじまった「昭和パーラー」と「昭和食堂」シリーズです。同社の財産のひとつが、かつて使用していたメニュー表。一覧にあった料理を再現する形で実現が叶いました。

 

「『昭和パーラー』は、ミルクセーキ、フルーツポンチ、プリンアラモードといった昭和コンシャスなデザートが中心。青春時代を懐かしむお客様はもちろん、当時を知らない若い方々にはむしろ新鮮に感じられるようで人気を博しています」(御園さん)

 

↑「長寿卵のなめらかプリンアラモード」(単品1320円、ドリンク付1520円/税込)。神奈川のブランド卵による濃厚なプリンのほか、いちごアイスやフルーツなどが盛り合わせ

 

一方の「昭和食堂」は、昭和40年ごろに開業して隆盛を誇った同店のレストラン業態の料理を復刻したもの。こちらは、実際に当時の厨房で腕を振るっていたコックを招へいすることで、よりリアルな味が再現されています。

 

「定番だったハヤシライスやナポリタンをはじめ、王道の洋食が中心ですね。さすがにレシピは残っていませんし、調味料や食材に関しては現存しないものもありますが、当店ならではのおいしさが再現できていると思います。なかにはレアな一品もあり、たとえば『スパゲティコスモポリタン』は、いまや幻ともいえる洋食メニュー。その珍しさから、ご注文いただくお客様も多いですね」(御園さん)

 

↑「スパゲティコスモポリタン」(1200円/税込※サラダ&ドリンク付きのランチ価格)。海老のうまみが生きたアメリケーヌソースを、デミグラスソースにブレンドした一皿です

 

新生「アマンド」として舵を切ってから約3年。いまでは六本木店の立地のよさやブランド力を生かし、同店のPRはもちろん情報発信の場として他業種とのコラボレーションも。デジタルサイネージを使ったり、インストアイベントの場を提供したり、事業を多角的に展開しています。

 

「最新の取り組みのひとつが、JA全農ふくれんさんとタッグを組んだ、『ふくおかブランド』食材を使った季節限定メニューです。2020年の2月まで月替わりで提供しますので、これからもご期待ください!」(御園さん)

 

↑「はやみかんのデザートシェイク」(1100円/税込)。福岡オリジナル品種「早味かん」の糖度の高さを生かした、自然でありながら甘さ抜群のおいしさです

 

↑「いちじくのナポレオンパイパルフェ」(単品1100円、ドリンク付1300円/税込)。蜜のような甘さの「博多とよみつひめ」と甘酸っぱい「ほうらいし」、2種のいちじくを使い、ミルフィーユ生地をあしらった贅沢なスイーツです
※上記「いちじく」・「みかん」のメニューは10月31日(木)で終了。

 

今年のフードトレンドのひとつがレトロ喫茶。「固めプリン」「プリンアラモード」「サンデー」などが再評価され、レトロ喫茶がテーマの新店がオープンしたり、スタバがレトロフェアを催したり。その流行に先駆けて展開していたのが、むしろレトロ喫茶の本家「アマンド」だというのは、なんとも興味深いところです。

 

↑「アマンド 六本木店」の1階。現代的な雰囲気のなかに、古き良き喫茶店の意匠が息づいています

 

また、古典喫茶をはじめ日本のコーヒー文化を長年支えてきた「キーコーヒー」が「アマンド」の再建に名乗りを上げたというのもいい話。前述しましたが、同社は来年創業100周年ということで、その際には改めて「キーコーヒー」の歴史を紹介したいと思います。

 

【SHOP DATA】
アマンド 六本木店
住所:東京都港区六本木6-1-26 天城ビル1F・2F
アクセス:東京メトロ日比谷線ほか「六本木駅」3番出口徒歩すぐ
営業時間:日〜木土祝10:00〜23:00、金10:00〜翌3:00
定休日:なし