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2019/12/11 19:30

ワイン好きなら一度は挑戦したい!山梨のワイナリーで体験するブドウ収穫

味わいが好みだから、食事と合わせやすいからなど、“飲み物”として味覚の満足感を得られることは、誰もが感じるワインの魅力。でもそこに、「造り手本人に会ったことがあるから」「自分の手でブドウを摘んだことがあるから」というような、味覚以外の体験が加わったら、ワインとの向き合い方は劇的に変化するのではないでしょうか。

 

天候に恵まれた良作年のワインの味わいは楽しみですが、不作な年は購入しないものでしょうか? もしその不作のブドウが、自らの手で摘んだものだとしたら? もし良作年以上の手間を惜しまない、造り手の努力を目の当たりにしたら?

 

私たち消費者は日々、飲食物に対しては味覚の満足度を最優先に商品を購入することがほとんどですが、味覚以外のそのワインが誕生するまでの背景を知る、また体験することで、ワインの購買動機や選択肢に少しの変化が生まれることは間違いないでしょう。

 

多少やんちゃでも我が子や知人の子は愛おしいと思うのと同じように、そこに生まれる感情の変化は「好き」より「愛おしさ」。ワインが「好き」から「愛おしい」に変わる体験、ワイナリーで造り手とともに行うブドウ収穫の一日を取材しました。

↑山梨県の奥野田ワイナリーを訪問。訪問者を温かく迎える、アットホームなワイナリーだ

 

喜びも困難も、お客様と共有するということ

今回訪問したワイナリーは、山梨県・塩山にある奥野田ワイナリー。オーナーの中村雅量(なかむらまさかず)さんは、勝沼の老舗ワイナリーで醸造責任者まで務めたのち、1989年に独立しました。現在、オーナーであり栽培家、醸造家でもある雅量さんですが、11年前に結婚したのちは奥様の亜貴子さんと夫婦二人三脚でワイナリーを経営しています。

↑ワイナリー から車で5-6分の場所にある、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローが植わる神田圃場(じんでんほじょう)。この日収穫したカベルネ・ソーヴィニヨンは、上から概ね1/3のエリアを占める

 

収穫体験当日。朝10時にワイナリーに到着すると、すでに40人以上が畑で収穫作業を始めていました。全員が奥野田ワイナリーのスタッフかと思いきや、そうではなく、このワイナリーならではのユニークな会員システムを、亜貴子さんが教えてくれました。

 

「今日来てくださっているのは、『奥野田ヴィンヤードクラブ』のメンバーのみなさんです。11年前にスタートしたこの制度は、現在会員数が約200名にもなりました。毎年、この収穫の時期から募集を始める年会費制度で、プログラムのスタートは2月。収穫作業だけでなく、2月は剪定、3月は誘引作業、5月は芽かきなど年7回、ワインができるまでのプロセスを、座学と畑作業で学びながら楽しんでいただく制度です」(亜貴子さん)

↑畑には「奥野田ヴィンヤードクラブ」のメンバーの姿が

 

ワイナリーの正社員は、中村夫妻を含めてたったの5名だそうですが、このメンバー制度によって、奥野田ワイナリーのファンやお客様に一年間のワイン造りで必要な人手として協力を仰ぎ、会員はその知識を得ることができるという仕組み。一番人手が必要なこの収穫時期も、会員である顧客の強力なサポートによって支えられているというのです。

 

11年前というとお二人がご結婚された頃。このシステムは亜貴子さんの発案なのでしょうか?

 

「はい、そうなんです。ただ当時“システム”というほどのものではありませんでした。私はお料理が好きで、嫁いで来たときに真っ先にお客さまと畑の中でワインパーティーをしたい! と思ったんです。始めは小さなテーブルとパラソルで8人くらい。そこから本格的に学びたいというご要望を受けて、現在のスタイルになりました。

 

今ではすべてを手料理でおもてなしすることはできませんが、それでも毎回必ず一品は何か作って、わざわざ山梨へ来てくださった一日を楽しんでいただけるよう心がけています」(亜貴子さん)

 

さらに、このメンバー制度で一番大切なことを教えてくれました。

 

「栽培や醸造は、時に抗えないものと向き合いながらの孤独な作業です。それをメンバーさんと『今年はいいね!』とか『ちょっと厳しい年だけど頑張ろう!』とか、さまざまな感情を私たちと共有してくださることが、大きな精神的支えになっているんです」(亜貴子さん)

 

メンバーの皆さんが、まるで自分たちの経営するワイナリーのように、そして出来たブドウを我が子のように愛おしく収穫している様子が、この日の雰囲気からも感じられました。

↑夫婦二人三脚、とはいえ「今年のような厳しい年は、畑で健全なブドウだけを収穫するのには、人手と丁寧な仕事が必要。とてもわたしたちふたりではできないので、ありがたいことです」と中村夫妻

 

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